第六話 ありがとう(最終話)
翌朝。コーデリアは食堂へ向かいながら、昨夜の出来事を思い返していた。
老商人のノーウッドが帰った後、ウィリアムとふたり夕食を用意する。
我ながら良い出来だと思う。
それを食べたウィリアムは、いつも通り優しく微笑んでくれた。
でも、何かが違う。
その「違い」が、コーデリアの心に小さな棘のように刺さっていた。
「おはよう、ウィル」
朝の用事を済ませたウィリアムが食堂に入ると、コーデリアが朝食の準備を終えるところだった。エプロン姿の彼女が、誇らしげにテーブルを見つめている。
「おはようございます、お嬢様」
その表情は、いつもより明るい。まるで、何か大きな決断をした後のような、吹っ切れた明るさだった。
「今日も良い朝ですね」
「...ええ」
ウィリアムが手伝おうとテーブルに近づくと、コーデリアは慌てて彼の手を取った。
「だめよ。今日はあなたも、お客様なの。座って」
そう言って、椅子を引いて勧める。ウィリアムは戸惑いながらも、促されるまま席についた。
テーブルには、焼きたてのパン、バター、ジャム、そして温かいスープ。完璧な朝食。
「ウィル」
「はい?」
「あなた...何かあったの?」
ウィリアムの表情が一瞬陰る。でもすぐにほほ笑んだ。
「いいえ、何も」
「もう無理はしていないのよね?」
ウィリアムは優しく微笑んだ。
「お嬢様が成長されて、嬉しいのです」
「そう...」
ウィリアムはコーデリアの入れた紅茶を一口飲んだ。
おいしい。でも、そのおいしさが、今は何だか寂しく感じられる。
ウィリアムは窓の外を見ている。その横顔は穏やかだが、どこか遠くを見ているようだ。
コーデリアは胸の奥に、小さな不安を感じていた。
何か...大切なことを見落としている。そんな予感がする。
*
午後。コーデリアは辻馬車に揺られながら、白薔薇のティールームへ向かっていた。
ひとりだけで外出するのは初めてのことだった。
ウィリアムには「友人たちと会ってくる」とだけ伝えた。彼は少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで「どうぞ、お気をつけて」と見送ってくれる。
白薔薇のティールーム。白い薔薇の装飾が美しく、上品な雰囲気の店内。コーデリアが入ると、既に三人の友人が席についていた。
「コーデリア!」
セシリアが手を振る。
「ひとりで来るなんて、成長したわね」
マリーが微笑む。アニエスも嬉しそうに席を勧めてくれた。
「みんな、急に呼び出してごめんなさい」
「いいのよ、どうしたの?」
コーデリアは席に座り、深く息を吸った。
「実は...お茶会を開きたいの」
「お茶会?」
マリーが興味深そうに尋ねる。
「ええ。ウィルに...日頃の感謝を、ちゃんと伝えたいの」
三人が顔を見合わせる。そして、満面の笑みを浮かべた。
「素敵じゃない!」
セシリアが目を輝かせる。
「成長したわね、コーデリア」
マリーが優しく微笑む。
「ところで...」
アニエスがいたずらっぽく笑う。
「今『ウィル』って言わなかった?」
「え?」
コーデリアの頬が赤くなる。
「前は『ウィリアム』だったのに。いつから『ウィル』になったのかしら?」
セシリアも加勢してくる。
「それは...その...」
コーデリアは顔を真っ赤にして俯いた。三人がくすくすと笑う。
アニエスが優しく手を握った。
「ロマンチックに演出しましょう!」
セシリアも目を輝かせる。
「それに...」
コーデリアは決意した。
「お父様と親しかった、あの商人の方にも来ていただきたいの」
「商人?」
マリーが尋ねる。
「ノーウッドおじさまよ。ウィルが尊敬している方なの。ウィルの相談に乗ってくださるはず」
*
お茶会当日。
応接間には、白いテーブルクロスが敷かれ、コーデリアが用意した紅茶とクッキーが並んでいた。
「素敵なお茶会ね」
マリーが微笑む。セシリアとアニエスも、嬉しそうに席につく。
「ありがとう、みんな」
コーデリアは少し緊張している。手作りの紅茶とクッキー。完璧ではないけれど、精一杯作った。
「この紅茶...あなたが淹れたの?」
マリーが一口飲んで、目を細める。
「ええ...苦くない?」
「いいえ、ちょうどいいわ」
セシリアもクッキーを一口食べる。
「美味しいわよ!手作りって分かるわ」
「形が崩れてるのもあるけど...」
「気持ちがこもってるから、最高よ」
アニエスが笑う。
ウィリアムはテーブルに座って、それを見ていた。本来なら執事が主人と共に食事の席につくなど、あってはならないこと。しかし――
「ウィル、紅茶のおかわりはいかが?」
コーデリアが優しく尋ねる。
「いえ、お嬢様。私がお注ぎ...」
立ち上がろうとするウィリアムを、マリーが優しく制する。
「今日はあなたもお客様なのよ。コーデリアに任せてあげて」
ウィリアムは戸惑いながらも、再び席につく。
やがてお茶会の準備が整うと、コーデリアは皆に声をかけた。
「みんなに、聞いて欲しいことがあるの」
三人が注目する。ウィリアムも、コーデリアを見つめる。
「私ね、ウィルに...」
コーデリアは深呼吸した。
「ウィルに、大事な話があるの」
セシリアが小声で「頑張って!」と言う。アニエスも頷く。マリーは優しく微笑んでいる。
コーデリアは、ウィリアムを真っ直ぐに見つめた。今日こそ、ちゃんと伝える。日頃の感謝を。あの言葉を。
「ウィル、私ね...」
その時。玄関のベルが鳴った。
ウィリアムが立ち上がろうとすると、コーデリアが手で制した。
「私が行くわ」
「でも、お嬢様...」
「座っていて」
セシリアとアニエスも「そうよ!」と声を揃える。
コーデリアは玄関へ向かった。扉を開けると、そこには老商人のノーウッドが立っていた。手には、招待状を持っている。
「失礼します」
ノーウッドは驚いたように目を見開いた。
「これはこれは、コーデリア嬢。自ら出迎えてくださるとは...本日はお茶会へのお招き、ありがとうございます。少し遅れてしまったかな?」
その声には、感激が滲んでいた。コーデリアの成長を、心から喜んでいるのだ。
「いえ、来てくださって嬉しいわ、おじさま」
コーデリアが微笑む。そして、ノーウッドのコートを預かった。その仕草は、まだぎこちないが、心がこもっている。
応接間に戻ると、ウィリアムも立ち上がって礼をした。
「ノーウッド様、ようこそ」
マリーが明るく言った。
「実は、コーデリアから重大発表があるのですよ」
「重大発表?」
ノーウッドは興味深そうに眉を上げた。
「それは楽しみですな。良いことは重なるものです」
彼は満足げに頷いた。そして、真剣な表情になる。
「ウィリアム君、私からも良い知らせがある」
友人たちが顔を見合わせる。コーデリアも不安そうにウィリアムを見る。
「こちらの皆様にも、お聞きいただきたい」
ノーウッドはゆっくりと封筒を開いた。
「マグナス公爵家から、正式な返事が来た」
マリーが小さく息を呑む。マグナス公爵家。王家にも連なる大貴族。
「え...?」
セシリアが戸惑った声を上げる。アニエスも困惑している。
「公爵家って...いったい何の話ですの?」
コーデリアはウィリアムを見る。しかし、彼は目を逸らした。
「ウィリアム君を、破格の条件で迎え入れたいそうだ」
静寂。
コーデリアは、言葉の意味が理解できなかった。
「ウィリアム君、おめでとう」
ノーウッドが微笑む。でも、ウィリアムの表情は複雑だった。
「待って...」
コーデリアが震える声で言った。
「おじさま、どういうことですか?」
ノーウッドは、ゆっくりと説明を始めた。先日、ウィリアムから相談を受けたこと。マグナス公爵家が優秀な執事を探していたこと。そして、破格の待遇での招聘の話。
コーデリアは混乱していた。
公爵家?破格の条件?迎え入れる?
「ウィル...どういうこと?」
コーデリアの声が震える。
ウィリアムは深く息を吸った。
「実は...」
彼はゆっくりと、説明し始めた。
「私は奴隷身分です」
友人たちが驚く。
コーデリアも、次の言葉に備えることはできなかった。
「先日、ノーウッド様に相談し...私という奴隷を、公爵家に売却していただくことになりました」
売却。
その言葉が、コーデリアの胸に突き刺さった。
「売却金で、お嬢様が一生不自由なく暮らせる資金が確保できます」
ウィリアムは静かに続けた。
「これで...もう、お金の心配はありません」
彼は微笑んだ。悲しげに、でも優しく。
「お嬢様は、もう自立されました。私がいなくても大丈夫です」
友人たちが絶句している。マリーは手で口を覆い、セシリアは涙ぐみ、アニエスは固まっている。
コーデリアは、まだ理解が追いつかなかった。
「...え?」
小さな声が、震える。
「売却...って...」
「はい」
ウィリアムは優しく答える。
「あなたが...いなくなる...?」
その言葉を口にした瞬間、現実が襲ってきた。
「いや...いや、そんな...」
コーデリアは椅子から立ち上がった。
手が震える。足が震える。
「ふざけないで!!」
コーデリアの叫びが、部屋に響いた。
全員が驚く。ウィリアムも、老商人も、友人たちも。
今まで見たことのない、コーデリアの怒りの表情だった。
「どういうこと!?私に相談もなく!?」
涙が溢れる。でも、止められない。
ウィリアムが一歩前に出る。
「お嬢様...」
「黙って!!」
コーデリアは手を振り上げた。
「私のため?私のため!?」
涙が頬を伝う。
「誰が、あなたを手放せって言った!?」
「誰が、一人で生きろと言ったの!?」
友人たちも、涙ぐんでいる。マリーは目を閉じ、セシリアは泣いている。アニエスは拳を握りしめている。
「あなたは...あなたは、私が何を望んでいるか...」
コーデリアの声が、震える。
「何も...何も分かっていない!!」
ウィリアムは動揺していた。今まで見たことのない、コーデリアの姿。
「お嬢様...しかし、これは...」
「黙って!!」
コーデリアは涙を拭おうともせず、ウィリアムを見つめた。
「あなたは...いつも、私のためって言う」
「でも...本当に、私のためなの?」
ウィリアムが言葉に詰まる。
「私は...お金なんか、要らない」
コーデリアは震える声で言った。
「あなたが...あなたがいなくなるくらいなら...」
「お金なんて...全部、要らない!!」
その叫びに、ウィリアムは固まった。
「お嬢様、お聞きください」
ウィリアムは必死で説明しようとする。
「私の私財は、もう底をついています」
「このままでは、半年も持ちません」
「お金がなければ、生きていけないのです」
コーデリアは涙を拭った。
「だったら!」
涙声で、でも力強く言った。
「だったら、一緒に働けばいいじゃない! 私も、何かできることがあるはず!」
その言葉に、ウィリアムは言葉を失う。
確かに、お嬢様はまだ多くのことができない。紅茶は苦く、クッキーは形が崩れている。
でも。
「それでも!」
コーデリアは叫んだ。
「それでも、諦めない!」
マリーが立ち上がった。
「二人とも、落ち着いて」
「ちゃんと話し合いなさい」
セシリアがコーデリアの肩を抱いた。
「深呼吸して」
アニエスも優しく声をかける。
「コーデリア、あなたの気持ちを伝えなさい」
コーデリアは深呼吸した。一度、二度。
そして、ウィリアムを真っ直ぐに見つめた。
「ウィル、聞いて」
涙を拭い、震える声を抑えて。
「あなたは...私にとって、どれほど大切か」
ウィリアムが目を見開く。
「お金なんて...比べ物にならないくらい、大切なの」
コーデリアは一歩前に出た。
「私は...まだ不器用よ」
テーブルのクッキーを指す。
「紅茶だって、まだ苦い。クッキーも、形が崩れてる。料理も、掃除も...完璧じゃない」
自分の無力さを認める。それは、辛いことだった。
「でも!」
コーデリアは声を張り上げた。
「あなたと一緒だから、成長できるの」
ウィリアムの目に、涙が浮かぶ。
「これからも...もっと成長する」
コーデリアは手を差し伸べた。
「いつか、あなたの隣に立てるように。いつか、あなたを支えられるように」
その手は震えていたが、決意に満ちていた。
「だから...」
涙が溢れる。でも、言葉を続ける。
「だから、待ってて欲しいの。一緒に...一緒にいて欲しいの」
セシリアが涙ぐんでいる。アニエスは拳を握りしめている。マリーは優しく微笑んでいる。
コーデリアは、最後の言葉を紡いだ。
「私たちは...家族になれる」
ウィリアムが息を呑む。
「奴隷と主人じゃなく」
友人たちが小さく叫び声を上げる。
「子供も...たくさん作りましょう」
コーデリアは微笑んだ。涙でぐちゃぐちゃの顔で。
「あなたが欲しかった、家族を。私も...家族が欲しかったの」
コーデリアは手を差し伸べたまま、ウィリアムを見つめる。
「さぁ、ウィリアム」
その声は、震えていたが、力強かった。
「どうですか?」
ウィリアムは動けなかった。
コーデリア...あなたは...
こんなにも...私を...
涙が溢れる。止められない。
「お嬢様...いえ、コーデリア...」
声が震える。
「でも、もう決めたことなのです」
その時。
「待て、ウィリアム君」
ノーウッドが静かに言った。
全員がノーウッドを見る。
「慌てるな。話を最後まで聞け」
ウィリアムが顔を上げる。
「ノーウッド様...?」
ノーウッドは深く息を吸った。
「奴隷だの身売りだの何の話だ? 私が持ってきた公爵家の提案は、最初から違うだろう?」
全員が息を呑む。
「マグナス公爵家が求めているのは...」
ノーウッドはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「奴隷ではない。執事長としての、正式な雇用だ」
ウィリアムが驚愕する。コーデリアも、友人たちも。
「破格の給与」
「奴隷身分からの解放」
「住居の提供」
ノーウッドは続けた。
「奴隷の身売りだなんてウィリアム君、君だけが言ったことだ。私はそんな話を公爵様にしていない。なによりも...」
彼は微笑んだ。
「妻や子がいるなら一緒に来てもいい、という条件だ」
沈黙。
長い、長い沈黙。
ウィリアムは信じられないという顔をしている。
「なぜ...なぜ、最初にそれを言わなかったのですか」
ノーウッドは厳しい表情になった。
「お前が、『奴隷として売ってくれ』などと馬鹿な事を言ったからだ」
その声には、深い想いが込められていた。
「お前の覚悟を...試したかった」
ノーウッドの表情が和らぐ。
「そして...…お嬢様の覚悟も、見たかった」
彼は二人を見つめた。
「二人とも...」
ノーウッドは微笑んだ。
「合格だ」
マリーが微笑む。セシリアは涙を流している。アニエスは拍手している。
コーデリアは、まだ状況が飲み込めていなかった。
「つまり...」
「つまり、ウィリアムは...」
ノーウッドが頷く。
「奴隷ではなく、自由な身分で働ける。そして、家族と一緒に暮らせる」
コーデリアの目が輝いた。
「本当に...?」
「本当だ」
ノーウッドは二人を見つめた。そして、優しく微笑んだ。
「実はな、マグナス公爵家から私に話が来たのは、ある噂がきっかけだったのだ」
友人たちが顔を見合わせる。
「商人の間では『優秀な執事がいる』という話が広まっていた。宮廷に出入りする商人からも、同じ名前が上がっていた。そして、社交界のサロンでは『没落令嬢に尽くす執事の美しい物語』が評判になっていたそうだ」
ノーウッドは三人の友人を見渡した。
「公爵家の耳にもその噂が届いてな。『ウィリアム・グレイという執事について知っているか』と、私に問い合わせが来たのだ」
マリー、セシリア、アニエスが、驚いたように目を見開く。
「旧知のエヴァーハート家の執事だと答えたところ、ぜひ迎え入れたいと。君たちが撒いた種が、公爵家の耳に届いたのだよ」
セシリアが小さく「私たち...?」と呟く。マリーは目を潤ませ、アニエスは拳を握りしめている。
「君たちの友情が、この二人を救ったのだよ」
ノーウッドは穏やかに言った。
コーデリアは友人たちを見つめた。涙が溢れる。
「みんな...大好きよ!」
言葉にならない。ただ、感謝の気持ちが胸いっぱいに広がる。
三人も涙ぐんでいる。言葉はいらない。ただ、温かい視線が交わされた。
ノーウッドは咳払いをして、場を引き締めた。
「さて、ウィリアム君」
「公爵様は『妻や子もいるなら』と言ってくださったが?」
「います!」
コーデリアが即答した。
全員が驚く。
「妻がいます!」
コーデリアは胸を張って言った。
「私です!!」
友人たちが拍手喝采する。セシリアは「言った!」と叫び、アニエスは「すごい!」と拳を突き上げる。マリーは涙を拭いながら微笑んでいる。
セシリアが、ウィリアムに向かって言った。
「さぁ、ウィリアム!」
「してちょうだい!」
アニエスも続ける。
「プロポーズよ!」
マリーも優しく頷く。
ウィリアムは動揺していた。顔が赤くなり、視線が泳ぐ。こんなに慌てた彼を、コーデリアは初めて見た。
「お、お嬢様...いえ、コーデリア...」
彼は深く息を吸った。そして、椅子から立ち上がると、コーデリアの前に膝をついた。
「私は...あなたの執事として、ずっと仕えてきました」
その声は震えている。
「でも、もし許されるなら...」
ウィリアムはコーデリアの手を取った。
「あなたの夫として、一生そばにいさせてください」
静寂。
コーデリアは涙が溢れた。
答えは「イエス」でも、「愛してる」でもなかった。
「ありがとう、ウィリアム」
その言葉が、全てを語っていた。
ウィリアムは涙ぐんでいる。
「コーデリア...」
「ウィル」
二人は見つめ合う。
ノーウッドが優しく言った。
「二人とも...」
「幸せになれよ」
コーデリアは深々と頭を下げた。
ウィリアムも頭を下げる。
「ノーウッド様、本当に...」
二人は顔を上げ、見つめ合った。
「ウィル...」
「コーデリア...」
もう、何も言葉は要らなかった。
「愛してる」なんて言葉は、必要ない。
「ありがとう」と「献身」が、全てを語っている。
友人たちが温かく見守る。ノーウッドも満足そうに微笑む。
応接間には、温かい空気が流れていた。
白い薔薇が、窓辺で二人を祝福するように揺れている。
*
数ヶ月後。
マグナス公爵家の庭。白い薔薇が、美しく咲き誇っていた。
ウィリアムは執事長として、立派に働いている。公爵夫妻からの信頼も厚く、屋敷の使用人たちも彼を慕っている。
庭の一角で、コーデリアが使用人たちに紅茶を振る舞っていた。
「お嬢様、美味しいですよ」
若い使用人が微笑む。
「まだ少し苦いですが...」
コーデリアは照れたように笑った。
「いいえ、心がこもっていて、最高です」
別の使用人も頷く。
ウィリアムが近づいてくる。
「コーデリア」
「ウィル」
二人は微笑み合った。
ウィリアムは、コーデリアのお腹に優しく手を添える。
そのお腹は、少し膨らんでいた。
「愛しています」
ウィリアムが静かに言うと、コーデリアが微笑えんだ。
「ありがとう、ウィル」
献身と感謝で結ばれた、二人の物語。
(完)
最後までお読みいただきありがとうございました。
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