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14話 面倒事

あれから、俺らは洞窟を後にして、ギルドまで戻ってきていた。


その日のうちにギルドに戻ってきていたために、さすがにカウンターで俺の依頼受付を担当した職員が驚いていた。


「えっと……ほんとにもう、終わったんですか……?」


「嘘ついてどうする。ほら、これが討伐証明だ。」


言って、ミノタウロスの角とレッドサーペントの鱗をカウンターの上に放り投げた。


それを見たギルド職員が、「ただいま、確認してまいります……!」と、急いで裏へと駆け出していく。


俺の時はほぼ必ず裏へ行くのはなんなんだ一体……。


「仕方ない。ある意味私たちは彼らにとってはイレギュラーすぎる存在。今までにこのランク帯でのここまでの最速討伐はなかったんだと思う。だから、予想外すぎて対応が遅れる。」


「そんなものかねぇ……。」


正直、そうだとしたら迷惑極まりない。


自分で言うのはなんだが、俺は中々せっかちな性格をしている。


一分一秒でも勿体ないと思う質だ。


こんなことで無駄な時間ロスは避けたい。


だから、最速で討伐もしたし、飛び級できるように相応の実力も見せた。


なのに、ここで遅れられるとそれがなかったことになるのだ。


「はぁ……全く時間の無駄ばかりだな。」


「少し多目に見てあげて欲しい。彼女もベテランという訳では無いみたいだし。」


「……。」


シノは甘すぎる。


さすがは年長者というところか。


5000年生きてると器も大きくなるらしい。


「今、失礼なこと考えた?」


「はは、なんの事だか。」


鋭すぎてこえーよ……。


相手の記憶を見るスキルでも隠し持ってるんじゃあるめーな。


「それにしてもすごい視線を感じますねぇ。」


ラファエルは表情を変えずにそんなことを言う。


たしかに今のやり取りが聞こえていたのか、ヒソヒソと囁き声が聞こえていたりする。


これは周りの奴らからも疑われていそうだな。


まぁ、俺らに関係あるかと聞かれれば、全く関係ないがな。


疑いたいなら勝手に疑えばいい。


弁明する気もない。


「放っておけ。どうでもいい。」


「あら。あなたなら食い付い手睨み効かせるかと思いましたけれど。どういう心境の変化でしょうねぇ。」


「心境の変化もクソもない。今はそれよりも大事なことが出来た。それだけだ。そもそもの話、奴らにいちいちそんなことをしていても時間の無駄だしな。害がないならそんなことをしても、疲れるだけだ。」


「思ったよりも真っ当な意見で少し見直しちゃったかもしれないですよ、私。クスクス。」


「お前に見直されても嬉しくねーな、駄天使。」


横目で駄天使を睨む。


と、そんなことをしていれば、奥の方からギルド職員が走って戻ってきた。


「た、大変お待たせしました。」


手には依頼料だろうか、小包が握りしめてある。


「鑑定の結果、本物のミノタウロスとレッドサーペントの1部だったため、依頼料を支払わせて頂きます……!疑ってしまい申し訳ありません。」


「別に構わない。今までにこういうことがなかったから、異例。ここまで早く対応できなのはすごい。」


「え、えっと、ありがとう、ございます?」


俺らに包みを差し出しながら、戸惑った顔で首を傾げる。


「俺らは基本、ハプニングがない限りはこのペースで依頼はこなす。それを頭に留め置いておけ。」


包みを受け取りつつ、そう職員に言う。


そして、出口の方に歩を進め始める。


と、すると俺の行先を何者かの片足が阻んだ。


「……。」


「おっと?すまねぇ。俺の足が勝手に出ちまったわ。」


ゲタゲタと笑いながら足を避けようとしない男。


完璧に避ける気はなさそうである。


そんなに死がご所望なら、今ここで脳天ぶちまけてやってもいいんだが……後のことを考えれば、それは面倒事に繋がるか……。


「おっと、おっかねー顔すんなぁ。いじめたくなる顔だ。くく……まぁ、俺にゃ幼女趣味は無いがね。虐められたくなかったら、とっとと戦利品譲ってもらおうか?」


「そうだぜ?お前みたいなガキが持っていていい代物じゃねーんだよ。それに本当にこんなガキが2つ名を倒したのか?それすら疑わしいじゃねーか。」


「どけ。忠告1度目だ。」


目を細めて、男どもを見やる。


が、それに男どもはさらにエスカレートする。


「いいねぇ、もえるわその表情。一応、年齢的には成人してんだよな?なら俺と楽しまねーか?この際見た目とかは除いてやるよ。」


「もしやるなら俺らにも取っておいてくだせーよ?リーダー。」


「そうですぜ。リーダーいつも使い潰しちまうんだから。」


ニヤニヤと俺を舐めまわすように見てくる。


気持ち悪い。


鳥肌が立ってきた。


生理的にこいつらは受け付けねーな。


今にも手が出ちまいそうだ。


「2度目の忠告だ。どけ。次で最後だ。」


「……おめぇ、さっきからリーダーに向かって生意気だなぁ、おい。」


ドスの効いた声とともに、俺の目の前に周りより2回りほど大きい男が立ち塞がる。


銀色のプレートということはCからEランク相当か。


図体だけでかい雑魚だな。


「これで三度目だ。失せろ。」


「舐めんな、クソガキィ!〝烈拳!〟」


ゴオッ!っとものすごい風を斬る音が聞こえてくる。


あぁ……随分と舐められたものだ。


そして、随分とこいつらは……死にたいようだ。


「そんなに死がお望みなら、いいだろう。……死ね。」


大男の攻撃を軽々と受け止める。


そして、次の瞬間には大男の四肢が、ありえない方向に折り曲げた。


「へぁ……?」


「さて、どうする?それじゃぁまともに拳も振るうことが出来なさそうだが?」


「俺の腕が……足がァ……!」


後ろ側に倒れ込む男。


たかだかは四肢折られただけで大袈裟だな……。


「おら、どーした。さっきの威勢はもうしまいか?」


「ひ、ひぃっ!」


顔を一気に青ざめさせる男。


なかなかいい顔をする。


嗜虐心をくすぶらせる顔だ。


「さて……他に俺に喧嘩を売ってくる奴はいるか?もれなく全部買ってやるぞ。」


ショットガンを大鎌に変えて、担ぐ。


そして、威圧を発動しておく。


すると、次の瞬間に目の前にいた男たちが同時にぶっ倒れた。


さすがの俺も予想外のことに戸惑ってしまう。


「おい、おいおい……まさかこれで気絶したとかおわねーよな……?」


シノを見るが、目を閉じて首を横に振っている。


どうやら、気絶したらしい。


目の前にぶっ倒れている男たちは泡を吹いている。


その光景を見て嫌でもわかってしまう。


驚くべきほど脆弱すぎる。


たかだか軽い圧だ。


別に本気の威圧をかけた訳では無い。


本気の威圧をかければ、周りにも被害が出るからだ。


だから、あくまで戯れ程度にかけた。


それがヤツらにとってはとてつもない圧になったらしい。


これは……あまりに予想外すぎる。


「はぁ…………今回に関しては俺は悪くないよな?」


「いつものナナよりは悪くない。でも、圧はやりすぎた。もう少し自分と周りの実力と及ぼす影響を理解しておくのが必須。」


「それはもっともなご意見だな。」


倒れ伏した男たちを見ながら、また大きく俺はため息を着くのだった。



「ちっ……せっかく高額で雇ってやったというのに、あの冒険者共め……まんまとやられおって……。」


机に思い切り、拳を叩きつける。


ここまでこっぴどくやられた上、その冒険者共は行方をくらませた。


捕まっていないだけ幾分はましではあるが、それでもただ自分が出費しただけに終わってしまったのだ。


しかも、逃げたのはいいが冒険者ギルドもそう黙っちゃいないだろう。


奴らはやらかしてる冒険者だ。


私が雇った仕事に1度失敗しているから指名手配なんかもされている。


挙句、突如として姿を消すという不自然さに疑問を抱かれるはずだ。


最終的には奴らも近いうちに捕まる。


そうなった時1番最悪なのは、私が主犯ということに行き着くことだ。


バレて捕まれば、私に行き着くのにそう時間はかからんか。


「雇うしかないか……暗殺者を。」


暗殺者など、あんなイカレ連中に頼むことになるなど、はっきりいって恥でしかない。


……だが、奴ら以外に私の今の状況を打破する手札などないのだ。


それに、奴等ほど殺しに長けた者もなどいない。


必ずや、我が娘に恥をかかせたあの冒険者共と逃げ出した卑しい冒険者を殺してくれるはずだ。


「く、くくく……はは……はっーはっはっはっはっ!」


夜な夜な高笑いが、屋敷には響き渡った。

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