13話 赤いミノタウロスの本気
「フシュゥゥゥゥゥ……。」
小さく、空気を吐くミノタウロス。
あの頭上にある血の玉はスキルか?
そういやそれっぽいスキルはあったな。
たしか、血液貯蓄だったっけか?
なかなかグロいものだ。
「にしても、やる気になるのがおせーな?ノロマが。」
「ブモォォォ!!」
そう一言煽れば、ミノタウロスは突然にこちらに勢いよく突進してくる。
それを俺は軽々と避けて、背後に回り込んだ。
「背後が、がら空き……おっと?」
ミノタウロスの頭上にあった血のたまから攻撃が放たれる。
それが地面に直撃すれば、世にも簡単に地に穴が空いた。
なかなか威力は高いようだ。
伊達に2つ名を持っているだけの魔物では無いというのはよくわかった。
……が。
「俺の敵になるかどうかは別とする。」
ショットガンの銃口で思い切り、ミノタウロスの頭を殴る。
すると、ミノタウロスは声にならない悲鳴をあげ、世にも簡単に地面に膝を着いた。
ステータスの差もそうだが、場数の違いも大きく出たな。
こいつは自分より強いやつとはあまり戦ったことがないようだ。
強者との戦いがなっていない。
動きも雑だし、スキルの使い方も仲間との連携も取れちゃいない。
「お前の負けだ。ミノタウロス。」
同時にミノタウロスを後方へと蹴る。
そして俺はそれを応用にして、ショットガンを発砲して、後に続く。
恐らくやつはここで本気をだすだろう。
やつのスキル・バーサーカーを使うはずだ。
それ以外に俺に対抗できうる手段はやつには無いのだから、使う他ない。
今、俺の前を飛んでいる弾丸は弾かれるだろう。
そこを大鎌で叩くか。
と、すると、前方にいたミノタウロスが叫び出す。
「ブモォォォ!!」
赤黒い魔力が流れ出したかと思えば、凄まじい殺気が俺へと向けられたのがわかった。
あれは、バーサーカーのスキルを使い始めたな。
「ははっ!やれば出来るじゃぁねーか。」
俺は笑いながら突っ込んでいく。
あぁ、面白い。
始めてみるスキル、初めて見る魔法が次々に見える。
ここまで戦いというものに高揚したのは、今日が初めてかもしれない。
「お前は俺の攻撃をどう受け止めるかなぁ!」
ミノタウロスが、俺の眼前にあった弾丸達をたたき落とす。
少し手加減しているとはいえ、あれを打ち落としたんだ。
あのLvでここまでしたんだ。
賞賛に値する。
「いい動きだ。」
一言そう言って、テスタメント・アンダー・テイカーで身のあの左腕を切り落とした。
「ブモォォォ!!」
雄叫びとともに、俺にカウンターを打ち込んでくるミノタウロス。
ただ、それを俺は軽々と空中で避けきって、追撃を入れた。
「グモっ……!」
「どーした!まだまだ、お前の力はそんなもんじゃないだろが!」
「ブモォ!」
ミノタウロスは、溜め込んでいた血液を乱射し始めた。
バーサーカーの状態でも少しばかりは意識があるようだ。
軌道の読めない攻撃で、距離をとるか。
いい判断だが、悪手な判断とも言える。
「軌道の読めない攻撃はたしかに役に立つ。ただし、当たり前だが相手を狙ってないから当たりづらい。つまり、軌道が読めない攻撃をされようと、俺からしたら懐に潜り込むのは容易いってことだ。」
喋りながら、ミノタウロスの横腹付近にまで距離を詰めた。
「こんな風に……な!」
思い切り、肘打ちを食らわせる。
ただ、ミノタウロスがそれを耐えた。
今の一撃はかなり入ったというのに、ここでタフさを見せてくるか。
予想外だった。
少し相手を舐め過ぎたようだ。
そう考えていれば、腹部に衝撃が伝わる。
そして、俺は軽々と洞窟の天井へと打ち付けられる。
「っ……いってぇ……。防御貫通ってのはホント厄介だな。」
それにステータスと体の重量は関係がないせいで、レベル差があったとしても軽々と俺の体は吹き飛ばされてしまう。
「ブモォ!」
ミノタウロスがそう叫べば、周りにちらばっていた血液が、天井にまで伸びる凍った棘になる。
「あぶねぇ、なぁ!」
周りにある棘を大鎌で薙ぎ払い、ミノタウロスまでの道を開く。
見たいものは見れたし、まぁいいだろう。
あとは創作スキルで作り出すだけだ。
「……一撃で潰す。」
天井を蹴る。
そうすれば、一瞬のうちに俺はミノタウロスの眼前にまで迫っていた。
瞬間の出来事すぎて、ミノタウロスは俺の事を認識できていない。
まぁ、こんなものだろう。
あまりにレベルの差が開きすぎている。
少し本気を出せば、このとおりこいつレベルでは到底俺に勝つことなどできない。
余程、とんでもないスキルがあるか、とんでもない豪運の持ち主でもなければな。
「そのレベルでお前はよくやったと思うよ。だが、まだ足りない。来世で敵に相対した時はもっと相手の力量を測るんだな?」
大鎌を横凪に振るう。
瞬間、ミノタウロスの体が真っ二つに両断された。
その出来事に、ミノタウロスのとても間抜けな顔が見えた気がする。
そして、目の光が同時に失われた。
「これで終いか。あとは奥次第な訳だが……。」
「ナナ終わった?」
「何も無かった、か。」
シノもラファエルも手ぶらだ。
何かあれば持ってくるだろうから、本当にただの洞窟だったってことだろう。
無駄足だったか。
「何も無いならこの死体回収して帰るぞ。」
「ううん。ナナ。何も無かったわけじゃない。」
「なに?それはどう言う……。」
「この洞窟、ダンジョンだったんですよぉ。なかなか深い階層まであるようで。下の方からはあの時代と同じようなのがいるようですし。」
「まじか……。」
これもダンジョンだとは思わなかった。
多分まだ冒険者ギルドも未確認のダンジョンなのは確定だろう。
何か特別危険を知らせるようなものもあるわけではなさそうだしな。
「今は一旦街に戻るのが先決だろう。このダンジョンの場所は覚えた。次にここに潜ればいいだろう。今の今まで見つかってきていなかったダンジョンだ。そうそう見つかることもない。」
「見つかったとしても、この街のレベルでは攻略は出来ないと思う。」
「当たり前でしょう。激動の時代の頃とは力の差が大きく違すぎます。」
「とりあえず、街に戻るぞ。ミノタウロスの1部とレッドサーペントの一部を提出しないとどちらにせよ潜れん。」
そう言って俺は洞窟の外へと向かい歩いていく。
それに追従するようにシノ、ラファエルが歩き始めた。
ダンジョンはこれで2度目か。
1度目のダンジョンはゼルセオスが作り出したものではあったが、あそこはとてつもなく厄介だった。
そこらを歩いただけでも死を間近に感じたんだ。
今回のダンジョンはゼルセオスと同じく激動の時代から生きたものがいる可能性があると言うじゃないか。
しかも、おそらくダンジョンマスターでは無い者。
これで心が踊らされないわけが無い。
「どんなやつでどんなスキルを持ってるのか……楽しみだ。」




