2話 冒険者昇格試験
あれから、俺らは昇格試験を受けるために試験部屋へと誘導されていた。
冒険者ギルドはかなり広い。
地下一階のフロアから3階までのフロアがあるのだから、だいぶ金をかけているようだ。
?
まぁ、話によればここは本部だと聞くし、それぐらいでかくても別に不思議はないか?
そこまでの広さがいるのかは不明だが。
「さて、ここが今回試験を受ける部屋だ。中はアーティファクトで空間を拡張してるから安心していい。」
「……誰が試験官なんだ?下手なのをよこしたら、大変なことになりそうだが。」
「こええよ。大丈夫だ。お前が心配しているようなことにはならん。なんたって、今回の試験を担当するのは……。」
と、言ってドアを開けるヘルメロ。
そして、中に入るやいなやどこから取ったのか大きな大剣を片手に持って、俺らの前にたった。
「俺がするからだ。」
「ほぅ?お前が?俺の相手をするのか?」
「なんだ、不満か?俺はいまの冒険者ギルドの中でいちばん強いと思うぞ?」
「だろうな。他の連中の中では比較的強いだろうことはよくわかる。だが、俺からしたら所詮その程度の違いだ。」
瞬間に、ショットガンを大鎌に変形させて、ヘルメロの首にあてがった。
俺の一瞬の行動にヘルメロは全く追いつけていなかった。
少しでも動いたら、首が飛ぶ間合い。
ここまでになって、やっと俺の動きに気づけるのだ。
「お前……この程度でよく立ちはだかれたものだ。舐めてるのか。」
「いーや、舐めては無い。お前が強いのもよく理解してる。だからこそ、俺は今お前に戦いを挑んでいる。俺と勝負しろ、ナナ・アベルシュタイン。お前が強いとそう言うのなら俺にその強さを見せてくれ。俺はお前の本当の強さってやつを知りたい。」
真っ直ぐに、真剣に俺の目を見てくる。
男の覚悟と言うやつか。
分からんでもないものだ。
前世が元男だったのもある。
だが、いざやられる側になると、面倒だと感じるものでもあるな。
「死んでも、問題ないんだな?」
「あぁ。死ぬ覚悟はある。できることなら死にたくなどないけどな?」
「ほざけ。俺に本気で来いってことは、それはもう自分を殺してくれって言っているようなもんだろうが。」
「確かにそうかもな。」
言いながら、部屋の奥へと進んでいくヘルメロ。
そして、真ん中あたりで足を止めて、俺の方に振り返る。
「さぁ、始めようぜ。もう試験は始まってんだからな。」
「……いいだろう。元Aランクの自信ごと、真っ向からたたきつぶしてやろう。」
◇
……対面して、はっきりわかった。
ナナ・アベルシュタインは異常だということが。
突然冒険者ギルドに現れたあの時から、普通ではないということはわかっていた。
だが、ここまでヤバい気を感じたのは今日が初めてだ。
一体本当に何者なのやら……。
そもそもどこから来たのかもわからん。
「試験の内容は簡単だ。俺を倒す。以上だ。それ以外の勝利方法は認めない。」
「最初からそのつもりだ。」
「そうか。じゃぁ、試合開始だ!〝かの者を焼き貫け!ファイア・ランス!〟」
かざした右手から魔法陣が作り出され、炎の槍が射出される。
それにナナ・アベルシュタインはニヤリと仁王立ちして笑っていた。
避けようともせずだ。
「中級魔法の詠唱省略とは、なかなか。Aランクの冒険者だけはあるようだ。……その程度とも言えるがな。」
瞬間に俺が放ったファイア・ランスは、天井に弾き返された。
どうやって魔法の軌道を変えた?
そんな芸当、今まで冒険者をしてきたが見た事ないぞ……。
「っ……!なら、これならどうだ!〝加速〟、剣技スキル〝ダブルブレイダー〟!」
一気にナナちゃんアベルシュタインに接近し、両手に持っていた短剣を双方から振り下ろす。
ガキィィイン!と金属音が鳴り響く。
「素早さを上げて、斬りかかってくるのはいい考えだ。ただ、俺とお前のステータスの差がありすぎる。多少早くなったところで今の俺にお前の攻撃は届かねーよ、ヘルメロ。」
その言葉と共に、俺の横腹に激痛が走る。
あばら骨が何本か持っていかれそうな激痛だった。
「吹っ飛べ。」
それと同時に俺は数メートル先まで吹き飛び、壁にたたきつけられた。
少しして、口から吐血する。
蹴りを入れられたのか?
蹴りだけであの威力が出るとか、人間やめてんだろ……。
「ぐ……ぬ……。」
「まだ続けるか?」
「言っただろう……俺を倒す以外で合格はないとな。」
「……そうか。なら、俺も少し本気を出そう。本物の上位魔法って言うのを見せてやる。〝イグニス・ザ・オルテン〟」
ナナ・アベルシュタインがそう唱えると、赤い魔法陣が合計で8つ展開される。
しかも、一つ一つの大きさが上級魔法並みの大きさをしている。
一体、なんだあれは。
「避けないと、お前死ぬぞ?多分。」
次の瞬間に、鳥の形をした炎が8羽俺の方へと接近してくる。
あれは、まずい!
「くっ……!」
瞬時に横に飛び退く。
同時に俺のいた場所に鳥が1羽激突した。
すると、大きな爆発が引き起こされる。
「ぐあっ?!」
爆風が強すぎて、俺はまた吹き飛ばされた。
ゴロゴロと少し転がり静止する。
「おいおい、そんなんで大丈夫か?まだ、7羽はいるぞ?」
ナナ・アベルシュタインの言葉とともに、次々に着弾していく炎の鳥。
その一つ一つが上位クラスの魔法以上の爆発と爆風を生む。
この魔法が、最上位魔法というものなのだろう。
威力のケタが違いすぎる。
何とか直撃は避けているが、爆風で着地した場所からさらに吹き飛ばされてしまう。
それに直撃を避けられているのはナナ・アベルシュタインが意図的に避けられるよう着弾地点を少しずらしているからだ。
あまりにも部が悪すぎる。
「これで最後だ。耐えみろ。」
炎の鳥が真っ直ぐにこちらに迫ってくる。
それを先程までと同じように避けた。
これで、耐えきったか……?
「ヘルメロひとついい事を教えてやろう。この魔法、本当は追尾させることが出来んだよ。こうやってな?」
「な……?」
直撃しそうになった炎の鳥は、急カーブするように俺の方へと方向を変えた。
同時に大きな爆発が直撃する。
「っ………………!?〝シールド〟…………!」
何とかシールドを自身の身に張るが、爆風の激しさで俺のシールドが軋んでいる。
いつ壊れてもおかしくはなかった。
何秒経った?
10秒か?それとももう1分経ったか?
いつもよりやけに時間が長く感じた。
いつまでこのシールドが持つか分からない恐怖と不安からか、もう数分はずっとこうしている気分だった。
と、次の瞬間だった。
先程まで爆発の炎に包まれていたが、それが一気に四散した。
目の前にはナナ・アベルシュタインがたっている。
「あれをくらって生きていたことは、さすが副ギルドマスターだけの名はある。他の冒険者とは格が違うようだな?」
「それは、光栄なこったな……はぁはぁ……。」
「なら、次はどうする?」
「……なめ、やがって……!」
疲弊はしているがまだ動ける。
ならば、今ある全力をもうこいつにぶつける他ないようだ。
小手調べなんてしているような余裕は、こいつ相手にはゼロだ。
「〝万障よ!かの者を焼き払え!上級魔法 インフェルノ〟!」
ナナ・アベルシュタインの足元に赤い魔法陣が展開される。
そこから、炎の柱が立った。
上級魔法の英称省略。
初めて実戦で使ってみたが、負担はまだまだ大きいようだ。
かなり無理やりはなったせいで、魔力の大半を持っていかれた。
だが、今はそれでもいい。
詠唱の時間を短縮できたおかげで、余裕がかなりできた。
ここで畳み掛けるしか、ない!
1度距離を取る。
「〝かの者を焼き貫け!ファイアランス〟!」
余った魔力を使い、ファイアランスを何度も放つ。
今放てるだけをとにかく放ち続ける。
ギリギリまで放ち、魔力の余力が少しになったら……。
「そのまま剣技で切り刻む!〝ダブルスラッシュ〟!〝フレイムスラスト〟!〝ダブルブレイダー〟!」
距離を一気につめ、3連続で剣技スキルと特殊剣技スキルを放つ。
そして、最後は…………!
「これが俺の、取っておきの特殊剣技スキルだ!〝龍擊斬・焔〟!!!」
俺の持っている剣に、紫色の炎が剣先を包み込み、そこに赤い稲妻がほとばしる。
そのまま剣を横に凪ぐ。
剣先は確実にナナ・アベルシュタインの体を捉えていた。
これでチェックメイトだ。
「勝ったと確信したところ悪いな。まだ俺は、負けてないんだよ、ヘルメロ。」
ガキィイイン!っと、金属音が響き渡った。




