6話 冒険者試験その3(続)
チームワークもこの試験で測るのか……。
どう測るつもりなんだろうな……チームと言っても複数できるわけだ。
全員が同盟となって討伐を冠水していくわけじゃない。
今回試験官はこいつだけだ。
と、考えていると、試験官が何かを手に持ち掲げた。
「今回、チームのリーダーになった方はこの首掛けをかけてもらいます~。特殊な魔法が付与されているので、この首掛けを通してギルドの方に映像として戦闘風景などが映し出されてますから、試験の間は外さないようお願いしますね~。」
なるほど……なかなか考えられたものだ。
確かにそれなら、人件費も下げられるし、何人もの人間が採点できるわけだ。
「それでは、チームを自由に組んでくださァい。」
そうとだけ言って何も言わなくなる試験官。
ここは丸投げか。
この様子を見るにチームをどういう構成で組むかも試験内容に組み込まれてそうだな。
俺にはそこは関係ないところだが。
他の奴らと組む気は無いし、最悪1人ででも簡単に攻略できる。
「シノ、いいな?」
「うん。ナナ意外と組む気は無い。」
「あらあらぁ、とうとうボケましたかぁ?私もいるんですけどぉ。」
「お前は勝手にしろ。どうせ、お前の名前を呼んだって、面倒な回答で返してくるだけだろうが、捻くれ者が。」
「あなたに言われたくないです。」
ラファエルが真顔でそう言ってくる。
俺は自分がこいつほどひねくれちゃいないと思ってるがな……。
チラチラとこちらを見ていたものは今の会話が聞こえていたのか、シノの言葉の後諦めるように目を逸らした。
強いやつを自分のパーティーに入れようとするのは、弱い人間にとっては当たり前のことか。
その方が冒険者試験で好成績は取れるだろう。
……だが、浅はかな考えだ。
ほかの冒険者ギルドは知らんが、少なくともここの冒険者試験はそういう面ではあまりみていないようだ。
今回は、パーティーのチームワークも見ているようだから、強い人間がいようとパーティーとして成り立っていなければ、即終了だろう。
俺らも例外では無い。
随分と厳しい試験のようだ。
「おい試験官。首掛けをよこせ。」
「え、あ、はい。」
そう返事をして、俺に首掛けを手渡す。
それを受け取った俺らはすぐさま森の奥へと歩き出す。
とっとと試験を終わらせねーとな。
◇
「……なかなか深い森。瘴気もそれなりにはこもってる。」
「最上級モンスターとか上級モンスターとかはでなさそうだが、この瘴気なら中級のでかいのが出そうだな。ウォールウッドだとかウインドウルフとかいうやつより凶暴なのが……。」
「来ましたよ。噂をすれば。」
ラファエルの言葉の後に木々の影からのそりと姿を現したのは白い木の体に顔がついた、人があの魔物だった。
「……あれがウォールウッドってやつか?」
「うん。レベルは12程度。草魔法って言うのと木魔法って言うのを使ってくる。」
「ほう……どっちもなかなか使えそうな魔法じゃねーか。……喰わせろ。」
一瞬でウォールウッドとの距離を詰める。
あまりの一瞬すぎる出来事に、魔物であるウォールウッドでさえ、グオッ!?っと言う小さな声で驚きを見せている。
「さて……お前はどんな味がするんだろうなぁ!」
ウォールウッドの顔面を鷲掴み、そのまま握りつぶす勢いで地面に殴りつける。
グシャリッ!という音が響き、ウォールウッドが力なくその場で腕を落とした。
「……味気ない戦いだな……。」
死体と化したそのからだを持ち上げ、バリッ!と噛みちぎる。
「ふむ……可もなく不可もなくな味だな。あのムカデの方がまだ美味かったかもな。」
「ナナ、あまり外では魔物の死骸を食べない方がいい。それで異常者と思われたら、冒険者試験がどうなるか分からない。」
「……そうだな。こいつら食うのは、宿を借りてからにするか。」
言いながら、その死骸を異空間収納でしまい込む。
「さて、このまま順調に行けばいいが……。」
と、言いかけるとズズンッという音と他の冒険者の叫び声が森の中を響き渡る。
「……この瘴気……なかなかの大物か?ここじゃ。」
「中級クラスには成長してる。Lvで表すなら、50程度かも。」
「ここらで私も少し働きましょうかねぇ……冒険者試験のためですし。」
ラファエルはその言葉の後に姿を消す。
次の瞬間には轟音がこだました。
「勝手なことしやがって……チッ。」
舌打ちとともにラファエルの向かった方向に歩いていく。
この試験が、ただ魔獣殺せばいいってもんじゃないのわかってんだろうな、あいつ。
そんなことを考えながら、歩いていけばでかいオオカミ型の魔獣が倒れている現場にたどり着く。
ラファエルが無表情でその魔獣を見ている。
そして、その魔獣に襲われていたのだろう冒険者が尻もちを着いて倒れていた。
「……おい、ラファエル。勝手な行動してんじゃねぇ。試験に落ちるだろうが、バカが。」
「……それはすみませんねぇ……。退屈すぎてつい。」
魔獣を冷ややかな目で見ながら、そういうラファエル。
その後ろを見れば、男たち4人が腰を抜かして尻もちを着いていた。
「おい、お前ら。いつまでそうやって腰抜かしてるつもりだ?さっさと立ちやがられ。邪魔だ。」
そいつらに人睨みしてそう言捨てる。
そうすると、ひぃぃっ!っと叫びながら逃げ去っていく。
「あなたはそうやって睨んだり、圧かけたりしかできないんですかぁ?」
「お前が勝手なことをしなければ、そうしなくても良かったんだよ。」
「私のせいにしないでください。ただあなたが恐れているだけでしょう?」
「なんだと……?」
目を細めてラファエルを見やれば、ラファエルもこちらを冷めた真顔でこちらを見ていた。
そして、沈黙が辺りを包む。
「……2人とも仲が悪いのはいつもだけど、今はとりあえず周りの邪魔を排除した方がいい。これのせいで、寄ってきた。」
シノの言葉で周りを魔力感知で見てみれば、魔力がそこらかしこで感じ取れる。
ウォールウッドに、ウインドウルフ、オークにスライム。
「ざっと数えて、50程度か?」
「ううん。もっといる。多分、100は超えてる。」
「100越えか。」
小さいのが100増えようが、200増えようが今の俺なら問題は無いだろう。
やろうと思えば、この森全てを焼き尽くすのも容易い。
……が、さすがにそれをすると今の街に住むどころか身を追われる立場になっちまうだろうな。
あの町の冒険者にとって、この森は稼ぎ場所でもあるからな。
かと言って、100体の雑魚相手にしたくは正直ないのだ。
早く金を手に入れたいしな。
「シノ、なんかいい討伐法ないか?」
「あるにはある。でも、それをすると魔物が原型を留めないかも。」
「ふむ……なら、一体ずつ切っていったほうがいいか……。面倒な魔物だな……!」
大鎌に武器を変形させて、近場にいたウインドウルフの首を跳ねる。
そしてすぐさま、その隣にいたウォールウッドの体を一刀両断した。
「さぁ、次々行こうか。〝グラビティ・ルベナスト〟!」
広範囲に超重力がかかり、魔物たちが地面に這い蹲るように倒れ込む。
Lv10程度の魔物共には抗えん重さだ。
なんなら、今この瞬間に潰れてしまってもおかしくは無い。
気を抜いたら潰してしまいそうだ。
「とっとと、殺り尽くすぞ。」
「わかった。」
「いいですよォ、私もやってあげます。」
「当たり前だ。」
シノは腕を重機関銃に変化させ、的確に頭だけを撃ち抜いていく。
ラファエルは水魔法で作り出した剣を自由自在に変形させて、魔物を切り落としていく。
そうして、30分くらい魔物を借り続けていれば、いつの間にやら魔物の姿が消えた。
周りには魔物の死骸が転がっている。
動物の大虐殺が行われたような現場になっていた。
「どうだ、シノ。近場に魔物の気配はあるか?」
「ない。これで全部だと思う。ナナが出してた殺気で逃げた魔物もいる。」
「逃げた、ねぇ。魔物ってのは本能のままに動いてるのに、殺気で逃げるってか。」
「魔物も一応は生き物。多分ほとんどない危険察知能力が少しは働いたんだと思う。」
「まぁいいだろう。これだけの死骸と戦いぶりを見せたんなら、冒険者試験は難なくクリアできるだろうしな。」
そこらに落ちている魔物の死骸を一気に異空間収納にしまっていく。
「変な難癖をつけてくるやつがいなければっていう条件付きではあるけど。」
「そんなものはねじ伏せればいい。物理的にも、精神的にも、な?」
「野蛮ですねぇ。これだから人間というのは……。」
「うるせーぞ駄天使。いくぞ。」
そう言って、俺たちは元いた場所まで戻るのだった。
◇
「…………えっと……これはなんというか、大量、ですね……。」
試験官と俺たちの目の前には山のように積み重なったウインドウルフとウォールウッドの死骸ができていた。
帰りの道でもかなりの魔物が出てきたために、とんでもない量の討伐量になってしまった。
「とりあえずの魔物討伐に関しては、これで合格でいいだろう?」
「え、えぇ、もちろんですよォ~。まさか、ここまで討伐してくるのは予想の範囲外でしたけど……。」
特殊魔法のかかったネックレスを手渡しながらそんなことを話す。
「あとは他の連中を待つだけか。おい、試験官。合格したとしたら、冒険者証明書ってのはどのくらいの期間で貰えるんだ?」
「多分明日になりますね~。審査などの話し合いの期間もあるのでぇ~。」
「まじか……それはだるいな……。なぁ、魔物の死骸ってのは冒険者証明書がなくても売れんのか?」
「え?あぁ、売れますよぉ~?」
「売れるのか?!」
「はい~、問題なく売れますよ~。ただ、冒険者証明書が付けば、解体のお代が安くなったりするっていうだけなので~。」
それはいいことを聞いた。
とりあえず、今日狩ったこいつらを売って宿代を稼げばとりあえずは数日はなんとかなるだろう。
ついでに余ってるいらない魔獣も売っちまう方がいいか?
異空間収納は特定の容量ってのは無いが、整理しといて損は無い。
気分的問題である。
「これは、ここで待機してないとダメか?とっとと宿探しとかしたいんだが。」
「すみませんー、時間まではもう少しだけ待って欲しいですぅ~……。」
「ナナ、わがままだめ。」
「……わぁっーたよ。」
ドカッとその場に座り込み、はぁ……とため息を着く。
さすがにここに魔物取り出して堂々と整理するわけにもいかない。
さっきみたいに魔物が寄ってきたら面倒だし。
ふむ、どうしたものか……。
そうして少し考えて、あることを思い出す。
「……新しいスキル、そういやあったけか。」
スキル画面を開き、スキル欄を読み込む。
すると、その中には見覚えの無いふたつのスキルがあった。
ナナ・アベルシュタイン Lv558種族「人間」
体力 1729242.0
攻撃力 1692513.0
防御力 1687321.0
素早さ 1425187.0
魔力 1558426.0
魔法防御 1257841.0
スキル
創作、思考超加速、自動超速再生、ステータス成長率アップ(最上級)、回生(最上級)、スキル共有(上級)、馬鹿力(中級)、毒生成(下級)、分裂(上級)、分散(上級)、追尾(上級)、拒絶の邪眼(最上級)、魔眼「石化」(上級)、拒悪の邪眼(最上級)、暗視(最上級)、絶対防御(最上級)、ウェポンマスター(最上級)、暗黒剣術10(上級)、大鎌術10(???)、盾術(???)、すばやさアップ(+50%)、スコーピングアイ、魔道の道(極み)(詠唱なしで魔法発動可能。魔法攻撃力アップ、魔法のMP消費50%減。)、サーチ(敵探知、素材探知)、身体強化(攻撃力+70%)、身体強化(すばやさ+70%)、身体強化(防御力+70%)、解析者、火竜の魂LvMAX(魔力消費無しで火竜を召喚)、異空間収納、糸生成、スキル付与、魔法付与、属性付与、ジャイアントキラー(上級)、MPドレイン(最上級)暴食(最上級)、腐食(最上級)、剛力(最上級)、金剛(上級)、潜水(中級)、毒無効、痛覚無効(最上級)、麻痺無効、やけど無効、物理耐性大(上級)、耐久(最上級)、剣の舞い(最上級)、金剛(中級)、並列思考(上級)、赤龍の加護(最上級)、MP増強(上級)、物理攻撃力アップ大(上級)、魔法攻撃力アップ(上級)、炎魔法の極み、水魔法の上級、土魔法の上級、毒魔法の極み、風魔法の極み、水魔法の極み、重力魔法の極み、闇魔法の極み、霧魔法の極み、古代魔法、破壊の章、魔物の固有魔法、虐殺王(最上級)
魔法
炎、水、毒、風、重力、闇、霧魔法の初級、中級、上級魔法を使用可能。
古代魔法「ダークファントム」、「イムルカンナム」、「イルムイーター」、「」
召喚「神千切」
自作魔法を作成可能...イグニス・ザ・オルテン(炎魔法と追尾スキルの合成魔法8羽の火の鳥を打ち出す。相手に当たるまで追尾する。)、グラビトン・ルベナスト(超圧縮の重力級を出し、全てを圧し潰す。)、アクアダストクルセイダー(毒魔法と水魔法を合わせた複合魔法。全てを溶かす猛毒を混ぜ合わせた水の圧縮レーザーを飛ばす。)、爆撃(炎、水、風魔法を組みあわせて爆発を起こす。)、浮遊魔法、破壊の章第1項・アヴァロンズゲート、破壊の章第2項・戒牢、破壊の章第3項・アイアン・メイデン、破壊の章第4項・グランデス・ドルマゲドン
ウェポン系スキルの最上級までを全て扱える。
大鎌、盾のスキルを最上級まで扱える。
魔物の固有魔法
デストロイ・バニシング、エターナル・ノヴァ
スキルポイント
20030
1つは、ウェポンマスター。
そして、もう1つが虐殺王。
どちらも最上級スキルである。
1つ目のウェポンマスターの効果としては、手にした武器、例えば槍とかなら槍の武器スキルを最上級まで扱えるようになったりするらしい。
なんで俺のスキルにこんなものが追加された?
俺の武器としては、銃、鎌、盾くらいなものだ。
しかも、その中の大鎌と盾に関しては新たなスキルとして追加されている。
なら、何が引き金となってこんなスキルが……。
「もしかしたら、ナナが以前に全ての職業とりあえずスキルポイントで手に入れたのが関係してるかも。」
「なに?」
いつの間にか隣にいたシノの言うことに眉を顰める。
俺がとったのはあくまで初級のものばかりだ。
上がっていたのは、剣術くらいだろう。
「なんでそんなことが言える?」
「私の予想ではあるけど、ナナその銃、銃として扱っていなかったりしてる。だから、そのおかげでほかの武器スキルが育った可能性がある。」
「そんなことあるか……?」
「ありえない話じゃない。昔からよくある話。私も育ってる。」
ふむ……別に剣を使わなくとも他のスキルは育てられるのか……。
使い方次第って訳だ。
そう考えれば、ウェポンマスターっていうスキルができたのは納得がいく。
なかなか使えそうなスキルだし、今後も重宝させてもらおう。
さて……2つ目のスキルだが、虐殺王というスキル。
このスキル、なかなかぶっ壊れてやがると、個人的には思う。
内容としては、魔物でもほかの生物でも、殺せば殺すほど攻撃力が高まっていく。
最大で1000倍以上。
雑魚が存在している限定でのスキルではあるが、特定のボスには有効打になる。
単純だが、その単純さが強い。
一体倒す事にどの程度攻撃力が上がっていくのかは分からないため、実践で試す必要性がありそうだ。
だが、このぶっ壊れスキルほかのスキルと違いデメリットも大きいか……。
このスキルを使っている時、バッシブスキル以外のほかのスキルを使用できなくなる。
強力すぎる分の代償としては、割にあっているっちゃ、あっているか。
使い所を考えにゃならんな。
「このスキルを使う時はサポート頼むぞ、シノ。」
「うん。大丈夫。」
スキル画面を閉じて、立ち上がる。
試験終了時間はもうすぐか。
いつの間にやら、ちらほらと戻ってきている連中がいる。
「そろそろですねぇ~。あと何人戻ってこれるでしょうか~?」
のんびりとそう言っている試験官。
上級冒険者なだけはあって、いつでも動けるように索敵は常にしているようだ。
ほかの試験中の冒険者はと言うと、疲れ果ててみんな座り込んでいる。
冒険者ギルド側は、これを試験にしていないようだが俺から言わせてみれば気が抜けすぎだ。
ここは魔物の住み着く魔の森だ。
いつ何時襲われるかも分からない。
索敵魔法やスキルを常に維持して使えるものならまだしも、ここにいるほとんどの冒険者は索敵魔法、スキルを維持できないものばかりだ。
そんな奴らに休んでいる暇など本当はあるはずがない。
常に警戒し、周りに気を配らなければならん。
……つくづく甘い。
「……!。皆さん!そこを離れて!〝光の神よ、我が身にかのもの達を魔のものから守る力を与えたまへ!光防御魔法・バリア〟!」
冒険者たちがいた場所に透明な何かが展開されたのがわかった。
同時に奥から3人の冒険者たちが駆けてきた。
「助けてくれぇ!」
「全く歯が立たねーよ!」
「まじ、まじで死ぬ!」
口々に言いながら、こちらに向かって走ってくる。
そして、それは姿を現した。
「……ほぅ……でかいな、あいつ。」
目の前にはでかいウォールウッドに似た生物がいた。
だが、どうやら違うようだ。
ディープルート Lv54 (中級)
h 5254
s 4621
v 2519
a 1325
m 7523
mv 7591
スキル・バッシブスキル
自己再生(中級)、森林魔法(中級)、闇魔法(中級)、攻撃速度上昇10%(初級)、惑わしの邪眼(中級)、幻惑魔法(初級)、同種の呼び声
魔法・技能
闇魔法の初級全てを使える。
中級(ダークネス、ダークネスボール、ダークネスアロー)
森林魔法初級を全て扱える。
中級(グラスシード、ウッドハンマー、ウッドルーツ、フォレスト フィールド、フォレストアンガー)
幻惑魔法(幻惑の霧)
固有スキル
自己再生(中級)
固有魔法
樹木生成
中級モンスター、ねぇ。
全体的に中途半端に覚えてる感じか。
なにか完ストしてる魔法も何も無い。
上級魔法のひとつでも覚えていれば、少しは楽しめたかもしれんのにな。
そう考えているうちに冒険者たちがバリアの内側に入った。
追ってきていたディープルートはそのままバリアに衝突する。
バチバチッ!という稲妻が走ったような音が響き渡る。
「くぅっ!?」
「キシャァアアッ!」
なぞの壁に阻まれたのが腹立たしかったのか、ディープルートはそんな叫び声をあげ、攻撃を撃ち始める。
「っ……!やめ、てくだ、さいぃ!」
試験官は火の玉を杖に集めて、そのままディープルート目掛けて撃ち出す。
それに反応して、ディープルートは攻撃をやめて、真横に避けた。
木だけあって、火には弱いか。
あれは魔力を固めて作りだしただけの火の玉だ。
ファイアボールにも至っていない。
その程度の火の玉を避けるということは余程耐性がないようだ。
そう考えていると、攻撃されたあとジィっとこちらを見ていた、ディープルートが突然に叫び出した。
「グゥゥ……〝キシャァアア〟!!」
「……仲間を呼んだみたい。沢山来る。」
「雑魚が何匹集まろうと、雑魚には変わらんのにな。」
そんなことを言っていれば、森の奥からワラワラと魔物共が現れてきた。
「そ、そんな……っ!皆さん、いつでも逃げられる準備をしておいてください!私のバリアが破壊されたと同時に走ってください!」
「いや、さすがに無理だろ。後ろを見てみろ。」
「何言って……。」
言い終わる前に試験官が言葉を止めた。
それもそのはず、もう既に後ろの方に魔物たちが回り込んでいた。
中には中級クラスのモンスターもちらほらいる。
この状況でバリアなんて壊れれば、試験官は生き残れても確実にこいつらは死ぬだろう。
「どうする、試験官?このままだと、バリアが壊れるぞ。」
「っ……!どうするも何も……さすがに今から救援を呼ぶには、時間が……。」
「そんなものに頼るよりもいい方法がある。」
ニヤリッと口角をあげ、試験官を見る。
「取引を俺としようじゃないか、試験官。」
「取引、ですか……?うぐっ!」
「あんたが張ったバリアはもういつ壊れてもおかしくは無い。今この瞬間壊れる可能性もある。その状態でいつ来るかも分からない救援を頼るのは得策とは言えない。……だが、俺なら、俺らならこの状況を簡単に打破してやろう。そこで、どうだろう?俺がこの魔物共を殺し尽くしてやる。その代わり、お前は確実に俺が冒険者になれるようお膳立てをしろ。」
「なっ……!」
俺の言った言葉に、何かを言いかける試験官。
だが、俺はその言葉を言われる前に畳み掛ける。
「お前が今選ぶべきなのはどちらだ?よく考えて口にしろ。俺は別にお前らごとき、どうなろうと関係はないんだからな。」
「…………あなた、性根が腐ってるって言われませんか、よく。」
「俺ほど性格のいい人間は他にいねーぞ。試験官。」
「あなたの、実力を見込んで、お願いしましょう……。私たちを助けてください……!」
「契約成立だな。いい返事が聞けてよかったよ。」
大鎌を方に担ぎあげ、その場で立ち上がる。
「ナナは、意地悪だと思う。」
「お前以外の他人に優しくする必要性がないからな。」
「ロリコンって気持ち悪いですねぇ。クスクス。」
「お前は後で覚えておけよ、駄天使。絶対殺す。」
「っ……!もう限界です……!」
瞬間にバリィインッ!というガラスの割れるような音が響きわたり、俺たちを覆っていた魔力が消えた。
さて、始めようか。
「大虐殺の始まりだ。」




