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8話 宿屋

あれから、10分程度で体を回復しきったじじいは素材を鑑定しだした。


俺らはそれを黙って見ている。


すると、じじいはおもむろに立ち上がり、俺にこう言った。


「上級モンスターをこんな易々と売り渡すのにも驚きだが、今見たところこいつらほぼ無傷だ。どう仕留めた。上級冒険者でさえ、無傷仕留めるなんて芸当出来はしないぞ。」


「そんなもんは首の骨を折ったりすれば、どうとでもなる。」


「簡単に言うが、それが出来ないんだよ、簡単には。」


「しらねーな。実力不足だ。問題はお前たちにある。……それで、いくらだ。」


そう聞くと、じじいは少し考え込む仕草をして、値段を口にした。


「全部で4000万ゴールドってところかねぇ。無傷だし、素材はいらないってことで解体料も差し引く必要はねーし。だが、こいつらの魔石がなかったから、このくらいの値段だ。魔石は壊したのか?」


「いや。俺が持ってる。魔石だけ取りだした。」


「は?てことはお前、自分で解体した上で無傷でここへ持ってきたってことか……?」


「そうだとしたらなんだ。俺はこれが終わったら用事があるんだ。さっさと済ませてくれないか。」


「おお、そうだったな。とは言っても、さすがにここまでの大金はすぐには払えない。明日ここに試験の結果を見に来るだろう?その時ついでにここにも寄れ。それまでに用意しておく。」


その言葉に、俺は「それは困る……!」と言いながらずいっと体を近づけて、じじいの肩を掴んだ。


「これから宿探しに向かうんだ……!だが、俺らには金がない。1部でいい。1部でいいから今すぐ俺らに宿代分の金ををよこせ……!」


「わ、わかったわかった!金は渡すから落ち着け!」


言いながら、俺の体を持ち上げて引っぺがす。


そうしてそのままその場に俺を下ろした。


「なぁんであんなに強いのに金がねーんだよ、お前ら。」


「強いからって、金を持ってるわけじゃねーだろ。そもそも、俺らは山暮らしだ。人なんか一人もいないし、自給自足でしか生活できなかったんだよ。」


「森で自給自足?なんでそんなことになってんだよ……。わけアリか?」


「まーな。とりあえず、宿賃分の金をよこせ。ほかは後日でいい。」


そういうと、「そこで待ってろ。」と一言言って解体所の中に戻っていくじじい。


これでとりあえずの宿代金は払えるか。


あとの問題は……。


「宿探しか……。」


「冒険者試験でかなり時間がおしてる。お金貰い次第すぐ探した方がいいかも。私もここの土地感は分からない。」


「だな。」


出来れば、あまり冒険者が泊まっているような宿は個人的に勘弁だ。


変に絡んでくるようなやつもいるだろうしな。


そいつらに構ってられるほど暇じゃない。


だが、冒険者が泊まっていなさそうな宿か。


だとしたら、人気のない宿を探すのがいいか……。


「探す場所は決まった。」


「人気のない場所、でしょ?」


「わかってるじゃないか。あまり関わり合いたくないんでな。面倒だし。」


と、話しているとじじいが解体所の奥から再びでてきた。


手には、小さめの袋が握られている。


「ほれ、お前ら。宿代金だ。10ゴールドは入ってるから、余程高い宿に泊まらなければ何年かは余裕で暮らせる。」


「すまないな。世話をかける、じじい。」


「……おい、俺の名はじじいじゃねぇ。ヘルメロ・フォン・ライオットって名があるんだ。せめて名前で呼べ。」


「……はぁ、わかった。サンキューなヘルメロ。明日、また来る。」


「おう。明日からよろしくな!大型新人!」


ヘルメロの言葉に手を降って返事を返しながら、ギルドを出る。


相変わらず、外には冒険者たちがかなりの人数たっている。


なんなら、朝見た時より断然増えている。


邪魔くさいったらありゃしねぇ。


中でたまれ、たまるなら。


少し苛立ちを覚えながら、その中を縫って歩いていく。


この体だと、背の高い奴らに揉みくちゃにされる。


押しのける力はLvのおかげであるものの、だがやりすぎると殺傷問題になりかねないため、押しのけるのは控えなければならない。


かと言って、面倒だ……。


「こ、の……!」


「ナナ、手貸して。」


「あ?どした、急に……!」


言われた通り、混み合いの中でなんとかシノに手をだす。


すると、俺の手を握ったと同時にこう言葉を放った。


「〝空間テレポート〟」


一瞬のうちに今いた場所から人の以内少し離れた場所に俺らは立っていた。


「……おい、今のって。」


「冒険者ギルドの転移魔法の完全上位互換の空間転移魔法。」


「上位互換?」


「そう。ギルドにあった転移魔法陣は1度行った場所にしか転移ができない。でも、私の使った転移魔法は見た場所、考えた場所にすぐ転移できる。これが5000年前から使われてる本当の転移魔法。今は転移魔法に関する知識とかがかなり衰退してるみたい。だから、転移魔法を習得したいなら私の使ってる転移魔法を習得した方が後々役に立つ。」


たしかにシノの言う通り、衰退した知識で作られた転移魔法より、完全な転移魔法を使えた方があとに役に立つか……。


「今度、転移魔法作らせてくれ。と、その時にシノさえ、嫌でなければステータス共有を頼む。味方がどんなスキルを使えたりするのかわかっていた方が、今後戦いがあるとき役立つはずだ。」


「わかった。」


「まぁ、今はとりあえず日が出ているうちに宿を探さないといけない訳だが……。」


と言いかけると、シノがこう提案してきた。


「ナナの言う宿なら、街の裏に行くとあると思う。」


「どうしてそう思う?」


「ドローンを飛ばして、この街を上空から調べた。そうしたら、裏町でそれっぽい建物に入って行く人が見えた。」


「……いつの間に飛ばしてやがったんだよ……。」


ちゃっかり街全体を調べてるのはさすがである。


用意が周到と言うかなんというか。


にしても、裏か……。


「どこら辺だ、その宿ってのは。」


「ここから、少し歩いた先に見える花屋がある。そこのちょうど右あたりにその宿がある道がある。」


「なるほどな。ならさっさと行くか。」


そうして、シノの言っていた花屋の前まで歩を進めていく。


すると、数分しないうちに例の店が見えてきた。


色とりどりの綺麗な花が並べられている。


そして、店のすぐ横には聞いていた通り、道があった。


薄暗い路地裏だ。


たしかに一見しただけでは、こんな道の中に店があるとは誰も思わんだろうな。


「いいじゃねーか。変に居場所は探知されにくそうだ。」


「いこう。」


言って、俺の手を引いて道の中に入っていくシノ。


シノはまぁまぁせっかちなところがあるようだ。


まぁ、別に問題は無いが、もう少し気楽に生きてもいいとは思う。


「どの程度まで歩けば着くんだ、宿には。」


「ここから数分程度でつく。ただ、少し特殊。」


「特殊?」


「私たちからしたらあっても普通とは何ら変わらない。でも、この世界の普通の人からは、その宿は見えないようになっている。」


「……妨害魔法ってやつか。」


恐らく、人が発動させているわけではなさそうだな。


普通に考えれば、丸一日妨害魔法を行使していることなんてこの世界の人間には無理なはずだ。


そんなことをすれば、魔力枯渇で最悪死ぬだろうしな。


何らかの魔道具で発動させているわけだ。


まぁ、シノによれば訳ありらしいし、不思議なことは無いが。


「そろそろ着く。」


「そうか。」


この世界に来て初めての宿。


どんな建物が建っているのか、少々興味がある。


そんなことを思っていれば、ピタリと手を引いていたシノが足を止めた。


「……ついた。ここが今日から私たちが泊まる場所。」


「ほう、なかなかデカイな。もう少しこじんまりとしたイメージだったが。」


そこには3階建ての木材でできた建物が佇んでいた。


絵本に出てきそうな三角屋根の建物である。


「こんな路地裏に、こんな宿があるとは……。よく見つけたな?シノ。」


「たまたま、ドローンに写りこんだ。それと、私には幻影魔法なんて効かない。」


「そうだったな。……とりあえず、さっさと部屋借りるか。明日に向けて、素材整理もしておきたい。手伝ってくれ。」


「わかった。」


シノはそう返事を返して、建物の中に入っていく。


俺もそれに着いていくのだった……。



「……そろそろ動き出してもいい頃合じゃない?もう、封印をとけば万全の力を持った状態でヘラ様を出せるでしょう?あのクソ神も動き出してるんだしさ。」


言って、椅子にふんぞり返って座り込む長いツインテールの女。


それに対して、隣に座っていた白髪のグラサンをかけた中年くらいの男が反論する。


「まだだな。まだ足りん。ゼウスが動き出したということは、それはあの〝ブレイクキング〟がまたこの世に生き返ったと考えていい。」


「ぶれいくきんぐぅ?なにそれ、だっさい名前ね。」


クスクスと小馬鹿にしたように笑い出すツインテールの女。


それに対して、表情一つ変えずに中年くらいの男が言う。


「舐めない方がいいぞ。やつはヘラを追い詰め、封印した張本人だ。やつの力は神をも超える。恐らく、この世界で生き返っているとすれば、昔のような封印だけでは済まないかもしれん。」


「……それは、ヘラ様への侮辱かしら?〝死霊族ゼノバ〟。」


鋭い眼光でゼノバという中年の男を睨みつける。


と、その今にも争いが起きそうな所に静止の声が挟まれた。


「待ちなよ。ゼノバのいう〝ブレイクキング〟はヘラを封印した張本人であるのは事実。実力は桁外れている。激動の時代の頃とはいえ、それは変わらない歴史だ。警戒しておくに損はないと思うよ。……それに、みんなも満場一致でまだ封印を解かないって言う結論に賛同している。イリス、封印を解きたいなら、それ相応の理由を言って欲しい。」


黒い仮面をつけた、ローブの男はツインテールの女を真っ直ぐ見る。


それに対して女は心底不機嫌そうな顔をして、押し黙った。


すると、それを笑うものが1人。


「若いというのは浅はかなものよのぅ。まぁ、それがまた良いのかもしれんがな。妾も随分年老いたものよ、ふふふ。」


「……喧嘩売ってるんなら買うわよ?カミナズミ。」


女が見た方向には、和服を来た、花魁のような女が居た。


「喧嘩など売っておらなんだ。妾がそんな小者とおもうてか?若人。」


「そうだったわね。5000年以上も生きた、若保ちババァが私なんかの小者に構ってる暇ないもんねぇ?」


「……若人、調子に乗りなさんなよ?」


「はぁ?あんたでしょうが調子乗ってんの。マジで潰すわよ?」


二人の間で不穏な空気が流れ始める。


今にも殺し合いが始まりそうだ。


「はぁ……全く、いい加減にしないか。お前ら。」


あたりの空気が一気に変わり、とんでもない殺気が辺りを包み込む。


それにツインテールの女はビクリッ!と体を震わし、和服の女は機嫌悪が悪そうに人睨みして言葉を放つ。


「ただの戯れ後ときで怒りすぎでは?更年期、なんしょうかねぇ、〝黒滅鬼〟?」


「……カミナズミ。少し、口がすぎる。あなたは所詮3番目。」


「……フン。」


気に食わなそうな顔をして、椅子に黙って座り込む和服の女。


「ここに今日8人全員が集まったのは、喧嘩をするためでは無い。これからの進行についてどうするのか、それら全てを考えるために集まったのだ。イリス、カミナズミ。」


「……わかっておるわ。言われなくてもの。」


「ふん。」


そう言って、大人しくなる2人。


2人を大人しくさせた黒い何かはまた話し出す。


「先の話に出ていた〝ブレイクキング〟についてだが、少なくとも未だ力は元には戻っていないのは確かだ。もしこの世界に来ているとするなら、転生という線でしか、生き返る方法なぞないからな。」


「ということは、今がそいつを潰すチャンス、ということじゃなぁ?」


「でも、そうは言ってもそう上手くは行かなさそうだけどね。あのゼウスが僕らの乱入を許すとは思えない。あちら側の何者かが着いていそうだけど。」


まだ、小学生くらいの男の子と白い髭を伸ばした初老が口々に話す。


「たしかにな。あの神のことだ。天使をつけているだろうな。だが、所詮天使だ。我々の敵では無い。」


ニヤリと口角をあげる黒鬼。


すると、その後ろからズズンという音と共に巨人が姿を現した。


「探し出して、殺す。」


「いや、その必要は無い。もうその検討は着いている。名は、ナナ・アベルシュタイン。最近冒険者になった新人冒険者だ。……だが、やつには明らかに不自然な点が多くある。まずひとつとして、異常な戦闘力だ。今の人族も昔の人族も戦闘力は皆無に等しかった。それなのに、やつは異常な戦闘力を保有している。どこでそんな力を手に入れたのやらな。」


「誰かに教わっていたとかじゃないのか?」


「いいや、それは無いだろう。やつの動きは、そういう仙術などの類では無い。そして、2つ目の理由に繋がってくる。やつには過去の記録がそもそもない。今まで何をして、どこに暮らしていて、どこの出身なのか。その全てが分からない。」


「なるほどのぅ。それならたしかに怪しいな。」


「そして確信めいた理由として、3つ目だ。隣にあのゼノシリーズNo.オリジナルがいた事だ。」


その場にいた全員が反応し、少し警戒を露わにする。


「やつは確実に〝ブレイクキング〟で間違いはないだろう。」


「まさか本当に生き返っているとは思わなんだ。でもまぁ、これで妾の念願も叶うわけでありんすね。」


「まぁ、まだもう少し様子をみるつもりだが、潰せると判断した時点ですぐに行動に移す。お前たちもそのつもりでいろ。以上で、今回の集まりは終了とする。」


ナナの知らぬ間にくらい何かが動き出すのだった。

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