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ナイトストリーム  作者: Putra Maulana
第1章 イジェン山
2/5

第2章 | 赤坂ウィークリーマンション

ガーンガーン、と電話が鳴った。


気乗りしないまま電話を取った。


>「おはよう、兄貴!!」


独特のアクセントに、すぐにわかった。レイだ。


>「お昼だよ、レイ」と小さく微笑んで答えた。


>「ひょう、今月帰ってくるんでしょ?」と、彼は慌てて尋ねた。


>「予定は…姉も来るって言ってる」と答えた。


>「え?姉がいるの!?」と、レイは驚いたような声を上げた。


>「え、姉じゃなくて…友達よ」と、慌てて訂正した。


>「えーと…」と、レイは小さく笑いをこらえた。


>「今月帰ってくるなんて、まさにうってつけだね」と彼は言った。


>「どうして?どうしたの?」と、私は不思議そうに尋ねた。


>「メイの好きなアーティストがバニュワンギでコンサートをするらしいの。」


>「わあ!誰?」私はますます興奮して尋ねた。


>「歌詞のあるやつだよ…」


レイはすぐにその曲のヴァースを歌った。Hindia - cincin 調子は外れているが、熱意に満ちている。

"Kau bermasalah jiwa

Aku pun rada gila

Jodoh akal-akalan neraka

Kita bersama"

[ 精神的な問題を抱えている

私もちょっと頭がおかしい

ヘルズ・トリック・マッチ

私たちは一緒に ]


私は笑いました。「わあ、ヒンディー語!すごい!」私の目はすぐに輝きました。


「レイ、まだチケットある?」と僕は急いで聞いた。


「心配すんな、ブロ。もう俺が予約しといたから。」とレイは余裕そうに答えた。


「えっ!?さすがだな、レイ!」と僕はめちゃくちゃ嬉しくなった。


レイはくすくす笑った。

「なあ、お前の日本の友達…インドネシア語もわかるのか?」


「ヒマちゃん?うん、分かるよ。しかもプレイリスト、ヒンディアの曲いっぱいだし。」と僕は軽く笑った。


「へえぇ…あの日本の子、なかなかイケてんな。」



---


LIVE ON 23:00

NightStream 〜 赤坂ウィークリーマンション 〜


視聴者数:48人


ヒマ:「おはよう、みんな。今夜は約束通り、赤坂ウィークリーマンションを探索するよ。」


ヒョウ:「この場所は評判が悪いんだ。変な音や幽霊がよく出るってさ。」


@tomeo: ひぃ怖い

@hororflix: 昔そこに住んでたことある

@well: serius gua indo sendiri


ヒマ(hororflixに反応):「わあ…それはラッキーだったのか、それともアンラッキー?」


僕とヒマは古びた建物の前に立っていた。外壁の塗装は剥げ、ところどころに苔の跡が残っている。夜の風が冷たく吹き、どこか湿った異臭が漂っていた。


僕たちは中へと足を踏み入れる。玄関を抜けた瞬間、重苦しい空気を感じた——まるで誰か見えない何かがこちらを見ているような気配。


(カメラが少し揺れる)


@ger: カメラ揺れてるぞ

@mio: カメラも怖がってるんじゃね


廊下は細長く、天井には古い蛍光灯がチカチカと弱々しく光っていた。僕たちの足音だけが反響し、静寂をさらに際立たせる。


ヒマ:「想像してたより…ずっと暗いね。」


ヒョウ:「だな。しかも…妙に静かすぎる。」


僕たちはとある部屋の前に立った。ここ207号室は、過去に女性が自殺したという噂がある部屋だ。


僕は静かにノックした。もちろん、返事はない。


ヒマ:「開けてみる?」


ヒョウ:「開けよう。」


ドアはギィ…という音を立てて開いた。湿気と、どこか鉄のような匂いが鼻を突いた。


@rin: うわマジ怖い

@kei: 入るなって…


懐中電灯をつけると、床板はひび割れ、壁には水の跡のようなシミ。隅には壁に向かって置かれた椅子があった。


ヒマ:「この椅子…ずっとこのまま?」


ヒョウ:「夜中に動いたって話もある。」


@tom: 椅子が動くとかウソだろ

@taku: 絶対ネタでしょ


ヒマ:「座ってみようか?」


僕はうなずいた。ヒマはカメラを三脚にセットし、ゆっくりと椅子に座った。


ヒマ:「…何も起きないね。」


しばらくすると、どこか隣の部屋からノック音のような音が聞こえた。


(カメラがまた揺れる)


ヒョウ:「今の音、聞こえた?」


@ger: 確かに聞こえた

@rin: やばいマジで…


ヒマ:「落ち着いて…多分パイプの音か、隣の人だよ。」


しばらく静かにしていた。壊れた天井のファンだけが、低い音で回っていた。


ヒョウ:「ヒマ、ここの歴史ってどんなの?」


ヒマ:「昔はここ、サラリーマンの仮住まいだったらしい。でも、1年のうちに3人の自殺者が出て…そのうち2人がこの207号室で亡くなったの。」


@kei: マジならやばい

@tom: でもどうせヤラセだろ


僕はカメラを持って廊下を歩いた。非常階段の近くに茶色いシミがあった。鉄のような匂いがさらに強くなる。


ヒョウ:「これ…血の跡かも。」


ヒマは僕の後ろに立っていた。僕たちは目を合わせた。…何かが背後を歩いているような気がした。


(突然またカメラが揺れる)


@eru: 今の何!?

@mio: カメラまた変になってる!


ヒョウ:「今、誰か通ったよな…」


ヒマ:「脅かさないでよ、ヒョウ…でも、私も何か感じたかも。」


微かな呼吸音のような音が聞こえた。振り返るが、廊下には誰もいない。


@ger: 編集だろ

@rin: 絶対仕込みだわ


非常階段の扉が少し開いていた。さっきは確かに閉まっていたはずだ。


ヒマ:「開けてみようか。」


ヒョウ:「うん、開けよう。」


そこには埃とクモの巣だらけの小部屋があるだけだった。


@tom: 大袈裟すぎ

@kei: もうネタってバレバレ


ヒマ:「見た目は普通でも、なんか…ゾッとするよね。」


ヒョウ:「…なんか、ずっと誰かに見られてる気がする。」


207号室に戻ると、さっきの椅子が動いていた。今度はドアの方を向いていた。まるで、僕たちを待っていたかのように。


@rin: 椅子の位置変わってる!?

@taku: 絶対カメラのトリックだろ


ヒマ:「私、動かしてないよ。」


ヒョウ:「俺もだよ。」


僕たちは黙り込んだ。カメラは椅子をじっと映し出す。


再びノック音が鳴る。今度はもっと大きく、上の階から何かが落ちたような音も続いた。


ヒョウ(小声で):「…本当に怖い。」


@kei: こんなの安い演出だろ

@tomeo: でも…ちょっとゾクッとした


ヒマ:「…今日はここまでにしようか。みんな、観てくれてありがとう。」


ヒョウ:「また次のNightStreamで会おう。」


ライブ終了。

Live End 00:19


建物を出ると、僕たちは歩道で少し立ち止まった。東京の夜風がアスファルトの匂いを運び、街の音も少しずつ静かになっていく。


ヒマは深く息を吸い込んだ。「…まだ心臓バクバクしてる。」


僕はうなずき、首筋をなでた。「俺も。でも…なんかホッとした。」


ヒマは静かに僕を見て言った。「椅子が動くって、思ってた?」


僕はしばらく黙って、古びた建物を見つめた。「いや。せいぜい音が聞こえるくらいだと思ってた。」


しばし、二人とも黙ったまま歩道を歩いた。水たまりに映る街灯が、僕たちの影を揺らしていた。


ヒマがぽつりと呟いた。「でもさ…怖くても、また配信したくなるのが不思議。」


僕は少しぎこちなく笑った。「NightStreamって中毒性あるよな。」


ヒマも薄く笑って答えた。「うん…中毒。そして…視聴者との、小さな秘密。」


「ヒマさん…」

「ん?」とヒマが返す。夜風にかき消されそうな声だった。


「明日、バニュワンギに行くんだよね…」


ヒマが僕を見て、静かに言った。

「うん。朝8時に空港に出発して、9時ごろのフライト…何も起きなければね。」


僕はうなずいた。「そうだね。」


僕たちは言葉少なに歩き続けた。濡れた舗道に足音が響き、街灯の光が水たまりに揺れていた。


言葉よりも静寂がすべてを語る。

けれど、その沈黙の奥に、確かに同じ想いがあった。


——僕たちはまだ知らなかった。

あの故郷で、何が待っているのかを。



おもしろい事実

ヒョウはインドネシア語と日本語の混合文字です

ヒマは彼がヒマラヤに登ったときに母親がつけた名前です。

次の章は山に関係していますか?

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