第1話 セガワ・アイコは生かして捕らえよ
12人の魔法研究者が知識を持ち寄り、ハーフ・アンデッド(半不死者)化の秘術を開発した。 12人のうちハーフ・アンデッド化に成功したのは、女性ばかり3人。 "一定量以上の魔力を有する女性" がハーフ・アンデッド化の条件だった。 女性に限定なので、この秘術は『魔女化の秘法』と呼ばれた。
それから1千年が経過した―
ディアマンテ女王国の魔女王ナタリー・ディアマンテは一段高い台の上から、甲冑姿で居並ぶ魔女武将たちを見下ろす。 黒髪黒目の魔女だ。 小柄で痩せており、刺々しい雰囲気を纏う。 外見は20代だが実年齢は軽く700才を超す。
「先陣はフジワラノ殿にお任せする」
ソ連合の盟主にしてテツナンド王国の魔女王であるフジワラノ・ハズキは、沈んだ声で返答する。
「承知しました」
またか、と思う。 いつもの手口だ。 ナタリーは戦のたびに属国に先陣を務めさせる。 口実を設けてディアマンテ本隊の参戦を遅らせ、属国に兵力の損耗を強いる。 属国の国力を削ぐための企みと分かっていても、逆らえはしない。
今回は戦いたくない理由がもう1つある。 この戦の敵はセガワ王国。 テツナンド王国と同じくディアマンテ女王国の属国だったが、支配国であるディアマンテの搾取に耐えきれず離反した。 その討伐が今回の戦だ。 セガワ王国の魔女王セガワ・アイコとハズキは魔女学校からの付き合いだ。 ハズキは今日、500年来の友人に槍を向ける。
ナタリーは言い添える。
「敵の主将セガワ・アイコは必ず生かして捕らえなさい」
「必ずですか?」
生かして捕らえるのは殺すより難しい。 味方の犠牲が増える。 戦場で討ち取ればいいではないか。
「必ずよ」
ナタリーに恐ろしい目で睨みつけられ、ハズキは戦慄する。
(ディアマンテ殿はアイちゃんに、討ち死によりも恐ろしい無残な死を与えるつもりでは...?)
本作のモチーフ: おジャ魔女どれみ X 戦国SLG




