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魔法少女研修

作者: 椎名正

 泣くな!

 初めての戦いが終わったからって、いつまでも泣いているんじゃない!

 と言うか、こんなぬるい戦いで泣いているようじゃ、魔法少女なんてやっていけるはずないぞ。

 辞めたほうがいいんじゃないか。

 そうだな。辞めろ。

 今すぐ辞めろ。

 まだ研修期間中だから、辞めるのも簡単だ。

 辞めない?

 なんでだよ?

 代わりはいくらでもいるんだぞ。

 あのクソマスコットが暗躍したせいで、毎年百人以上が魔法少女の卵になって、私達のようにペアになって魔法少女の研修をいたるところでやっている。だから、おまえ一人が辞めたところで、変わらないんだよ。

 私?

 私は、誰かがやらなくちゃいけないことだから。

 いや、それこそがクソマスコットの思惑通りだったでしょう。今、政府の偉い人が、魔法少女がいなくても、悪の魔法少女軍に対抗できるようにと走り回ってくれているから。私も引退するから。

 ごほん。

 私のことは、どうでもいい。

 おまえのことだ。

 おまえはいい年だろう。見たところ三十は越えている。周りは中学生だぞ。

 いや、いい。本当の年は言わなくていい。本名も言うな。私達はお互いに身元を明かさない決まりだ。そりゃあ、顔を晒しているからわかるときはわかるが、プライベートであったら素知らぬふりをしろ。

 いいか。魔法少女になってもいいことなんかないんだそ。戦いは怖いし、家族に隠している場合は相談もできない。孤独で辛い。今みたいに怪我もする。

 泣くな!

 こんな傷、いつものことだ。

 もっと致命的な怪我だってしょっちゅうだ。

 だから、泣くなって!

 泣かないでよ。

 私は大怪我なんてしてないから。今日はたまたま、初めてよ。本当だって。致命的な怪我ってのは他の魔法少女のことを言ったのよ。

 私は大変なことひとつもなかったよ。楽な仕事しかやってないわ。

 でも、大変な部署もあるから、あなたは辞退した方がいいってことよ。家族も心配するでしょう。

 恨むなんてとんでもない。私は家族に感謝しかないし、大好きよ。

 世の中には、人を意味もなく踏みつけにする人間がいる。私がそうならなかったことは、親のおかげだと思っている。

 立派になって、とか止めて。

 泣かないでよ。

 ママ。


                      おわり

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