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5話 試験その3

あれから2時間くらいが経過しただろうか。


俺があの石版を壊したからだいぶ時間が遅れてしまったらしい。


まさか、あの程度の石版をすぐに出せないとは思わなかった。


俺ならその場で作れさえするというのに……。


「……仕方ない。そもそも今の人類にはブライ鉱石っていう金属さえ難しいレベル。」


「なぜだ?」


「行ったところで、その域にいる魔物を倒すことが出来ないから。」


「あぁ……なるほど。」


たしかに、ここの奴らのレベルじゃあの階層の魔物に出会った時点で死人が大量に出そうだ。


Cランクの冒険者でさえ、レベル70にすら至ってなかった。


当たり前だが、この街に最上級モンスターなんて攻めてきたら、たった1匹に全滅させられるだろう。


それに、俺とヘラの戦いに巻き込まれる可能性は非常に高い。


どこで戦うかも分からんしな。


まぁ、俺からしたら全員赤の他人ではあるし、さほど気にしはしないが……。


「弱いってのは本当に不便だな。」


「力があれば大抵の事は、今の時代でもどうとでもなる。昔より薄れてきてはいるけど、結局弱肉強食なのは変わりない。」


「クスクス、あなたが壊してだいぶ遅れはしましたけど、どうやら全員終わったようですよ?」


「ちっ……。」


ラファエルに向けて舌打ちをした後、その場で立ち上がる。


すると周りの視線が俺へと集中する。


「色々な感情がこの場には渦巻いてますねぇ、クスクス。貴方への憎悪とか、恐怖とか……クスクス……ほぼ恐怖が大半ですから、まるであなたが魔王みたいですね。」


「魔王?ふん、悪くねー肩書きだな?」


「魔王に落ちた瞬間に勇者に殺されると思っていいですよ。魔王は勇者に勝てない。そういう宿命ですから。」


クスクスと笑いながら見下ろしてくるラファエル。


性根がほんとに腐ってやがる。


どーやったらこんな性根を腐らせることができるのやら。


と、ふとシノが声を発する。


「ナナ、招集がかかった。もうほかの人間はあっちに集まってる。」


「そうだな……行くぞ。」


言って、俺らはそちらに向かう。


「えっと……皆さん集まりましたかぁ~?」


冒険者が、眉をひそめて周りにそう問いかける。


「……何をそんなに怯えてるんだか。」


「あなたがあの石版ぶっ壊すからじゃないですかぁ?可哀想に。クスクスその後の威圧もかなり効いてるみたいですよ。」


「うん。今回に関してはナナのせいではある。」


シノにまでそんなことを言われる。


俺が悪いのだろうか?


そもそも、あんな脆い石盤をつくったのはここのギルドの落ち度。


そして、喧嘩を最初に売ってきたのはあの女だ。


俺はそれに対して対処をしたまでのこと。


と言っても、ビビられてるのは事実だが……。


「ちっ……だりーな。」


「はうわっ!?すみません!」


「……はぁ……そんな怖がるなよ……。俺はたかだか、15歳迎えたばかりの小娘だ。力があってもそれをお前らに対して振るうつもりなんてない。……敵対してこない限りはな。」


「一言余計、ナナ。」


真顔でシノに突っ込まれる。


シノにこう言われては黙るしかない。


「私たちは少し急ぎの用がある。試験はできる限り早めに終わらせたい。」


「わ、わかりましたぁ。では、次の試験会場まで転移魔法陣をつかいますぅ。着いて来て下さぁい。」


そう言って試験官はせっせと歩き出す。


そして、その後ろを俺らはついて行こうとしたところで、さっきの貴族令嬢が前に出しゃばってきた。


「……今度はなんだ。」


「さっきの屈辱、忘れないわ。お父様にいいつけてやる!」


「ほう?さっきまであんなに肩をガタガタ震わせてた小娘がよくそんな大口を叩けるものだな?」


先程と同じように、少しの殺気を漏らす。


それに反応して、ビクリッ!と身体を震わせるも、ルイントンはその場に立ち俺の事を睨んできた。


ついそれに対して、俺は目を見張ってしまう。


少しとはいえ、この程度でさっき腰を抜かしていた女が、これに耐えるとはな。


さすが貴族令嬢なだけはあるようだ。


度胸はそれに見合ったものがあるようだ。


「……なかなか根性はあるようだな?少しは見直したよ。だが、あまり実力差が目に見えるような相手に喧嘩を売るのはマイナス点だ。そんなんじゃ命がいくつあっても足りんぞ。」


言って、そのまま横を通り過ぎる。


少しのアドバイス位はしてやらんと、早くにしにそうだ、あの女は。


まぁ、俺にとってはあの女がどうなろうと知ったことでは無いが、な。


後味が悪いくらいだ。


「ナナは優しい。」


「優しい、ねぇ……勘弁してくれ。優しさなんてもの俺は持ちたくないね。世の優しいってのは都合のいい人間にしか与えられない不名誉な称号だ。優しさを持って、この世界は生きていけんよ。」


「ひねくれた考えしてますねぇ。そんなだから、友達いなかったんですよ。」


「だまれ。」


そう言い放って、そのまま歩き出す。


……さっさと試験を終わらせて、金を稼げるようにならんと面倒だ。


狩りをすれば食料はなんとかなるだろう。


だが、金がないと屋根のある部屋は借りられないし、買えない。


一生野宿で過ごすのだけは勘弁である。


シノと違って、俺は汗はかくしな。


水浴びはしているものの、それだけではどうも気持ちが悪い。


何よりも、部屋があるからこそできることもあるからな。


「とっとと、くだらん試験を終わらすぞ。」



あれから、冒険者ギルドの地下に連れられてきた俺らはある部屋へと入った。


部屋のど真ん中には淡く輝く魔法陣が描かれている。


点灯はあたりにはないようで、魔法陣から発せられた光によって部屋が薄暗くはあるが照らされている。


「皆さぁん、集まりましたかぁ~?今回はこの転送魔法で、ディルド平原にある森に行ってもらいます~。そこで、ウインドウルフ、ウォールウッドを5体ずつ狩っていただ来ます~。基本的にHランク冒険者でも倒せるレベルの魔物しか出ませんが、冒険には例外というものが付き物ですから、皆さんくれぐれも油断しないようにしてくださいね~。一応私も試験管として着いては行きますが、例外以外のことでは手を出さないので、気をつけてくだいね~。」


言いながら、試験官が魔法陣に魔力を注ぐ。


同時に白い光が目の前を包み込み、次の瞬間には先程とは違った木々が拡がっていた。


「ふむ……ここが魔物が住む森、か?ゼルセオスが管理していた森よりも瘴気も魔力も弱々しいが……。」


「あそこは最上級モンスターの巣窟。ほかの森とは比べ物にならないくらいのレベル。」


「やっぱり、最上級モンスターがいるのといないとでは違うんだな。」


「うん。最上級モンスターが1匹でも森にいたら、ほかの魔物はその森から逃げ出す。そういうケースがあるから、昔は人間の里とかにスタンピードとして襲いかかってた。現代においても有り得るはず。」


なるほどな。


要は最上級モンスターが生態系をおかしくしないようにあいつは管理していたわけか。


腐っても神の柱としての仕事はしているらしいな……。


「はい、みなさァん。再度、今回の試験について説明しますね~。今回倒していただくのはウインドウルフ5体、ウォールウッド5体の計10体です~。それと、今回の試験ではチームワークの項目も試験内容になってるので、チームを組んでの討伐をお願いします~。」


チームワークか。


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