第17話 返り討ちにしてやんよ
翌朝、3つの傭兵部隊はソ州の西部にあるサイバラ砦に向かって出発した。 サイバラ砦はテツナンド王国の領内にあるが、ソ連合のほかディアマンテ女王国からも戦力が派遣されている。 タバサ連盟が共同で守備する拠点だ。
3つの傭兵部隊とは、テツナンド兄弟団、ジー・ルオ傭兵隊、そしてマキハタヤ傭兵隊。 兵数は合計で400人。 兵士は全員が、槍と盾で武装する歩兵。 士官のみが馬に乗る。 正規軍と同じ構成である。
ハズキに下賜された戦馬に乗るマナミは、普通の軍馬に乗るマリカより頭1つぶん高い。 マナミがテツナンド王国の秘密武将になったことは、すでに3つの傭兵隊の全員が知っている。 ことあるごとにマナミがトパーズ将軍の肩書をちらつかせ、疑惑の目を向ける相手に証拠として符節―将軍位とテツナンド王国の印章が刻印された金属の札― を懐から取り出して見せたからである。
馬に揺られながら、マリカはマナミに尋ねる。
「武将交換制度のことは知ってるだろう? マナミがトパーズ将軍だと知れ渡れば、ディアマンテの武将交換の対象になるぞ? どうするんだ?」
マナミは手綱を手放し、両の拳で シュッシュッ と素振りを繰り返す。
「返り討ちにしてやんよ」
マナミは昨日、テツナンド王国とディアマンテ女王国の関係をハズキに涙を交えて語られ、ディアマンテを嫌いになっていた。
「テツナンドに迷惑がかかるぞ?」
「知ったこっちゃないわよ」
ディアマンテを返り討ちにできればそれで満足だ。
「そうはいかん。 マナミはテツナンドの魔女武将になったんだ。 武将としての責任―」
「うっせーわよ」
マナミはそっぽを向いた。




