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24企画参加作品

イタリアと酸化還元反応

作者: 御田文人

しいなここみ様『麺類短編料理企画』参加作品

 新潟市某高等学校のとある教室で、化学の授業が行われていた。


「このように酸素と結びつくことを『酸化』、逆に酸素を失うことを『還元』と言っていたな」

 教師が板書しながら話す。

「この元の物質に着目すると、酸化されているものは電子を失っているよな」

 生徒たちはカリカリとノートを取っている。

「だから、広義には電子を失うことを『酸化』、電子を得ることを『還元』と言うんだ」

「ちょっと待ってください!急すぎて意味わからない!」

 一人の生徒が立ち上がった。


「どこが分からない?」

「その定義だと、酸素と結びついてもいないのに『酸化した』ってケースがあるわけですか?」

「あるな。典型的なのは金属が酸に溶けた時だ。鉄(Fe)が鉄イオン(Fe2+)になれば酸化だ」

「雑過ぎるでしょ!言葉が分かりにくいにも程があります」

「んなこと言ってもな・・・理系科目は名称適当なのいっぱいあるぞ・・・そもそも『名称なんて区別できればそれでいい。酸化が嫌ならA0821反応とかにするか?』ぐらいの価値観の人間いっぱいいるからな、理系の天才達には」

「それで納得できませんよ。国語じゃ『相手が分かる言葉を使え』とか言われてるのに」

「しかしな・・・」

 教師は腕を組んで考えた。

 そして閃いた。


「では聞くが、お前はカレーイタリアンはどう思うんだ?」

 生徒は絶句する。そこを突かれると痛い。

「あれにイタリア要素は無いぞ。名前を変えるべきだと思うか?」

「いや・・・カレーイタリアンはカレーイタリアンです。カレー焼きそばではイメージが違う・・・」

 生徒は歯噛みした。


 新潟市には『イタリアン』なるソウルフードがある。

 元々は焼きそばにトマトソースをかけたものだ。

 しかし、後に出来た派生が色々とある。

 焼きそばにカレーをかけた『カレーイタリアン』

 ホワイトソースをかけた『ホワイトイタリアン』

 麻婆豆腐をかけた『麻婆イタリアン』等。


 イタリア要素があるのはノーマルだけなのだが、新潟市民はそんなことは気にしない。


「いいか、元々は『イタリア風焼きそば』だ。しかし、やがて『焼きそばに何かをかける形式そのもの』を『イタリアン』と呼ぶようになった。それと同じことだ。カレーイタリアンのつもりで、この酸化還元も受け入れてはくれないか?」

 教師は諭すように言う。

「わかりました。ありがとうございます」

 生徒は納得して着席した。


 これで一件落着と思い教師は油断した。言ってはいけない一言を言ってしまったのだ。

「まぁ、なんだかんだ言って、イタリアンはノーマルが一番旨いけどな」


 この一言は新潟市民が大勢いる中で言ってはいけない。

「カレーまでがノーマルだ」

「ホワイトの良さが分からないヤツは素人」

「麻婆を認められないヤツは老害」

「でも、最後にはノーマルに戻らない?」

「いや、オレは最後に戻るのはカレーだ」

「いや、オレは最後にカレーに戻った更に先でノーマルに戻った」

「オレは更に先の更に先で・・・」


 その授業の場で結論が出ることは無かった。



ー了ー

高校の授業の中で一番納得できなかったのがこれなんです。。。

で、色々考えた結果、「まぁイタリアンみたいなものか」と無理やり自己解決した記憶を小話にしました。


ー追記ー

いかすみこさんから非常に分かりやすい解説を頂きました。

「酸化」が先で、「酸素」という名称の方が変なのだそうです。

なるほど!

詳しくは感想欄をご参照ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「イタリアン作るときにも、酸化還元反応が起こってるはずです!」 なんて言う生徒がいると、さらに混乱しますね……w 電流の向きと電子の動きが逆なのも、電子の発見より前に、電流の向きを定義し…
[良い点] イタリアン!? 知らなかったッスΣ(゜Д゜) 名古屋の台湾ラーメンみたいなもんッスね?ლ(´ڡ`ლ) ローカルフードのお話、楽しいです(^o^)
[良い点] 何か納得が出来ない事があるとそれから理解が進まなくなってしまうのは、学校の授業でも往々にしてありますね。 そういえば育児関係のビデオで、掛け算の反対が割り算なのに納得出来なくて四則計算に苦…
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