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17話 貴族とのゴタゴタ

尋問を終え、俺ら3人は刺客を逃がした。


逃がすのは本意ではなかったが、逃がした理由の一つにルイントン・ハルネムアへ伝言を送る目的があった。


ある意味ここからが、やつとの本当の戦いになるだろう。


恐らく、刺客に持たせた伝言でやつは俺らを屋敷に招待してくるはずだ。


そして、確実に穏便には済まない。


だとしたら.........そのまま武力による行使をする他無くなるわけであり。


「跡形もなく消し去るのがいいな。」


「もう隠す気無くなった?声に出てる。」


「隠すも何も、穏便にすまないならこの手段を摂る他無いだけだ。隠す気なんて毛頭ない。」


「.........ナナらしい。とりあえず、私が交渉はしてみる。その後の結果次第でナナは判断して欲しい。」


シノからそうお願いされる。


ここまでお願いされたら断る訳にも行かなく、俺は渋々と言った感じで返事を返した。


とりあえず、俺らは明後日に向けて準備を始めるしか無さそうだ。


当日の準備を。



「さて、それで?ここがハルネムア家か。」


「うん。」


「人間ってなんで家ごときにここまでお金をかけるんでしょうねぇ。自分の銅像とか立てて何になるんですかぁ?クスクス。」


気づけば、いつの間にやらそう小馬鹿にするように笑けているラファエルが居た。


「また現れやがったな。このクソ駄天使。」


「こんな面白いイベント、私が見逃せるわけないじゃないですか。あなたの吠え面が拝めれば儲けもの、相手が絶望しても私からしたら嬉しい悲鳴です。クスクス。」


性根がどこまでも腐ってやがる。


「2人とも。門が開く。とりあえずは、あくまで交渉という形で来た。手を出しちゃダメ。とくにナナ。注意。」


「……わかってるよ。あくまで交渉、な。」


「そう。」


そうして、やり取りしていると、大きな金属の門が開く。


微かな魔力を感じる。


魔道具の力でも用いているのか?


まぁ、そうでもなけりゃこんなデカイもんを人の力なしに開けるのは無理か。


「入ろう。穏便に済めば儲けもの。」


「済まなけりゃ、潰すだけだ。」


またもジトっとした目を向けてくるシノ。


間違ったことは言っていないから別にそんな目を向けられる筋合いは無い。


と、するとどこからともなく聞き覚えのある声が聞こえた。


「来たわね?平民!今更謝りに来たって遅いんだから!」


「…………ふん。」


またこいつか。


名前はなんだったか……あぁ、名前すら出てこなくなった。


適当にわがまま姫とでもつけるか。


冒険者ギルドで俺の圧に気圧されてた癖に、よく俺にこんなことが言える。


呆れを通り越して、むしろこいつのメンタルには関心せざるを得ない。


「ご機嫌麗しゅう。クジェスカ・ハルネムア様。今日はクジェスカ・ハルネムア様とあなたのお父様であるルイントン・ハルネムア卿にご相談があってまいりました。」


「話?何かしらね?」


「今回の1件私たちにも非があるゆえ、その非を謝罪しにまいりました。」


「だから言ってるじゃない?私あなたたちのこと許す気なんてないわ。覚悟なさい?平民。」


その言葉とともに先程まで隠れていたもの達が、一斉に飛び出してくる。


奇襲か。


なかなか、連携の取れている動きだ。俺たちを殺す為だけに良くもまぁここまで……。


「〝結界〟」


その一言で、そいつらの攻撃は俺らには届かなくなった。


金属音と爆発音だけが木霊する。


「なっ……?!」


「残念だったな、俺が殺せなくて。恨むなら弱すぎる自分を恨め。」


小馬鹿にするように俺は、クジェスカのことを鼻で笑い飛ばす。


「……話し合いはする気は無い……ということでしょうか?」


シノがクジェスカにそう聞き返す。


それにクジェスカは、鼻で笑い返してきた。


「当たり前じゃない?ねぇ、お父様。」


そう言って、俺らから目線を外し後ろに振り返る。


俺らも釣られてその方向を見れば、少々……いやだいぶ太ってる中年のおっさんが立っていた。


あれがこいつの父親か。


公爵だけはあるようで、だいぶ肥えてるな。


「はっはっは!あまり平民をいじめてやるな、クジェスカ。平民は全てが貴族に劣ってしまうのだからな。可哀想じゃないか。」


「お父様ったら優しすぎですわ?今ここにいる平民くらいは、どんなに痛ぶったって誰も何も言いませんわ。この私に恥をかかせた不届き者だもの。」


「……ルイントン公爵様。お初にお目にかかります。私の名は、シノ。名はありません。そして、こちらにいるのが、ナナ・アベルシュタイン。もう片方が、ラファ。同じく明はなく、両方私の冒険者仲間でございます。」


深く貴族としてのお辞儀をしてみせるシノ。


それにルイントンは、ニタリという音が出そうな笑みを浮かべた


「平民にしては、よくできた挨拶だな?それに……なかなか全員容姿はいいようではないか。」


「ありがとうございます。」


よくこの気持ちの悪い視線に耐えられるものだ。


俺は今にも殺してしまいそうになっているというのに。


隣に立っている駄天使でさえ、いつもの気持ち悪いニコニコ顔が消えている。


さて、どうしたものか。


「気に入った。気に入ったぞ私は。お前たち、私の嫁として迎え入れてやろう。それで今回の失礼はチャラにしてやる!」


「……お父様がそう言うならいいですわ。まぁこの屋敷で生けるなら、の話だけれど。」


クジェスカは俺らを嘲るように笑い、ルイントンはのそのそと俺らに近づいてくる。


そして、ラファエルの目の前まで迫り、髪を触りだした。


「青い髪なんて珍しい。私はいいものを手に入れた。楽しませてもらうぞ。」


瞬間だった。


ズズんっと何かが崩れる音がした。


「?!。何事だ!」


異様な音に後ろを振り向くルイントン。


そうして目に映ったのは、自身の家が無惨にも細かく切り刻まれた姿だった。


一瞬ルイントンの思考が停止した。


次にあまりの突然の出来事に顔面を蒼白させ始める。


「これは、どういう……なぜ……なぜ私の家がこんなことに……?!」


悲鳴にも聞こえる声を発しながら、無惨な姿になった家へ走ってき、その場に崩れ落ちた。


随分情けない姿である。


「あ、あなた達がなんかしたのかしら?!ハルネムア家にこ、こんなことしてどうなるかわかっていらっしゃる?!」


周りに居た刺客が、全員俺らに臨戦態勢を取ってくる。


それに対して俺はクジェスカ・ハルネムアに銃口を向けた。


「なっ……?!あ、あんた……。」


「黙れ。元々俺らは交渉が不成立の場合、強硬策に出るつもりだったんだ。それに高確率でこうなることは予想出来ていた。なんたってお前らの性格上、恥をかかされたら根に持つだろうとは思っていたからな?だが、まさか……こいつを怒らせるとは。なかなか才能がある。」


ニヤリと俺はクジェスカに対して口角を上げる。


それに怒ったのか、クジェスカは周りの刺客に命令した。


それはもう、はっきりと。


「こ、コイツらをやりなさい!あんた達!確実に殺しなさい!」


俺らに対しての宣戦布告。


いい度胸じゃないか。


瞬間に全員が俺らに突っ込んでくる。


遅い。


俺が放つ鉛玉の方が、先にこいつらの眉間に埋め込まれる。


と、打ち込もうとした時だった。


「この、下等種族風情が……!!」


その声と同時に刺客の首が一斉に飛んだ。


そして、芝生の上にボトボトっと首が落ちる。


突然の光景にクジェスカが膝から崩れ落ちる。


「え、あ……なんで?どうして首が突然……?」


「…………脆いくせにかかってくるからこうなるんです。たかが人間風情が調子に乗らないでください。私はいつでもあなた方の命なんて取れるんですから。よく自分の行動を考えるようにした方がいいですよ。命がそれひとつしかない哀れな生き物なんですから。」


そう言って、クジェスカから目を離すとゲートを開き出したラファエル。


「なんだ、帰るのか。駄天使。」


「えぇ。興が削がれましたからね。あとはあなたたちで何とかしてください。」


「いつもお前は役に立っていないからいてもいなくても変わらん。いなくなるならとっとと消えろ。」


「…………口の減らない、人間ですね。」


言い残して、ゲートの中に姿を消すラファエル。


俺はそれを確認したあと、ショットガンを肩から下ろして、銃口をルイントン・ハルネムアに向けて、宣言した。


「さて、ルイントン・ハルネムア。そして、クジェスカ・ハルネムア。冒険者ギルドの名のもとに、お前らを拘束させてもらおう。証拠は自分たちの足から出てきたし、物的証拠に関してもその瓦礫の中を捜索すれば、出てくるだうしな?」


「い、嫌ですの……嫌、嫌ぁぁぁあ!お父様!お父様ぁあ!!」


クジェスカが叫ぶが、ルイントンは喪失したような顔で静かに無惨な姿の家を見ている。


あれはもう手遅れだ。


暫くは口も聞けないだろう。


娘よりも家の方が大切だったか。


不憫なものだ、この女も。


「さっさと行くぞお前ら。」


そうして、2人の首根っこを掴んでシノのところまで引き摺っていく。


「転移を頼む。」


「うん。」


頷くと共に、俺とシノの足元に魔法陣が浮かぶ。


そして、周りが光に包まれたかと思えば、あっという間にギルド本部の副ギルドマスターの部屋の前にまで来ていた。


「さてあいつはどんな顔、するかね!」


言いながらドアを蹴り開けるのだった。



ドアが蹴り開けられた。


あまりの突然のことに、反射的に椅子から立ち上がり、腰にかけていた剣を抜いて構えてしまう。


誰だ?


全く気配が感じられなかった。


「……何やってやがるヘルメロ。遊んでないでこいつらを受け取れ。」


幼いが凛とした声とともに、誰かが投げ込まれた。


それを見れば、ハルネムア家の当主、ルイントン・ハルネムアとその娘のクジェスカ・ハルネムアが縛られた状態で転がっていた。


「こいつらは……。」


「依頼通りだ。証言も連れてきてやったしな。こい。」


アベルシュタインが廊下の方に声をかければ、おずおずと言った感じで奴隷服を着た獣人達が幾人か姿を現した。


「こいつらがそいつのやったことに関して証言してくれる。それと、家を破壊しちまったが多分証拠品は残っている。探ってみるといい。あとはお前らの仕事だからな。」


言い残してその場をあとにしようとするアベルシュタインを、俺は呆けた顔で見送ってしまいそうになったが、引き止めた。


「ま、まて、アベルシュタイン!」


「……んだよ。俺はいつも忙しいって言ってんだろ。お前のくだらんことに付き合っている暇はないぞ。」


「あぁ。だが……さすがにここまでされちゃ冒険者ギルドとしてもお前をDランクのまま放っておく訳には行かないんだよ。今回はお前にとって得しかない話しかない。話す時間を1度作って貰えないか?」


「いい事、ねぇ……。わかった。明日の午前中には顔を出す。開けておけ。」


言って、直ぐに姿を消すアベルシュタイン。


本当にとんでもない、嵐のようなやつだ。


何をして来るか全くわからん。


だが、やつの実力は確かだ。


この通り、俺の依頼した内容を完璧に遂行してきた。


普通は、DからCランクに頼むような仕事内容では無いと言うのにだ。


「ははは……全くあいつは何者なんだろうな……。」


突然現れて、試験では破格の実績をたたき出すわ、 とんでもない素材を出してくるわ……。


あぁ、本当にあいつに合わせたらすんごい反応をしそうだな。


「……さて、すまんな獣人の皆さん。話を詳しく聞かせてくれ。」


そうして、俺の聞き取り調査は始まった。

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