第20話 砦のお茶会②
お茶会が始まった。 スザンヌはモンブランをフォークでつつきながら心配する。
「あんなに怒らせてしまって... マキハタヤ殿がダナウェイ側に付いたらどうしましょう」
ベティーはモンブランをパクつきながら、噛みつくように答える。
「どうもしない。 そもそも、あいつはダナウェイに雇われてたそうじゃない。 古巣に戻るだけのことよ」
「でも...」
憂慮するスザンヌに、シュクガワ・マナミが約束する。
「心配しなくても、契約期間中はマキハタヤ傭兵隊はテツナンドの味方だよ。 契約を破った傭兵はどこにも雇ってもらえないからね」
マナミはマリカと一緒に広間を出るよりモンブランを食べることを選んでいた。 志半ばに退出したマリカのぶんも、心ゆくまでモンブランを食べようと固く心に誓っていた。
ベティーがマナミの存在を思い出した。
「なんでアンタがまだここにいんの? この場にいていいのは魔女武将だけ。 無位無官は出ていきな」
マリカ相手にはあった多少の遠慮もなく、野良犬を追い払うように邪険に追い払おうとした。
マナミはピシャリと言い返す。
「出ていかない。 私はテツナンドの魔女武将だもん」
可憐な容姿の魔女に思いがけず反抗されて、ベティーの口元が不快感で歪む。
「お前は傭兵だろうが」
「傭兵だけじゃねえよ」
マナミは乱暴に言い返し、慣れた手つきで懐から符節を取り出した。 皆に見えるように掲げて高らかに身分を明かす。
「なんと私はテツナンド王国のトパーズ将軍なのでした!」
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お茶会の場は騒然となった。 魔女が少なく財政規模も小さいテツナンド王国は、これまで四名将軍までしか任じてこなかった。 武力値94の驍将ハルカゼ・ド・レミーですら、予算の関係で四名将軍だった。 なのに突如として、テツナンド王国の一名将軍を名乗る魔女が現れたのだ。
マナミがテツナンド王国のトパーズ将軍であることを証明する符節は、お茶会に出席する魔女たちの手から手へと移動し、全員に手ずから確認された。 符節が本物であること、そしてマナミがトパーズ将軍であることに疑いはなかった。
魔女たちからマナミに矢継ぎ早に質問が飛び、それにマナミは逐一丁寧に答えていく。 注目を集めるのも質問されるのも嫌いではない。
「テツナンドに来る前はどこの国で魔女武将をやっていらしたの?」
「魔女武将になったのは今回が初めてだよ」
「シュクガワ殿の武力値は?」
「知らない」
「これまでに参加した代表的な戦は?」
「さあ?」 よくわかんない。
「どうしてご自分の武力値を知らないのです?」
「調べてもらってないから」
「どうして?」
「修行の途中で脱走したから」
「脱走??」「 修行?」
「えっとねえ―」




