第10話 2体目のフロアボス
「邪魔だ、雑魚ども……!!」
言い捨てながら、ショットガンを乱射しまくる俺。
あれから、俺らは下の階層へと一気に下っていっていた。
そこらの雑魚に関しては、後で喰らってスキルを取ればいいため、殺したら異空間収納に放り込んでおき、本命である階層主を目的に進んでいく。
とはいえ、このダンジョンは1階層ごとの広さが尋常ではない。
かなり練り歩いて回っているが、下へと続く階段がなかなか見つからない。
ライルの話によれば、このダンジョンは1日事に階層ごとの形状が変わるようで、昔ライルが通った形状とは全くの別物になっているらしい。
面倒な事だ。
「本当にあるんだろうな、下への階段ってのは。」
「あぁ。あるはずじゃ。じゃが、気をつけろ。感じてはいるじゃろうが、魔物はどんどん強くなる。それに、この階層は探知スキルや魔法は無意味だと思うんじゃな。魔力の妨害でまともに反応しないのが落ちじゃ。」
ライルの言う通り、探知は今のところ全く成功していない。
シノの探知もこのフロアでは発揮しきれないの現状である。
何か魔力によって阻害されているようだ。
俺の探知も全く反応しない。
そして、次々にダンジョン内の魔物と遭遇する。
探知スキルが発動しない分、不意をつかれることが多くなった。
今のところは何とか対応しきってはいるが、深層に進むごとに強くなるのだとしたら、探知が復活したとしてもいつかは対応しきれなくなりそうだ。
早くも俺だけレベルの差が開いてきたというべきか……。
「っ!」
横からの不意打ちをショットガンで何とか防ぎきる。
「破弾鋼!」
ライルの強力な一撃が魔物に炸裂する。
瞬間、魔物の体が爆ぜた。
「ちっ、お前にサポートされるとはな……。」
「まだまだじゃのぅ、ナナ。カッカッカッ!」
ムカつくジジィめ……。
イライラを晴らすように近くにいた魔物をショットガンで蜂の巣にする。
にしても、数が多い。
殺っても殺っても、減りゃしない。
どれだけ倒せば、こいつらは狩りきれるんだ?
そう考えながら、近くにいた魔物を殺す。
「……まともに相手してたらキリがない。上手く逃げながら、進もう。」
「そうだな。もうこの階層の魔物は見飽きた。」
目の前にいた魔物を殴り飛ばして、魔物の少なそうな方角を目指す。
「それにしても、驚いたのぅ。突然魔物を喰らい出すんじゃから。」
「それほど驚くことでもないだろう。世界を見りゃ、俺みたいなのは多分いるぞ?」
「少なくともわしは見た事ないわい。そもそもそういうスキルがあったとしても、魔物を喰らってスキルを得ようと考えつくものは限られると思うぞ?本来魔物を喰らえば、通常の冒険者程度なら死に至るからの。」
「なに?」
「なんじゃ、知らんのか。この世界の常識じゃぞ。考えてもみよ、進化も何も存在しない人間がその体の許容量を超えた魔力を体に含めばどうなる。魔物なら一定の魔力と力を蓄えたりした時進化したり、個体値が上昇したりするが、人間にはそんなものは無い。故に普通なら死に至るんだ。魔力蓄過症を引き起こしてのぅ。」
「…………そういうものか……。」
そういえば、そういうことは考えたこと無かったな。
この体、見た目の割に動きやすいし、何より色々スキルが着いているからそういうことを気にしたりしたことがないのだ。
気にする以前にそういうことが起こったことがないからな。
今までに起こらなかったってことは、少なくともなにかそういったものをレジストするスキルがついているか、そもそもの体の作りがそう言う作りになっているのか。
そのどちらかだろう。
「まぁ、俺がその症状を引き起こすことはほぼないだろう。事実今まで引き起こしていないしな。」
「うん。大丈夫。以前から私がこっそり精密に検査しているけど魔力の大きな変化は今のところない。」
「なんで俺の事をこっそり検査してんだよ……。」
「お主なかなか不思議な人間じゃなぁ。常識が通じないというかなんというか……。規格外じゃよ。存在そのものが。」
感嘆したような声で顎をさするライル。
ぶっちゃけ、俺からしたらお前の方が規格外だよと心中で思ってしまう。
シノを軽々とあしらうその実力もそうだが、やはりこのダンジョンに来てシノと同じように息も切らさず、魔物を葬っていること自体が俺からすれば規格外そのものだ。
追いつくにはまだまだレベルも経験も何もかもが足りない。
と、そんなことを考えていれば、シノが声を上げる。
「やっと見つけた。フロアボスの扉。」
シノが指さす方向に目を向ける。
暗い洞窟の中だが、それでもわかる異様な空気を放った巨大な門がそこにはあった。
開けなくてもわかるほどに濃い魔力を感じる。
……一体、中にはどんな魔物がいるんだか。
これほどの魔力を持った魔物はゼルセオスの森で見る以外には初めてかもな。
「中には、お前みたいに知性のあるやつがいるのかねぇ……。」
「さぁのぅ。魔物もフロアボスも時が流れるにつれて、変化していくダンジョンじゃ。何が出るかなんてワシにも分からんよ。ただ、少なくとも言えるのは、このダンジョンのフロアボスは激動の時代を生き抜いた獣と同等の力……それ以上のものを持っている可能性すらある。気を引き締めてかからんと死ぬぞ。」
「そんなことは言われんでも、俺がいちばんわかっている。まぁ、どちらにせよやらなくちゃ進めないからな。……行くぞ。」
そうして、俺を先頭にして門へと近づいていく。
近づくほどに濃くなる魔力の密度と圧。
立っているだけで、潰されてしまいそうな程である。
この中にはどんなに化け物がいるんだろうな、全く……。
もんの目の前まで来て、門を両手で押す。
すると、思いの他軽い感触があり、すんなり門は開いた。
……だが、中に溜まっていたのであろう魔力は門が開かれたことによって一気に吹き出てくる。
魔力だけで、俺にいくつかの切り傷をつけるほどに。
「中に入るぞ。」
俺らはそのまま真っ暗な部屋の中に、入っていった。
1寸先も見えない闇。
その中に確かな魔力の波長を感じる。
門の外にいた時も色濃く感じた魔力だ。
「……シノ、ライトを頼む。」
「了解。〝ライト〟」
シノの一言で光の小さな玉が出現して、部屋の中を照らし出す。
同時に目の前に姿を現したそれに、俺は絶句した。
目の前には、小さなゴブリンが1匹たっていた。
ゴブリンだと?
これがフロアボスか?
「…………どう思う、お前ら。あれは本当にゴブリンだと思うか?」
「分からない。魔力の密度が高くて、底が見えない。鑑定もこのフロアじゃ使えない。」
「なにか引っかかるのぅ。この魔力の流れには少し覚えが……。」
「ふん……まぁ、聞いといてなんだが……ゴブリンだろうがそうでなかろうが……目の前にいるやつをぶっ殺す。それしかねぇよなぁ!」
大鎌に持ち替えた、俺が一気に距離を詰め、ゴブリンの首目掛けて大鎌を振り下ろす。
同時にライルが大声を出した。
「っ、気をつけよ!それは、姿を手にしたリビング・リーパーじゃ!!ゴブリンの見た目はただのカモフラージュじゃ!」
「!」
気がつけば、時は既に遅かった。
俺の胴に何かがドスリと突き刺さった。
だが、その程度で止まるほど俺はやわじゃない。
もう大鎌は振り下ろしてる。
こいつが突き刺されば、こいつもタダでは……。
と、思った矢先に大鎌は一瞬にして砕け散った。
「ぁ?」
そして、更に俺の両手、両足を順に突き刺されていく。
これは、まずいな……。
体の自由を完全に奪われた。
しかも、こいつ……俺の魔力を吸ってやがる。
「こ、の……!」
抜け出そうと抵抗するが、全く抜ける気配がない。
「グゥルル……。」
俺の方を見て、少しそう唸るとリビング・リーパーが口を開ける。
次の瞬間には、顔が大きな口へと変化した。
俺の事を丸呑みにする気か?
かなり目の前の獲物に集中しているようだが……。
「はは……いいのか?俺の事ばかり見ていてよ。」
「グァ?」
リビング・リーパーの間抜けな声と同時に、背後から冷えきった声が聞こえた。
「ナナを離せ……化け物……!」
瞬間、リビング・リーパーの腕が切断された。
「ナナ!」
落下する俺を瞬時に抱きかかえて、その場から距離をとるシノ。
「ナナ、大丈夫……?!」
「あぁ、問題ない。大した魔力も吸われてないしな。」
にしても、尋常ではない速さだ。
当たる間合いまで入っていた俺の攻撃を軽々と阻止しやがった。
今の俺のスピードでしとめられる相手では無さそうだ。
「大丈夫そうじゃな。動けるなら、早う立て。相手は待ってくれなさそうじゃぞ。」
そう言って、俺らの前に立つライル。
その向こうではすぐにでも飛びついてきそうな勢いで、構えているリビング・リーパーがいる。
本当に獰猛な獣だよ……。
「よし……やるか。」
「後ろは任せて。」
その場で立ち上がり、戦闘準備をこちらも済ませる。
どこからでもかかってこい。




