第18話 私が参加してもお茶会の格は上がらないの
新たにテツナンド王国と契約した3つの傭兵部隊は半日の行程を経てサイバラ砦に到着した。 マリカら3人の傭兵隊長は着任の挨拶のため砦の司令官スザンヌ・グッドウィルのところへ行った。 スザンヌはテツナンド王国の武将。 武力値41・知力値71・魅力値68。 交換武将としてディアマンテ女王国に持っていかれていないだけあって、武力は低い。 なのに彼女がサイバラ砦の司令官なのは、この砦がテツナンド王国の所有物だからだ。
新任の傭兵隊長の1人が名将マキハタヤ・マリカであることに、スザンヌは驚きかつ喜んだ。
「マキハタヤ殿、テツナンドにお味方して頂けるのですね。 ご要望があれば何なりとお申し付けください。 そうそう、よろしければお茶会にいらっしゃいませんか? この砦では、毎日午後3時に魔女武将が全員集まってオヤツを楽しむんです」
マリカはスザンヌに確認を求める。
「私は傭兵の身だが構わないのか?」
スザンヌは大仰な身振りで答える。
「大丈夫ですって。 そんなことを気にする者は1人もいません。 マキハタヤ殿に参加して頂ければ、お茶会の格が上がるというもの」
そうしてマリカの参加を取り付けて、スザンヌはジー・ルオに目を向ける。
「そちらの隊長さんもいかが?」
「いえ、私はマキハタヤ殿と違いますから」 ダナウェイの出身だし、私が参加してもお茶会の格は上がりませんから。
スザンヌは曖昧な表情で小首をかしげる。
「そう?」
ルオの返答の意味がよく分からないが、お茶会に参加したくないのは分かった。 強いて参加を勧めようとも思わない。 マリカだけを誘うと角が立つので誘っただけだ。 ちなみにスザンヌは、この場にいるもう1人の傭兵隊長マカベ・ノブトラを一顧だにしていない。 魔女ならぬニンゲンだからだ。 ノブトラも放置されて平気な顔をしている。 魔女だらけのお茶会に出席したいとは思わない。
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司令官室を退出しながら、マリカはルオの横顔に目を向ける。
(新勢力を起こすと言っていたが... これでは君主は無理じゃないか?)
ルオがお茶会に出席したくない理由は何となく分かる。 魔力の低さを気にしているのだろう。 自分も用兵に志を立てるまではそうだった。 ルオがダナウェイ女王国を出奔し野に下ったのも、あるいは自分より魔力が強い魔女だらけの環境から距離を置きたかったからではないか。
理由がどうであれ、非社交的な人物に国を興すなど無理な話だ。 ルオのように武力が無い魔女は特に、他の魔女の力を借りねばならない。 他の魔女を遠ざけるのでは話にならない。




