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4話 冒険者試験

「これより、冒険者試験を開始する。まず諸君らには筆記試験を受けてもらう!全員席には付いたな?」


まるで、昭和の学校みたいだな。


机に椅子、防具などを置く棚。


案外、ここは前世の風習があるのかもしれないな。


と確認をし終えたのか、試験管が喋り始める。


「試験を始める前に冒険者試験の説明をしておこう。今回の冒険者試験では主に3つをやってもらう。筆記、実技、実戦だ。この3つをクリアしたものには冒険者証を渡す。」


筆記と実技と実戦か。


実技、実戦に関しては全く問題は無い。


が、筆記はどうか分からない。


この世界の水準学力が分からない以上、計算などが出た時、とんでもない難問が出される可能性がある。


筆記がそもそもどう言ったものが出るのかも分からんしな。


「ちなみに試験を乗り越えたものにはもちろんGランク冒険者として初めて貰うが、例外的に飛び級という可能性もあるということを頭に入れて置いてくれ。過去、現Sランク冒険者の中にも飛び級した者がいるからな。説明は以上だ。早速試験を始めるぞ。」


「飛び級......。」


それはいいことを聞いた。


どうせなら高ランクをめざしてもいいし、飛び級狙いで挑むか。


そう考えながら、目の前にあった羽根ペンを手に取る。


さて、まずは筆記だが、どんな問題が出るのやら。


「筆記試験、はじめ!」


試験管の一言と共に一斉に紙をめくり出した。


その中で俺は1人言葉に詰まっていた。


なんなんだ、この問題の難易度は......?


問題の難易度のレベルがあまりにも低かったのだ。


小学生で習うようなかけ算、足し算の数々、魔物の種類やその魔物の弱点など。


基本中の基本しか詰め込まれていなかった。


あぁ......なるほど......冒険者の世界の学弁などこの程度のレベルしか問われないのか。


というか、そもそもここに記されているような魔物、俺にとってしてみれば弱点など付かずとも討伐できてしまうものばかりだ。


どうせなら、最上級モンスターのことを記して欲しい。


「早めに終わらせて寝るか......。」


言いながら、ペンを走らせるのだった。



......ここは、どこだ......?


目を開ければ、目の前に広がるのは燃え盛る炎に、どこもかしこも穴だらけの地面、そして......血を流して倒れる人々。


なんだこれ......どうなっていやがる?


俺はさっきまで冒険者ギルドの試験室にいたはずだ。


それなのに、どうしてこんな知りもしない場所に俺はたっている?


ちっと舌打ちを立てる。


......そんなことはどうでもいいか。


今はとりあえず、こんな変な場所からどう抜け出すか考えねぇとな......。


そうして異空間収納を開こうとした瞬間だった。


ズガァァアアンという轟音が真後ろで鳴り響いた。


「っ?!なんだ?!」


ばっと前方に飛び退く。


そしてすぐさま異空間収納からアーティファクトを取り出そうとする。


だが、スキルが発動しない。


「クソが、一体全体なんだってんだ!」


黙々とたちこむ煙の中にひとつの人影が見えた。


その人影の背丈は俺と同じくらいか、それより少しばかり小さい。


なにより、その形には見覚えがあった。


ほんの最近見たばかりの形。


そして、煙が霧散すればそこに居たのはシノと瓜二つの機械が一体たっていた。


「......シノ?」


なんでこんな場所にシノがいる?


まさか、俺と同じくここに飛ばされたのか?


いや、だがあいつは俺みたいに寝たわけじゃ無いはずだ。


なら......あいつは一体......。


と、目の前で少女が上を向いて喋りだした。


「攻撃パターンを変更。乱射撃で迎撃を開始。」


ガシャンガシャンと腕などが変形し始め、大型の機関銃らしきものになった。


同時に周りに小型のドローンのようなものが浮かび始め、それらは上空に照準を合わせてある。


一体何とあいつは戦っている?


上からシノは落ちてきた。


上に誰かいるのか?


そうして上に視線を送れば、凄まじい速さで何かが落ちてくるのがわかった。


俺でさえ、そう表現することしか出来ない。


それは姿がはっきり視認できないほどのスピードだった。


「攻撃、開始......!」


銃撃音が鳴り響く。


1発1発の威力が地面が揺れるほどに大きい。


なんつー威力してんだ?!


1発でも当たったら俺なら消し炭になっている。


だが、攻撃の量は多いはずのシノの攻撃は、標的に当たることは無い。


あの手数がひとつも当たらないとか、どんな速さしてんだ、おい......。


「っ......!当たって......!」


銃撃の中、シノがそんな声を漏らしたのが聞こえた。


同時に爆発音が響き渡る。


そして、ひとつの知らぬ声。


「愚かなガラクタ風情が......あの憎き人間がいなければ何も出来んくせに。」


「かっ......はっ......?!」


気づけば、シノが地面に掴み伏せられていた。


掴み伏せているのは、白髪の50を超えたくらいの特徴的なサングラスに、黒いコートを着た男だった。


分かる。


解析者を使わずとも、あいつは桁違いの化け物だということが。


今の俺が殺り合えば、何も出来ずに殺される。


「っ......あなたは、どうしてヘラなんかに......加担するの......!あいつは、あなたの一族を滅ぼした張本人なのに!」


「俺の一族を滅ぼした、ねぇ......くはは......俺からしたらどうでもいいんだよそんなことは。なんならそのことに対して感謝さえしている。俺はな、自分の一族が大嫌いだったんだ。そのせいで自由がなかった。全てを決められたレールに沿って進まなきゃならん。そんな地獄から俺を救ったのはヘラだ。俺はやつの考えに賛同し、俺もそれを願っている。」


「ぐっ......?!」


バキバキッと地面にヒビが入る。


「無力っていうのは悔しいだろう?これが、俺とお前の実力の差ってやつだ。いくらお前が順位を上げたからと言って、俺に勝てる訳では無い。所詮、ガラクタごときにな。」


「こ、の......!」


「何かしようとしても無駄だ。お前の力じゃ抜けられん。」


シノがもがくがそいつの手からは逃れられない。


「よくもその実力でこの俺に挑もうと思ったものだ。ここまで来るといっそ面白い。......そして、俺としてはヘラの邪魔を排除できて、好都合というものだ......!」


そうして男が拳を振りかぶる。


同時に視界が歪んでいく。


「っ......!?シノ......!シノ!!」


2度呼びかけるも返答はなく、視界は一気にフェードアウトしていくのだった。



「......ナ......。......ナナ............起きて、ナナ。」


聞き覚えのある声にゆすられながら意識が覚醒していく。


ここは......冒険者試験場か......?


まだ完全に覚醒していない意識の中、状態を戻していく。


頭が正常に働ききらない......。


「......ちっ......なんだっけか......なんか大切なことがあったような......。」


寝ている間にすごく重要なことを夢に見たような気がしたのだが、上手く思い出すことが出来ない。


と、そんなことを考えていると前から男の声が聞こえる。


「試験中に寝こけるとはさぞ優秀な人材なのだろうな、ナナ・アベルシュタイン。」


「......あ?んだって?」


目の前にいる男を一睨みすれば、その迫力に少し気圧されたのか男が冷や汗をかいた。


「どうせ試験は終わったんだろう。それに俺は全問書き終えたからこそ寝てたんだ。別に問題は無いだろう?文句があるってなら、まずは試験紙を見てからにしろ。」


「くっ......いいだろう。それで大半が間違っていたらとんだ恥を晒すことになるのは貴様だぞ。」


恥......ねぇ。


「勝手にしろ。」


心底くだらなさそうに言葉を放てば、試験管の男は怒り心頭なご様子でつぎの試験紙を集めて行った。


心が小さい男だ。


にしても、学校でもないところでこんなことを言われるとは思わなかった。


たかだかあんな低レベルの問題で寝るなという方が難しい。


「ナナ、問題は完璧にできてたから寝てた?」


「当たり前だ。......さすがにあそこまでレベルが低いとは思わなかったけどな。」


「あら、解けたんですか?あなたの頭で。意外です。」


「ちっ......お前こそ解けたんだろうな?あんな低レベルな問題......まさか間違うわけ、ないよなぁ?」


「舐めてますぅ?あんな問題間違うわけないじゃないですかァ。私あなたと同じ低脳じゃないんですから。」


お互い、額に青筋を浮かべて睨み合う。


そんな俺たちの間をシノが引き剥がすように、俺の頭を抱き寄せた。


「ラファエル、あまりナナをいじめちゃダメ。」


「......随分と気に入っているようですね、そのオタクを。いいんですか?浮気って。」


「これは浮気じゃない。」


「クスクス。そうですか。まぁいいんじゃないですか?私的にはどうでもいいですし。」


そう言いながら、前へと顔を向け直すラファエル。


本当にどうでもいいかのように無表情に切り替わっている。


相変わらず人間らしさの欠けらも無い表情だ。


そう思いながら、ラファエルを見ていると前方から言葉に詰まったと言わんばかりの声が聞こえてきた。


前を見れば、試験管が口をあんぐりと開いて目を見張っている。


なかなか面白い顔をする。


にしても、人間ってのは驚くとあんな顔ができるものなんだな。


初めて知った。


「全問あっている......だと......?ど、どんな小細工を......!」


「小細工ってなんだよ......たく、おめぇらの知能が弱いだけだろうが。だいたいなんだその子供でも解ける問題は。足し算引き算なんて、6歳児以下でも解けるぞ。」


「んなっ......?!」


「それともあれか?冒険者は知識があれば、計算なんて必要ないだのとほざくんじゃあるめーな?」


挑発するようにそういうと試験管は、額に青筋を浮かべてこちらを睨んでくる。


この程度の挑発に乗るとは安い男だ。


そいつの目から視線を外し、外を見る。


このレベルの試験なら次の実技も問題なくこなせそうだな。


飛び級も余裕だろう。


さすがに本気をここで出す訳にはいかんし、それなりに出せば問題ないか。


なにか出しやすい魔法とかないものか......。


「っ......!次の冒険者試験は冒険者試験専用の中庭で行う!10分の休憩を挟んでから遅れないように来るように!試験管は別の者が担当する!」


そう言って足早に部屋を出ていく試験監督。


怒り心頭の様子で試験場から出て行く試験監督。


レベルが低いというかなんというか。


次の試験官はもう少しマシなやつだといいが。


思いながら、頬杖を着いていると周りから視線を感じた。


......少し目立ちすぎただろうか。


周りの人間が俺の方を見てザワザワと囁いている。


「......いくぞ、シノ。次の試験場所に。」


「わかった。」


俺とナナが立ち上がると、ラファエルも立ち上がる。


「別にお前は別行動でもいいんだぞ?」


「あらあら、そんなに私に実力で負けるのが怖いんですか?」


「ちっ......いちいちイラッとするやつだ。」


言いながら俺らは部屋を出ていくのだった。



休憩で10分ほど経った後、次の試験会場にて試験が開始される。


「皆さん集まりましたねぇ。これから冒険者試験の実技試験を行います。実技試験は至ってシンプルで、あのブライ鉱石でできたこの石版に向けて魔法を撃っていただければ結構です。」


ブライ鉱石、ねぇ......。


随分とでかいものをそんなもので作ったものだ。


てことは、魔力をすいあげる力もかなりのものになっているはず。


「まずはどなたから挑みますか?いつでも大丈夫ですよ。」


そう言って、にこにこしながら見回す試験官。


こいつも一応冒険者ってところか。


だいたい試験を担当するのは冒険者のようだ。


まぁ変なのもいるだろうし、その変なのに対応できるのは冒険者くらいだものな。


当たり前と言えば当たり前か。


だが、やはり弱い。


こいつのレベルはだいたい70かそこらだ。


俺が暴れでもしたら、簡単にひねり潰してしまえる。


「ナナ、とりあえず周りの様子から見ていったほうがいいかも。どの程度の耐久値なのか調べるためにも。」


「耐久値なんて、お前が見ようと思えば簡単にわかるんじゃないのか?」


「見ようと思えば、もちろん見ることは出来る。でも、それを乱用しようとは思わない。時には、スキルに頼らないで自分の力で見計らうのは大切。」


「大切ではあるだろうがなぁ……。」


まぁ……今は何かと戦っている訳でもないし、自分を鍛えるにはちょうどいいか。


シノの言うことももっともだ。


シノの言うように自分の力で相手の力量を見計らえるようになっておけば、直感も鍛えられる。


別に悪いものでもない。


それに、ステータスはあくまで数値上での戦闘能力だ。


思いなどによっては、数値を超えた異次元的な成長を遂げることが生き物にはある。


だから、目安としかならないという理由もあったため今回は納得した。


強要する事でもないしな。


「俺も少しはお前を見習った方がいいかもな。」


「その意気。最近、ナナは数値に頼りすぎてる。ヘラと戦うなら、数値上だけで行動したらダメ。」


「まぁ、あれは化け物ですからね。あなたごときの目で測れるほどヘラは弱くは無いですよ。」


「一言余計だぞ、駄天使。おめえから先ずは殺されてーか。」


「クスリ……殺れるものなら殺ってみたらどうです?」


煽るような笑みを浮かべて、こちらを見てくるラファエル。


それに対して鋭く睨み返す。


と、その間を割るようにして、シノが声を上げた。


「2人とも、始まる。」


すると、冒険者試験者たちの前に一人の女冒険者が立った。


ほう……よくも前に出たものだ。


なかなかこういった場で1番初めに前に出ようなんて考える人間はそういない。


それに見たところ、この場を怖気付いてはいない。


度胸だけなら、素晴らしいものを持っているようだ。


度胸だけ、ならな。


「まずはあなた様から始めましょうか、クジェスカ・ハルネムア様。」


「ええ、よろしく頼むわ。」


そう言って彼女、クジェスカ・ハルネムアは長い赤髪を手で振り払うようにして、こちらを向いてきた。


その顔はまるで俺らを見下すかのようだ。


あぁ、こいつは、なるほどな。


典型的な天狗野郎のようだ。


「まずはあなた達に自己紹介をしなくちゃね?たかだか、平民が……しかも、冒険者なんてやってるような愚民にはよく名前を知らせておかなきゃ。こんな奴らでも私達、ハルネムア公爵家が守る市民でもあるのだからね。」


自己紹介をする前の前置き長すぎるだろう。


どんだけ俺らを格下にしたいんだこいつ。


平民が冒険者やってるだけで愚民になっちまったぞ。


しかも、その愚民がやるような職に公爵家が、就こうとしてるよ。


馬鹿さが滲み出てるわ。


てか、こういうやつってどうしてこう見てるだけで人を恥ずかしくさせられるのだろうか。


今にも逃げ出しそうだぞ、俺は。


「私の名前はクジェスカ・ハルネムア。現当主であるルイントン・ハルネムアの娘であり、次期当主になるものよ。」


そう言って勝ち誇ったように笑うルイントン。


それに俺はじとっとした目を送る。


「小並感......。」


「クスクス。人間ってやっぱりおかしな生き物ですねぇ。」


「あれだけ自信満々なら、この中では強い方かもしれない。」


シノの真面目さが輝く。


眩しい。


俺やこの駄天使なんかよりも眩しい。


目がやける......!


「お手並み拝見と行こうじゃないか......。」


ルイントンは後ろを向いて、的の方に右手を突き出した。


さて、どんな魔法を使ってあの的を、ぶっ壊すんだろーな。


「いいかしら、撃っても。」


「はい。お好きなタイミングでうってください。」


「見てなさい。これが私の力よ!〝炎の精霊よ、我が身に力を貸し、かの者を燃やし尽くせ!フレア・アロー!!〟」


右手に荒ぶった炎が出現したのと同時に、それは矢に変化して、的に命中した。


だが、それはすぐに的に吸収される。


まぁ当たり前だが、あの程度の威力じゃ壊せない。


それに加えて、詠唱省略がないと来た。


あのCランク冒険者どももそうだったが、この世界の人間には詠唱省略の知識がないのか?


魔法は詠唱して打つよりも、詠唱を省略して打った方が協力かつ実用的だ。


戦闘の際もその方が役に立つ。


あの様子を見るにそのことを全く知らない、というのが正しそうだ。


「どう?見ていたかしら、平民共。これが私、クジェスカ・ハルネムアの力よ!」


「あらあら、本当……その若さでこの魔法の威力は凄いですね…。」


おおっ……!、と周りからも感嘆の声が漏れ出る。


大きな石版には214という数字が浮き出ていた。


あれは威力数値だろうか。


あの程度で凄い、のか。


「…………くだらんな。」


はぁと溜息をつきながら、俺は腕組みをして眺める。


…と、気づけば周りの視線が俺の方に向いていることに遅れて気づく。


クジェスカもおれの方を睨んでいる。


もしかしてこれ……


「声に出てたか?」


「ん。はっきりと聞こえるくらいには。」


ふむ……どうやら、やってしまったようである。


だからといって、なにか不都合が生じるかと言えば、全く生じないのだが。


「あんた誰よ。名前を言いなさい、平民。」


「名をお前に名乗る義理がない。断る。」


「……へぇ……いい度胸してるじゃないの。あんた、私よりもさぞ強いんでしょうね?まだガキのくせに。」


「ガキ……だと?」


俺はそのままそいつの前まで歩いていく。


そして、クジェスカの目の前で止まった。


こうなってしまったら、俺も前に出る他ないしな。


どうせあとにやるんだから、今やっても変わらんか。


何よりも、こいつの今の言葉に腹が立った。


「たかだか、200程度の威力でよくもそんな威勢を出せるものだ。さぞ、いい暮らしをしていたんだろうな?お嬢さん?」


「っ!あんた、そんなこと言ってわかってるんでしょうね……!」


「ほう?何か出来るのか?……これを見てもなお、そう言ってられるのかね。」


そのまま横を通り過ぎて、石版の前に立った。


「……これが本物の魔法ってやつだ。〝フレア・アロー〟」


瞬間、石版の上空に赤い魔法陣が展開し、凄まじい轟音と共に石版に炎の雨が打ち付けた。


しばらくして見れば、石版が塵へと化す。


「ふん……この程度の強度じゃ測れやしねぇ。おい、これより硬いのは無いのか?」


「え、えっと、多分これが一番固いものだと思いますよ〜……?」


「……飛んだ期待はずれだな……。チッ……。」


その舌打ちにビクリッと体をふるわす試験官。


「次の試験場はどこだ?」


「あ、えっと……次の試験場に関してはまた後ほど説明があるので、とりあえず終わった方たちは、まだ試験を受けていない方々の後ろで待機、という形でお願いしたいですぅ……。」


「わかった。」


「ちょ、待ちなさいよ!」


がしりと俺の手を掴んで俺が行くのを静止させられる。


「……んだよ、はなせ。」


「っ!たかだか平民風情が、調子に乗ってるんじゃないわよ……!お父様にこのことを言ったらあんたは……!」


「あ?」


瞬間に殺気が少し漏れだした。


「え……?」


そんな間抜けな声とともに膝から崩れ落ちる。


そして、自分の体を描き抱くようにしてカタカタと震え出した。


「……チッ。めんどくせぇ……。」


言いながら、そのまま歩き出す。


こいつに構っているほど俺も暇じゃない。


さっさと終わらせて金を稼げるようにならねぇと、宿を借りる金もねーしな。


「……次私。〝ジオ・ブレイク〟」


そうして、シノが俺が跡形もなく消し炭にした石版のある場所に黒い何かを出現させれば、そこの地面が大きくえぐり取られた。


あれでもだいぶ手加減はしているようだ。


「それでは、私も終わらせてしまいましょうか。〝アクア・ドローネ〟」


駄天使は駄天使で派手な魔法を使っている。


自らの周りから水を作り出し、それを天にまで水の柱にして打ち上げる。


あれに果たして実用性があるのかと言われると、おそらく全くない。


ブライ鉱石の石版がないから、だいぶふざけたな。


ただのお遊びの範疇だろう。


まぁ、あんなものでもこの場にいる冒険者にとってしてみれば、とんでもない魔法の使い手に見えるんだろうがな。


「終わった。」


「ご苦労さん。あとは次の試験を待つだけだ。俺らはゆっくり、武器とかの整備とかでもやっているとしよう。」


「あら、見ないんですか?今世の人間のか弱い姿を見るのは私の楽しみなのですが。」


「勝手にしろ。俺はお前みたいに腐ってねーし、周りのことなんざどーでもいい。」


「楽しむものがないとは、可哀想な人ですねぇ。クスクス。」


言いながら、冒険者試験を注視し始めるラファエル。


趣味の悪い娯楽だ。


まぁ、俺になにか危害が及ばないのなら、勝手にすればいいが。


にしても、もし俺が本当に神に勝ったとして……他の神々から敵視はされないんだろうかね……。


神を人が倒したとなれば、それはほかの神々の脅威にもなるわけだ。


それに俺が、その力で世界を滅ばさないとも限らない。


興味がある訳では無いが、な。


「……問題ありませんよ、邪神ヘラに勝ったとしても。あなたが殺されることはありえない。」


「俺の記憶を読んだか、気味の悪い……。それで、なぜそんなことが言える?お前は神ではないだろう。」


「ええ。私は神じゃない。でも、確実に言えますねぇ。なぜなら……。」


瞬間に感情のない声でこう言い放つ。


「他の神など、もう存在しないからです。」


「神が存在しない、だと?」


「そうですよ。ゼウス様以外の神はもう存在しないんです。5000年前に殺されたから。」


「…………5000年前にって、昔は神殺しまでやっていたってことか。」


「ちがう。激動の時代には、順位があった。神々自身がその順位に列ねられてた。そして神々をも凌駕する存在があの時代には存在した。それが、今で言う十強。 」


十強……。


たしか、この世界で最も強いとされる奴らの事だったっけか。


たしか上からブレイクキング、竜人クレイル・ドラゴノア、シノ……。


「お前、十強だったのか、そういや。」


「うん。でもそれは昔の話。今のこの時代では関係ない。順位なんてこの世界には無いから。」


「それもそうだな。……だが、シノはそう考えていてもその他の奴らがどう思っているのかは分からない。」


「多分、これから先敵対するのは確か。少なくとも、死霊族、竜人族、巨人族は必ず敵対することになる。」


確信したように言うシノ。


必ず、ということはおそらく5000年前にも敵対していたということだろう。


どいつも十強に名前が入ってる種族か……ヘラを殺すのに骨が折れそうだな……。


「死霊族は十強の中でもトップ5に入る実力だったし、竜人族は2位の強さを誇ってた。私でも敵わない相手。もし敵対することになったら、私が負ける。だから、ナナはもっと力をつけないとダメ。私よりも強く、高みを目指して。」


「何言ってる。お前も強くなるんだよ。」


シノの前に仁王立ちで立ち上がる。


「俺がいる限り、お前は死なせないし、俺も死ぬきはない。これから先今の俺たちよりも強いやつが現れるのは確かだ。……が、勝てないわけじゃない。あくまでも先の話だ。お前も俺もまだまだ強くなれる。だから、お前は俺と一緒に強くなればいい。今よりも高みに俺らで手を伸ばせばいい。」


「ほんとに、言ってる……?」


「本気だ。ちなみにお前に拒否権は無い。俺がそうだと決めたからな。断らないだろう?」


ニヤリとひにるに笑みを浮かべてシノを見やる。


それに対してシノは少しの間と共ににこりと笑みを浮かべてこう言った。


「わかった。」


と。

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