表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/45

第2章 1話 冒険者

「冒険者ってのは全員があんなレベルなのか?」


「あなたが化け物すぎるだけですよぉ?人間やめてるのはあなただけです。」


「……そうせざるを得なくしたのはお前らだし、これくらいじゃなきゃ神になんて勝てねーよ。」


遠目からある一点を見つめながらそう言い放つ。


今、俺らはある木の上から戦闘を眺めていた。


話の通り、冒険者らしき集団4人と魔物の戦闘だ。


人間という種族がこの世界でどの程度の実力なのか、見ておいて損はない。


人間同士の争いもあるだろうしな。


出発を決定した作日からたった数時間で人間の住む王都付近まで俺らは来ている。


もちろん、ゼルセオスのスキルを1部奪ってだ。


俺のスキルはかなり遠くからでも目視さえできてしまえば、発動させることが可能だ。


だから、遠方から奪ってやった。


また戦闘になっても面倒だしな。


ちなみにゼルセオス戦では、新たなスキルもいくつか手に入っている。


まぁそれはあとのお楽しみだ。


シノとゆっくり話しながら見ていこうと考えている。


「戦闘始まった。」


「お、本当だ。どう動くのかねぇ、この後。」


「案外あっさり倒したりするかもしれませんねぇ、クスクス。」


「でも、いいの?多分、あれを殺すと他のも大勢よってくる。」


「それも込みで見ものなんだよ。まぁ様子を見ていこうぜ。奴らもそんなにヤワには鍛えてないさ。冒険者ってぐらいだしな。」


そうして、俺らは様子を見続けるのだった。



「はぁ、肉がくいてーよぉー……。」


「そんなこと言っても仕方ないでしょう?私たちには今そんなお金はないんだから。」


「だからって、ずっとおんなじ汁物と携帯食料じゃ飽きんだもん。」


「あまりわがままを言うものでは無いぞい、リクよ。わしだって酒が飲みたいのを我慢しておるんじゃからな。」


「うっ……で、でもよぉ……。」


言いながら男は携帯食料を見ながら文句を垂れる。


「はぁ……たんまり金があればなぁ……。」


「そんなこと言ってても無駄。お金は出てこない。」


「ぐっ……!はっきり言うなよぉ……。」


トホホというようにがっくしの肩を落とす。


と、瞬間にがバリと立ち上がった。


「……くるぞ。出てきやがったな、ホブゴブリン!」


同時に全員が立ち上がって、戦闘態勢に入った。


「いつも通りの陣形で行くわね?」


「「「おう!、うん!」」」


ガサガサと木の影から姿を現した魔物。


「ぐぅぅぅ……」


「よっと!」


ホブゴブリンに向けて、1人の男冒険者が走っていく。


ホブゴブリンはその男をひと睨みすると、持っていた棍棒を振り上げる。


「!。がぁうぁぁ!」


「おせーよ!〝フレアアクセル〟!」


男の足から火が吹き出たかと思えば、速度が急激にあがり、あっという間にホブゴブリンの懐にまで潜り込んでいた。


「〝はやぶさ〟!」


2度、素早く剣を切りいれる。


「ぐぁっ?!」


「まだまだ続くぞい!〝母なる大地よ!我が身に力をさずけ、かの者を打ち砕け!アースショット〟!」


同時にドワーフらしき人物の足元から、勢いよく土の弾丸が5初発射される。


見事にそれはホブゴブリンに直撃した。


「どーだ、俺らの連携は!」


「ちょっ……油断は禁物だって……!」


「グァアア!」


ホブゴブリンは雄叫びを上げながら、棍棒を横に凪ぐ。


そうすれば、必然的に男に直撃するわけで……。


「がはっ?!」


そのまま木のあるところまで吹き飛ばされた。


「いっつ……!」


「もう、バカ!〝思考加速〟〝身体強化〟……〝炎の太刀・炎舞〟」


瞬間にポニーテールの女はダッと駆け出したかと思えば、回転しながらホブゴブリンを半分に切り落とした。


「が……ぐ、あ……。」


どすんと言う音と共に、地面に倒れ伏せる。


「リュッカ、治してあげて。」


「わかった。〝母なる光よ。かの者の傷を癒したまへ……ヒール〟」


大きな三角帽子を被った少女が魔法を唱える。


すると、怪我はあっという間に消えた。


「おお、サンキューな!」


「こんのおバカ!サンキューなじゃないのよ!」


「あだっ!」


バシッ!と引っぱたかれる。


「いてーよ、ミリア!」


「あんたが悪いんでしょ!全く!いつもリクは突っ走るくせに注意力が無さすぎなの!2人もなんか言ってやってよ。」


「そうじゃのぉ……若いってええな、カッカッカッ!」


「ダンさんはもうだいぶ年。ドワーフと言っても、そのくらいの年になったなら、そろそろ冒険者家業を引退してもいいと思う。」


「失礼な。わしゃまだ150じゃぞ?リュッカよ。」


そんなくだらない会話に、はぁ……とため息を1人着くミリア。


「とにかく、あんたはもっと気をつけるべきよ?わかった?第1、冒険者なんていつ死んでもおかしくない職業なんだから、ビビるくらいがちょうどいいわ。」


「わかった、わかったよ!ミリアは硬いなぁ。リュッカの治癒があれば死ぬことはないってのに。」


「あんたねぇ……。」


リクには全くもって頭を抱えさせられる。


昔からいつもこう。


人の言うことを素直に聞くことが出来ないのは変わっていない。


そのため、私はいつも苦労してきた。


だけど、見捨てることは無い。


見捨てればいいという意見もあるだろうけど、私にとっては大切な幼馴染だから。


「ほら、立ちなさい。ホブゴブリンの素材回収して帰るわよ。」


「へいへい、わかったよ……っと。」


リクは差し伸べた私の手を取って立ち上がる。


その時だった。


「……ワタシ、ノ、下僕ヲ殺シタノハ、貴様ラカ?」


その声とともに凄まじい殺気と圧が辺り一体を包み込んだ。


ゾクリと背筋が凍りつく。


冷や汗も止まらない。


何……何よ、これ……。


「……これは、さすがにまずいのう……わしらじゃどうにもならん相手じゃぞ……。」


「むり……これは無理……。」


ゆっくりと私も後ろに振り向いていく。


そうして……見えたのは石の王冠に、赤いマント。


大きな大剣を携えた大きなゴブリンがそこには立っていた。


「ホブゴブリンなんかとは体格が全く違う、わね……何なの一体……。」


「こいつは……多分、ゴブリンロードだろうな。」


「ゴブリンロード……?!それってたしか、国ひとつを滅ぼすレベルの最上級モンスターの……。」


「こいつぁ、そんなレベルじゃないぞい。それはA級冒険者何十人かで何とかなったレベルのやつじゃ。だがこいつはちと、A級じゃ厳しい。レベルもそうだが、数がな。」


同時に奥からゾロゾロとゴブリンが現れる。


普通のゴブリンからハイゴブリン。


中にはゴブリンロードと並び、最上級の強さを持つゴブリンアークだ。


黒い鎧を身にまとったゴブリン。


剣術のスキルは8くらいだと噂を聞いたことがある。


そして、珍しい派生スキルの暗黒剣術というのも持っているらしい。


しかも魔法も使ってくる。


少なくとも私たちじゃ勝つことは不可能な相手だ。


「っ……!逃げるしか、ないけど……逃げられるかしらね、これ。」


周りを見ても全方位をゴブリンに囲まれているこの状況。


どう考えても逃げることは不可能に近い。


どうすればいいの一体。


「俺が奴らの注意を引こう。」


そう言って、私たちの前に出たのはリクだった。


「何言って……ダメよ、そんなこと!」


「ダン、リュッカ。ミリアを頼む。」


リクはニコりと笑ってこちらを見た。


「ミリア、ごめんな。ここでお前を死なせる訳には行かないんだよ。お前の父さんに頼まれたんだ。だから、約束は守らないといけない。俺が死んでも、お前は生かす。」


「なんで……!あんたまで死んじゃったら、私は……今度こそひとりになっちゃうじゃない!」


手を最大限に伸ばして、リクに触れようとするが、リュッカによってそれは叶わない。


「離して!リクを死なせるわけにはいかない!」


「……ミリア、ごめん。〝混沌たる闇よ。かの者を包み込め、ダークミスト〟」


リュッカの持っていた杖から黒い霧が出て、私を包み込む。


いや……嫌だ……リクを失いたくない……。


私を置いていかないで欲しい……。


い、やだ……。


そうして、私の意識は途切れた。



「すまん、助かる。」


そうしてグッと俺が構えたところでダンが静止の声を上げる。


「まぁ待て待て。わしも戦うわい。わしらが戦っているうちにリュッカが風魔法で飛んで逃げればええじゃろう?わしまでいたら逃げるにも逃げられん。」


「ダン。私は、あなたも飛んで逃げられる。」


「心遣いは感謝するが、リーダー1人に任せて逃げるのは男として恥じゃ。すまんがわしも残る。」


斧を前にもって、俺の横に並び立つダン。


それを見て、つい笑う。


「いいのかよ、ダン。まだまだあんたはこれから長いと思うぜ?」


「カッカッカッ!ワシより若いのに言われるとはな!まぁ、そこは心配せんでもええ。この世界に未練はない、とは言えないが仲間を見捨ててまで手に入れる必要なんてないもんじゃしな。」


「それなら、いいか。」


俺は恵まれている。


いつも呆れず俺を面倒見てくれる幼馴染。


死に際に1人で死なせないように、ちゃんと一緒に戦ってくれる仲間がいる。


こいつらにあえて、俺は幸せだ。


冒険者になってよかったと心の底から思えた。


あぁ、本当に。


死にたくねーなぁ……。


「……行くぜ!ダン!!」


「おうよ!ドンと来い!」


ゴブリンロードに向かって、走り出す。


同時にダンも詠唱を始めた。


考えろ。


やつはどう動く。


横か、上に飛ぶか、それとも下に屈んで俺の懐に潜り込んでくるか?


「……どっからでも来ればいい!〝フレア・アクセル〟!」


俺の足に炎が纏わり、スピードを加速させる。


あと少し!


と、そこで横から他のゴブリンが襲いかかってくる。


「ガァァァ!」


まずい!


「させんよ!〝アースウォール〟!」


俺と奇襲をしかけてきたゴブリンとの間に土の壁が現れる。


そのおかげでゴブリンの攻撃は防がれた。


そして……俺はゴブリンロードの目の前にまで迫った。


「うぉぉぉおお!〝剣技・パワースラッシュ〟!」


剣を振り上げ、振り下ろす。


取った!


……だが、現実はそう甘くはなかった。


「愚カナ。コノ私二、ソンナモノガ効クワケナイダロウ?」


「は……?」


一瞬のうちに俺が振り下ろした剣の先が消え失せる。


同時に頭部に強い衝撃を感じた。


意識が一瞬飛びかけたが、激痛で覚醒する。


「あ、がっ……?!」


「チェックメイト、ダ。死ネ。」


右横腹にまた強い衝撃。


それは俺の体の骨を確実に折っていく。


そしてそのまま、俺を吹き飛ばした。


「リク!」


俺は木を何本か薙ぎ倒したあたりで止まる。


これは……さすがにまずい……。


意識が遠のいていく。


「ククク……人間ハ脆イ。ソシテ、愚カダ。私カラ逃ヨウナド、不可能トモ分カラナイノカ?〝グラビティ〟」


ゴブリンロードが空めがけて、魔法陣を展開すると、さきほど逃げたリュッカが落下してきた。


「かはっ?!」


「ドコマデモ愚カダ。アーク、ヤッテシマエ。」


ゴブリンロードが命令を出すと、ゴブリンアークが剣を抜いてゆっくりとリュッカのほうに歩を勧めてくる。


「っ…………!やめ、ろ……!」


体を動かそうとしても、言うことを聞かない。


感覚がない。


だめだ、このままじゃリュッカ達が……。


「〝母なる大地よ、我が身に力をさずけ、かの者を守る壁を作りたまへ……アースウォール〟!」


リュッカ達の前に土で作られた壁が作り出される。


「まだワシがおるではないか!ゴブリンアーク!〝母なる大地よ。我が身に力を与え、かの者を打ち砕け!アースショット〟!」


ゴブリンアークに向けて、地魔法を発動させるダン。


だが、それは当たり前のように全て撃ち落とされた。


「やはり、無理か……。」


次の瞬間には鈍い音が辺りを響かせた。


「くっそ……が…………。」


ダンもやられた。


俺ももう意識が持たない。


誰も守れなかった。


あまりにも力の差が大きすぎた。


ごめん……ごめんなさい……俺じゃ守れなかったよ……おじさん……。


なくなる意識の中で、そう謝ることしか出来なかった。



2人ともやられた。


私も落下のせいで足が折れた。


風魔法で飛んで逃げても落とされる。


かと言って地上では逃げることは不可能。


詰んでいる。


「っ!〝母なる光よ!我が身に力を与え、我らを守る光の壁を作りたまへ!光壁〟」


光の薄い膜が私たちを覆う。


それは近寄ってきたゴブリンを阻んだ。


これで何とか時間を稼いで、ダンとリクを回復する。


「〝母なる光よ。我に力を与え、かの者を癒したまへ!ヒール〟」


そうして、魔法を行使した。


だが、それでダンの傷が癒えることはなかった。


「なんで、どうして……。ヒールが効かない……?!」


「残念ダッタナ。アークノ剣ハ魔法ヲ無効化スルコトガデキル。ダカラ、魔法ヲ行使シテモ意味ハナイ。ソレト……」


一瞬のうちに私たちの防壁の前に現れるゴブリンロード。


「コンナ、薄イ膜1枚デ私ノ攻撃ヲ防ゲルト思ッテイルノカ?」


携えていた大剣を手に取って、横凪にそれを振るえば、私が発動さていた防御壁が割れた。


まるで紙切れのように。


「あ……あぁ……いや、来ないで……。」


「人間ノ肉ハ美味。特に若い女ノ肉ハ柔ラカイシ、若イ男ノ肉ハイイ歯応エガアル。」


「…………離れ、なさい、よ!〝延灯〟」


炎の一閃がゴブリンロードに直撃する。


同時にリュッカの目の前に立ち上がる人物。


「ミリア……どうして……。」


「あとで……みんな生きて帰って、話し合い、しましょうね……はぁはぁ……。」


息を切らしながら、そういうミリア。


無理をしているのがよくわかる。


〝ダークミスト〟は対象の意識を奪う魔法。


それを直で受けたのだ。


普通なら意識を失うはずなのに……。


「かかってきな、さいよ、化け物……!」


「威勢ノイイ人間ダ。イイダロウ、殺シテヤル!」


ゴブリンロードが大剣を振りかぶる。


それに対して、ミリアが武器を構えた……その時だった。


「外ってのは全部が全部こんなんばっかか?おい。期待外れもいいとこだぞ。〝空間障壁〟」


ミリアの目の前だけ、空間が揺れた。


同時にゴブリンロードの大剣が何かに阻まれて、ピタリと止まる。


「?!」


「ほら、どうしたゴブリンロード。たかだか人間様の作り出した空間の壁だぞ?まさか……破れない、とか言わねーよなぁ?」


「貴様、ナ、何者……。」


「さて、何者だろーな。おらよ!」


唐突に視界から消えるゴブリンロード。


どこに、と考える前に真横から轟音が鳴り響く。


見れば、黙々と立ち上がる煙の中にゴブリンロードらしき影があった。


「今……何が起きて……?」


「分からない……。何も見えなかった。」


ゴブリンロードはどこから、どうやって攻撃されたの?


「大丈夫?」


「え……?」


声をかけられた方に振り向くと、自分より歳は低めの女の子がたっている。


その子は私とミリアをじっと見つめたあと、私たちの方に右手をかざした。


「〝エクストラヒール〟」


少女の周りに白い魔法陣と白銀の魔力が溢れ出す。


すると、私の折れた足が治っていく。


そして、周りを見るとダンやリクの傷が癒え、ミリアにかけていたデバフも消えたのがわかった。


「うそ……。」


私のヒールで直せなかったものが、たった一つの魔法で完治してしまった。


綺麗さっぱりだ。


こんなことって……。


「何やってんだ、シノ。もしかしてわざわざそいつら回復したのか?」


言いながら、また1人少女の隣に立つ少女。


肩に今まで見た事の無い形状の武器らしきものを持っていて、印象に残る白い髪をした女の子だ。


見たところ防具をつけている訳でもない。


「うん。怪我していたし。」


「そのままにしておきゃよかったのに。」


「ナナ。人を見捨てちゃ、めっ!」


「…………わかったよ。なら、アイツらもここにまとめておかないとな。こいつらの周りに結界張っといてくれ。その方が安全だ。」


ゆっくり徒歩を進めていくもう1人の少女。


周りにはゴブリンが大量にいるというのに、怖じける様子もない。


まるで、それらが雑魚だとでも言うかのように、迷いなく進んでいく。


そうしていればもちろんのこと、ゴブリンが襲ってくるわけで……


2体のホブゴブリンが今にも少女に襲いかからんとしていた。


「危ない……!」


「……低脳共が。」


破裂するような音と共に血肉が飛んだ。


その一瞬すぎる出来事に頭がついて行かない。


ホブゴブリンがたったの数秒で肉片となった。


「いつまで寝ていやがる、じじい。さっさとあっちに行きやがれ!」


がしりとダンの胸倉を掴みあげたかと思えば、少女だとは思えない程の力でダンをこちらに投げ込んできた。


「ぐはっ?!」


地面に顔面からいったことで意識を覚醒させるダン。


「な、なんじゃ?!何が起きて……。」


「落ち着いていいですよ〜。うちの化け物が何とかしますし。」


「!。何者じゃ、あんた……。」


さっきの少女の隣にまた1人、青い髪の女性がいた。


いつから居たのか分からない。


ニコニコとした笑顔をこちらに向けている。


「ラファエルの言う通り問題ない。この程度なら、ナナだけで十分。」


「にしても、小鬼族はここまで野蛮でしたっけねぇ。昔はもうちょっと頭が良かった気がしますが。」


「理由は分からないけど知能が低下してるのは確か。まだ知能のあるゴブリンロードに聞いてみてもいいかもしれない。」


すると、もう1人の少女の腕が片方だけ武器に変わった。


「邪魔なのが多い。もう1人がこっちに来たあたりで打ち込む。」


「…………あなた、性格似てきたんじゃないですか?あのオタクと。」


「だまれ、駄天使!ほら、こいつもテメーらのお仲間だろうが、受け取れ!」


その声とともにリクがこちらに投げ込まれた。


先程と同様、顔面ダイブをして地面に着地する。


「「「リク?!」」」


「やっちまえ!シノ!」


「わかった。一気に、殲滅する。」


シノという少女の武器に一気に魔力が溜まっていく。


瞬間に赤い閃光が放たれ、轟音が響き渡った。


それは360度回り、ゴブリンを殲滅していく。


ただ、凄まじい威力に1度身構えたが、こちらになにか衝撃が来たりすることは無かった。


よく見れば、薄い膜のようなものが1枚周りに張られているのがわかる。


しかも、その膜は自身が張る〝光壁〟なんかよりも精度も頑丈さもレベルが違った。


おそらくこの結界はゴブリンロードの攻撃をも凌げるくらいのものだと直感的にわかってしまう。


「うそ……あんなに居たゴブリンが……たった一撃で……。」


そんなミリアの声に反応して、私とダンが振り向けば先程まで大量にいたゴブリンがほとんど消え失せている。


「さて……ゴブリンロード。残るはてめーとゴブリンアークの2体だけだな?」


気づけば、先程ダンとリクを片手で投げ飛ばした少女がゴブリンロードを追い詰めている。


全てが一瞬だった。


たった数分で全てをなぎ払い、追い詰めていた。


この人達は本当の意味での化け物だった。


「どうする?このまま黙って殺されるか……それともできるだけ苦しむように殺されるか。」


「オノレ……。」


そうして、少女が武器で攻撃を仕掛けようとした、その時だった。


少女の影からゴブリンアークが出現し、少女に襲いかかる。


「ヌハハッ!バカメガ、小娘風情ガ調子二乗カラコウナルノダ!」


完全に死角からの攻撃だ。


いくら強かろうとあれは……。


「ゴブリンにしては頭を使ったな。なかなかいい判断だ。……だが、まだ足りん。もっと頭をフル回転させて戦わないとな?」


ビシリッと地面にヒビが入る。


同じくしてゴブリンアークが地面に膝を着いた。


そこを狙っていたかのように、そのままがっしりとゴブリンアークの顔面を掴みあげる少女。


ミシミシという音がこちらにまで聞こえてくる。


「お前のスキル、なかなか興味深いものが幾つかあるじゃねーか。」


「グ、ガァっ……!」


「さっきまでの威勢はどーした?てめぇの実力はその程度か?……だとしたら、お前にはすぎたおもちゃだな、そのスキルは。俺が上手く使ってやるよ。〝創作スキル・剣術10、暗黒剣術8、固有スキル・影渡り〟」


創作スキル……?


そんなスキル見たことも聞いたこともない。


一体どんなスキルなんだろうか。


その疑問は次の瞬間に解決することになった。


「出て来い、大鎌。〝暗黒剣術・ダークディパルサー〟」


先程の武器が大鎌に変わったかと思えば、黒いエネルギーが刃に集まっていく。


同時にゴブリンアークの頭が吹き飛んだ。


どさりと体も倒れる。


最上級モンスターが、たったの一撃で絶命した。


「剣術スキルは今まで持っていなかったから使ったことなかったが……なかなかいいものだな?使い勝手がいい。」


「バ、バケモノガ!〝ディバインボルト〟!」


バチバチと雷が少女に襲いかかる。


だが、それをものともせず、少女はニヒルに笑い出す。


「この程度の出力か。ただの静電気と何ら変わらないじゃねーか。魔法の使い方教えてやろうか?この俺が。〝イグニス・ザ・オルテン〟」


赤い魔法陣から炎の大きい鳥が8羽出現して、ゴブリンロードを襲った。


爆裂魔法を何発も打ち込んだような轟音が鳴り響く。


後には、ゴブリンロードだったものが黒焦げになって転がっていた。


目の前で起きているのは現実で、2体の最上級モンスターがたった一瞬のうちに葬られてしまった。


明らかに以上な実力だ。


こんな実力、Sランク冒険者でしか有り得ない。


「いいもん取れたし、今日のところはまぁいいだろう。ここら辺の最上級モンスターはこんなものだと認識しても良さそうだな。簡単に屠れるレベルだ。」


「ナナの悪い癖でてる。どんな時でも油断も侮りも禁物。何が起きるか分からない。」


「そんときゃ、お前が後ろ守ってくれんだろ?シノ。」


「……はぁ……私の守りがあってもダメな時はある。だから、気を付けるべき。」


「わかってるって。」


ため息をつく少女とそれを笑いながら、返事をしている少女。


見たところ、冒険者プレートは目に入らない。


どこかに入れてあるのか、冒険者では無いのか...…。


「ねぇ……あなた達……一体何者、なの?」


「あん?俺らが何者だろうとお前らには関係ないだろう?これ以上関わることもないんだからな。」


言って、ゴブリンロードとゴブリンアークの死体を持ち上げる少女。


そして空中に黒い穴ができたかと思えば、その中にそれらを放り投げていく。


転がっているホブゴブリンの死体なんかも全てだ。


数分経つうちには全ての死体が黒い穴の中に入っていった。


残ったのは私たちが倒したホブゴブリンのみとなった。


「さて……シノ、王都に向かうぞ。もうここでやることは無い。ラファエル。お前は別に無理に来なくてもいいぞ。なんなら天界に帰れ。」


「わかった。」


「ふふ、調子に乗らないでくださいよオタクくん。いくらあなたがどうしようもなく嫌いでも仕事は投げ出せないんですよ。もしかして……そんなことも分からないんですかぁ?」


「ちっ……うざってぇ。」


彼女らは私たちに何を言うでもなく、歩き去ろうとしている。


彼女らが何者かは知らない。


でも、何者か分からなくてもこのままお礼も言えずに終わらせるのは嫌だ。


ミリアと視線を交わして頷き合う。


そして、ミリアが口を開いた。


「ねぇ、ちょっと待って欲しいの!」


と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ