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第3章 1話 取引

あの一件以来、街中ではルイントン家の話題で持ち切りだ。


奴隷商との違法取引やら王族に対してクーデターを企てていた痕跡まで見つかったらしい。


ほんと色々出てきたものだ。


この世界には未成年法もなさそうだし、あの娘もわかっていたことではあったろうから今頃大変な目にあってそうだな。


「本当に可哀想にな。」


「思ってないことが丸わかりなトーン。完全に嫌味。」


「当たり前だ。嫌いだからな、アイツらのこと。」


「その感情に私も異論はない。」


うむ、と頷くシノ。


散々ちょっかいもかけられたわけだからな。


面倒ったらありはしなかった。


まぁそのおかげもあって、俺らはいい事ばかりではあるが。


「今日はヘルメロのとこに直行するか。」


「そうしよう。条件の提示も早い方がより有効的になるはず。そうなれば私たちの思う通りの条件を取り付けられる。」


「お前も悪よなぁ、シノ。」


「ふふ。あなたもね。ナナ。」


俺らの間で悪い笑いが込み上げていた。



「おう、やっと来たかお前ら。」


「いつから待ってやがったんだ全く……。」


言いながら、ヘルメロの座る対面のソファに座る。


「さて、まずは何から話そうかね。冒険者ランクのことからか……。」


「今回の依頼の条件についてだ。」


言葉を遮るように、言い放つ。


「俺は別に冒険者ランクなんてものは正直どうでもいい。上がればラッキー程度の価値しかない。別に冒険者ランクを上げて成り上がろうってわけじゃないんだ。どうでいいだろう。そんなものよりは今回の仕事の条件きっちり払ってもらう。」


「お前なぁ……はぁ……いや、わかった。えっと、報酬に色を付けるだったか?金か?」


「いいや。そんなものじゃない。俺らが欲しいのは……新発見のダンジョンの独占権と言ったところか。」


「?!。お前何言ってんのか、わかって……」


当たり前だろうと鼻で笑いながら、言葉を続けた。


「俺らはお前らがいまだ発見していないだろうダンジョンを見つけた。まだ誰の手も届いていないだろう。とはいえ、ダンジョンを発見して何も伝えないまま、ダンジョン探索をすれば、冒険者ギルドの違反になる。そうだろう?」


「あぁ。それは契約した時に課せられるルールだからな。冒険者ギルドはそうやって冒険者同士の争いが起こらないよう均衡を測ってる。1人の冒険者が違反行為であるダンジョンの通告儀礼を果たさず、ダンジョン独占に走れば100%他のやつもやり出すし、よからぬ事を考えるやつでる。争いだって起こるからだ。それをお前、独占権なんて……。」


「ヘルメロ。俺は言ったはずだ。やるからには条件をつけると。だが、お前らにもお前らなりのメンツって言うものがあるだろう。だからそれも加味して、俺はこれ以上は望まない。ただし、これ以下に条件を下げる気もない。安いものだろう。別に莫大な報奨金を望んでいる訳でもないし、爵位を望んでいる訳でもない。ルールだって守っている。現に伝えているからな?それに、俺らはあくまで俺らが発見したもののみの独占権を得るだけだ。他のやつが見つけたものをくすねるような真似はしない。」


どうする?と、ヘルメロに投げかける。


まぁ、ヘルメロにとってはかなり難しい決断と言ったところか。


今の俺はこいつら冒険者ギルドにとっては重要な人材であるのは間違いない。


ギルドマスターのいない今、他の冒険者に頼れないことを頼れるのだ。


それに、ギルドマスターがいたとしても必ずしもギルドマスターをたよれるともかぎらない。


そう考えると、事実上それに並ぶ実力者を失う可能性のある選択は俺ならしない。


役に立つ冒険者からの信頼をとるか、争いを避けるため役に立たん冒険者共の信頼をとるか。


副ギルドマスターの選択はどうなるんだろうな?


「…………はぁ、わかった。お前のその条件を飲もう。今回の件でも世話になったしな……。」


「良かったよ。お前が少しはまともな判断ができたこと。」


「ほんっと、可愛い顔してとんでもないこと言ってやがんなコノヤロウ……。」


「俺の話はこれで終わりだ。それで?お前の話ってのはなんなんだ?ヘルメロ。」


「あぁ……まずは何から話せばいいか……。」


頭を抱えながら、うしろの机に置いてあった書類を手に取るヘルメロ。


そんなに疲れてるなら、別に話さなくてもいいんだが。


ジトっとした目をヘルメロに向ける。


「なんだその目は……誰のせいで頭を抱えるほどのことになってると思ってやがる。見てみろこの書類。」


ヘルメロが持っていた書類の中から1枚抜いて、俺の前に置く。


それをシノが読み始めた。


「これは、今回の依頼の?どうして騎士団が関わってくる?」


「そりゃそうだろう。相手は大貴族だったんだ。その大貴族様の目立つ家が突然崩落したなんてことが起これば、事件だと首を突っ込んでも来る。街中でそうそう家の崩落とか普通はおこらんぞ。」


「そういうもの……?」


「お前の生きてた時代は例外だぞ、シノ。ヘルメロの言わんとしてることはよくわかる。少なくともこのくらい平和すぎる国ではそうそうおこらんことなのは確かだ。」


だが、まさか騎士団から冒険者ギルドに接触してくるとは思わなかった。


「一応は騎士団に、この依頼について話は通した上で、調査には向かってもらっているから捕まるなんてことは万二一つもないが……というか、本来であれば調査だけ済ませれば騎士団からの事情聴取なんかもないはずなんだからな?わかってるか?」


「それはうちの駄天使のせいであって、俺らは全く関係ない。俺らはあくまで穏便に済ませようとしたからな?なぁ、シノ。」


「そこに関しては大きく同意。全てはラファ本人の責任であって、私たちは関係ない。責めるなら、ラファを責めて。」


「お前ら仲間を簡単に売りすぎだろ……。」


「仲間?あいつが?冗談はその性格だけにしておけ。あいつは仲間じゃない。ただ、勝手に着いてきているだけのストーカーだ。」


俺の一言に、そ、そうかぁ?と複雑な顔を浮かべるヘルメロ。


なんだ文句があるというのか?


なら、1度入ってみればよく分かるだろう。


あの女がどれほどに役に立たないかもな。


「とりあえず、この書面に書いてあるとおり騎士団の団長が1度冒険者ギルドに顔を出しに来るそうだ。その時、お前らも同行してもらうぞ。いいな?」


「ちっ、わかったよ。同行する。」


渋々だが同行する他ないだろう。


あまりしたくは無いがな。


「本当にわかってるんだか……。次の話に移るが、今回のルイントン家の依頼の件もそうだが、その前の突然変異体の赤いミノタウロスの討伐を成功させたことで、お前らの冒険者ランクを格上げしようという考えがギルド全体から上がった。職員満場一致でな。あの依頼にも今回の依頼にも俺らは頭を抱えていたんだ。」


「だろうな。そうでも無いとただの新顔の冒険者なんかにそんな依頼をする訳ないだろう。だが、そんなことで冒険者ギルドはランクを上げて後々面倒にはならないんだろうな?」


「そこは安心していい。逆にここまでの実績を叩き出された上で、ランクを一切あげないなんてことになれば、こちらのメンツが潰れちまう。頼む。」


パンっとこ気味のいい音で、合掌するヘルメロ。


別に冒険者ランクをあげること自体には、俺にとってメリットしかないのは確かだ。


冒険者ランクが上がれば、普通より不自由もなくなるだろうしな。


だが、一定以上のランクになるとそれ相応の試練が生じる。


それが俺からしたら面倒なのだ。


だから、その時間があるのなら今回の目的を達成することを目指す。


と、考え込んでいるとシノがこう提案してきた。


「ナナ。受けた方がいいかもしれない。」


「なぜ?」


「私も最初は冒険者ギルドのランク制は私たちには関係ないと思ってた。でも、S級の称号があればこの世界ではかなり役に立つかもしれない。S級はいわゆる貴族入りと考えれば、かなり自由が効くようになる。あとのことを考えれば、受けた方がいいかもしれない。」


「……お前がそこまで言うか。いいだろう、ヘルメロ受けてやる。」


そういうと、ヘルメロが俺の手を握ってきた。


突然のことに流石の俺もゾワゾワッと鳥肌が立つ。


「すまん、ほんとに感謝する……!」


抜こうとしても軽い力じゃ抜けない。


こいつどこにこんな力が……。


「……っ、わかったから手を離しやがれ!」


その日、副ギルドマスターの部屋の中で銃声でも響いたかのようなはれつおんがひびきわたるのだった。

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