表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/45

番外編 ゼルセオス討伐後のとある日

ちゅんちゅんと外から鳥のさえずりが聞こえた朝。


ベッドから起き上がった俺は近くの椅子に腰掛けて、立てかけてあったアーティファクトの整備に勤しむ。


多分このアーティファクトは整備なんてする必要性は無いのだろう。


既に超速自動再生が施されてるアーティファクトに意味は無いのはわかっているが、それでもしてしまうのは仕方の無いことだ。


癖のようなものなのだ。


ここに来て、はや数ヶ月は経つがこれをしている時が1番落ち着く。


きっとこれは依存なのだろう。


正直、ここまでの道のりはこいつなしでは歩んでこられなかった。


多少の無理が聞いたのもこいつのおかげだ。


もしも、こいつなしでこの世界に来ていたとしたらとっくに死んでいる。


これからの道のりもそういうものになる。


常に死と隣り合わせの戦いである。


だから、俺はこいつを手にしていないと落ち着かない。


怖いのだろう。


少しでも手に届く場所にないと死ぬかもしれないという恐怖が、心の奥底で燻っているのだろう。


「困ったものだ……。力を持っても恐怖だけはなくならないんだから。」


ボソッとそう小さく漏らしたと同時に、俺の部屋のドアがノックされる。


「ナナ、起きてる?」


昨日ぶりの声だ。


シノだろう。


ゼルセオスの作った洞窟で出会い、共にゼルセオスを負かした仲間である。


「起きてるぞ。」


「入る。」


その一言と共にドアが開かれる。


「おはよ、ナナ。」


「……おはよぉさん、シノ。」


まさか、この世界に来て誰かと朝の挨拶をし合うことになるとは思ってもみなかった。


あの駄天使はいたが、あいつと朝の挨拶なんて交わしたくも無い。


なんなら、朝からあいつの顔を見るのは反吐が出るほど嫌だった。


まぁ、言っていても仕方の無いことだが。


「それで、朝からどうした。俺の部屋に来るなんて。」


「……?理由がないと来ちゃダメ?」


「……はぁ……あのなぁ、シノ。昨日も言ったが、俺は元は男だ。それを理解しての言葉かそれは?」


「当たり前。というより、ナナが今更なんでそんなに気にしてるのか分からない。洞窟の中では2人揃って寝転んでたのに。」


「それは、極限状態だったってのがでけーんだよ……。」


そう言っても、何を言っているのか分からないというふうに、こてんと首を傾げる。


それに、またひとつため息が漏れ出る。


「もういい……俺が慣れることにする。」


「うん。そうして。」


こいつは直す気はないのね……。


行き先不安要素がまた追加された。


「それよりも、ナナ。今日は模擬戦する?」


「あー、そういやそんなことも言ってたな。やるのはいいんだが、さすがにここだとこの家が壊れる危険あるしな。まだ、使う予定もあるし、飯確保ついでにどっかでやりに行くか。」


「わかった。」


「そうと決まれば、ちゃちゃっと朝飯済ませて、やりに行くかぁ……!」


ぐぐぐっと伸びをした後、ベッドから降りる。


そして流れるように、そのままショットガンを担ぎ、部屋を出た。


と、同時に目の前が真っ暗になる。


「……。」


「何やってるんですか?新手のセクハラ?きもーいw。ほんとキモーイ。」


「殺す。」


ショットガンを構えて、引き金を引こうとするもシノにそれを止められる。


絶対、絶対にこいつだけはいつか殺してやる。



「それで、今日はなんの魔物を狩る?」


「イノシシの肉のストックは大量にあるからな、やつは正直要らん。魔物じゃなくても主菜になるような野草、薬草とか魚類を取れればいいんだが、この辺りの森には詳しくないからな。シノの探知頼りになりそうだ。」


「わかった。早速探知してみる。」


そう言って、シノが目を閉じて魔力を放出する。


放出された白銀の魔力は辺りにゆらゆらと流れていった。


しばらくして、シノが目を開ける。


「…………この右の道を少し行ったら、湖がある。そこに魚類がかなりいそう。」


「ふむ……行くか。」


善は急げだ。


向かうついでになにか物珍しいスキルなんかを持ってる魔物に出会う可能性もあるしな。


スキルはあればあるだけこちらが有利になる。


奪えるものは奪っておかないとな。


「それにしても、ここの森は相変わらず静かだな。」


「静か、と言うよりは私たちの魔力のおかげで寄ってこないって言うのが正しい。多分、魔物からすれば、私たちは最上級モンスターと同等の認識になってる。」


「魔物に魔物って思われてるたァ、皮肉なもんだな。」


「私たちのレベルはこの生態系を脅かす程のものだから仕方ない。」


まぁ、ゲームで言えば初期のリスポーン地だしな。


そんな場所でLv500越えの生物がいれば、下位の存在はビビるか。


「とはいえ、少し先に行けばゼルセオス森だ。ここに隠れ住む以外雑魚モンスターは、生きる道がないわけだ。……だが、ここら辺でスタンピードみたいなのが起こりそうなものだがな、こんだけ化け物が集まってれば。」


「多分、そうはならない。あっち側は確かにゼルセオスが居る森。でも、ゼルセオスはこの世界の森全体の神柱。そういうことにならないように管理は怠っていないはず。」


「ふむ……。」


今の一度もそういう事が起こっていないのは、ゼルセオスのおかげということか。


もしもあの時、ゼルセオスを完全に殺していればいつかは起こっていてもおかしくはなかったわけだ。


自称神の柱も生かしておいて、問題にはならなかったということになるな。


「でも、殺して肉を喰らえなかったのは残念でならんな。暴食のスキルでスキル全奪いできなかったのが、1番残念でならん。」


「スキルを獲得したいのはわかるけど、スキルにも獲得できる上限は存在する。この先のことも考えて、枠を温存しておくのも大切。」


スキル上限か。


俺にそんなもの存在するのだろうかと、度々思う。


スキル枠というのはある意味、その生物個別の脳内における記憶と言っても過言では無い。


そして、その記憶枠は俺にとって実質無制限の可能性がある。


思考超加速によって、俺の記憶力は大幅に向上したわけだしな。


そして、それはシノも例外では無い。


こいつは機械でできてる訳で、そういう装置もあるだろう。


覚えることだけならほぼ無制限に近い。


実質スキル習得が無制限になるわけだ。


あくまで俺の仮説であり、これが実際のところどうなのかは分からないがな。


まぁぼちぼち調べてけばわかる事だ。


「ナナ、見えてきた。」


色々思考している間に、シノの言っていた湖が見えてきた。


ゴミひとつ浮いていない綺麗な湖だ。


ここなら、魚はそれなりに棲んでいそうだ。


「よし、久々に釣りでも楽しむとしますか。」


「釣り?」


「おうよ。したことないのか?釣り。」


「したことない。魚をとる時はよく湖に電流を流してとってた。」


「なるほど、いいだろう。今日はまず釣り講座から始めるとするか。」


俺はそう言いながら、事前に作っておいた釣竿を異空間収納から取り出した。


「こいつが釣竿だ。糸の先端についてる針に餌をつけて、海に入れるだけの簡易的な釣竿だ。初心者でも簡単にできる。」


「ふむ?その小さい棒で?それに、餌はどこに……?」


「こいつだな。」


言って、俺はまた異空間収納を開き、餌となる肉を取りだした。


「それって、デストロイワームの?」


「そうだ。手頃な虫はこいつしかいなくてな。」


餌を取り付けながら、ため息を着く。


小さい虫を探したが、周りにはあまり無視はいなかった。


魔物でも最悪良かったんだが、虫の魔物となるとここら辺じゃ、デストロイワームくらいしか知らん。


「よし、これで完成だ。あとは餌の部分を湖に向けて投げ入れるだけだ。」


竿を縦に軽く振り抜いて、湖に餌のついた針を投げ入れた。


少ししてちゃぽんっと針が湖に入り、つけていた浮き袋が浮かび上がる。


「あとは待つだけだ。この時間はもうやることはねーな。ほれ、お前もやってみ。」


もう一本の餌のついた釣竿をシノに渡す。


それを受け取ったシノは俺を真似て、湖に餌のついた針をなげいれる。


「でも、どうやって魚をつる?判断の仕方は?」


「魚が食いついてきたら、釣竿が引かれる。分かりやすく動くからその動いた瞬間に、力いっぱい引き上げればいい。俺特注の釣竿だ。壊れたり、糸が切れたりする心配はない。」


「なるほど……。」


釣竿を両手で握りしめて、湖の方をじっと見ているシノ。


その姿に少しほんわかしてしまう。


この世界に来て、こんな気持ちになるとは思わなんだ。


そんなことを思っていると、シノが握っていた釣竿がくんくんっとなにかに引かれたかのように動く。


「……かかった。」


「だな。よし、そのまま引っ張り上げろ!」


「うん!」


シノが立ち上がって、グイッと勢い良く竿を引っ張り上げる。


すると、さっきまでは見えなかった魚影が水辺に現れ、次の瞬間に大きい水音を立てて姿を現した。


まずひとつ、俺は異世界を舐めていた。


なぜ気が付かなった。


5000年前がどれだけ過酷であろうと、川や海くらいある。


そして、5000年生きているならシノが釣りという行為をしたことがない方がおかしいのだ。


そう、こいつの周りはおかしいのだ。


普通の常識を求めても、考えてもならない。

常にその上を思考しなければならないのだ。


「ほんと、異世界まじぱねぇ……。」


目の前には、常識では考えられないような大きさの魚が存在した。


あれは……なんだ……?


「ナナ、天才。確かにこれなら、いちいち他の魚を気絶させないで1匹ずつ捕れる。」


言いながら、引っ張りあげた竿を後ろを向いて、振り下ろす。


すると、魚も後方に引っ張られ、ズシィンという重苦しい音と共に叩きつけられた。


「……でかくないか、魚。普通かこれ……?」


「うん。だから、最初にこの竿で釣る?のか聞いた。でも、確かにこの竿ならナナの言う通り釣り?ができる。」


まだ、釣りという文化に慣れていないのか釣りと着く部分に疑問のような感じが残る。


「まぁ、こういう理由なら釣りっていう文化を5000年の間にお前がしっていなくても、納得だ。……にしてもこいつはなんだ?サバにも似てるが、細長いし、サンマの仲間か?分からんな。そもそも生態系がよくわからん。海にはほんとに俺の知っている魚が存在しているのか?」


ぶつぶつと目の前にいる魚と他の魚について、考えていればシノから呼び掛けが来る。


「ナナ、解体が終わった。できる限り早めに異空間収納にしまってほしい。」


「早いなおい……。」


いつの間に解体なんてしたんだよこいつ。


もうこええよ。


ジトっとした目でシノを見ながら、異空間収納に解体された魚をしまっていく。


いや、仕事が早いのは別に問題は無い。


正直、感心すらある。


でも、な?


今日はもうちょっとゆっくりでも良かったのでは?と思う俺がどこかにいるのだ。


「……はぁ、さて。食料は調達できたし、ここらで少しやるか?」


「うん。結界を張れば被害は出ないだろうし、いいと思う。」


「決まりだな。」


今日の本命は、模擬戦だ。


戦闘というのは、数値だけでは測りきれない


数値は、所詮数値に過ぎないのだ。


数値が高いから必ずしも勝つかと聞かれれば、100パーセント勝てないと言えるだろう。


どれだけ圧倒的な力を持っていたとしても、だ。


今まで俺が倒してきた魔獣やら神やらがそれを証明している。


肩に担いでいたショットガンを、手に持ち替えて構える。


シノも腕を武器に変換させて、戦闘の構えに入った。


「勝敗は?」


「白旗を挙げるまで。」


瞬間にお互いが地を蹴って、一気に距離を詰める。


そして、戦いはお互いの蹴りから始まった。


足と足がぶつかり合えば、人の肉体からはありえない轟音が鳴り響く。


「はっ!いってぇな、おい!」


「まだまだ、足腰は弱い。もっと鍛えた方がいい。」


「そうかもな!だが、俺の基本的な戦い方はスキルと武器であって、肉体ではないんだよ!」


ショットガンの発砲音とリロード音が連鎖的に鳴る。


「〝分裂、分散、追尾〟」


3発放たれた弾丸は、その声とともに60発分の弾丸となって、シノ目掛けて飛来していく。


「あまい。私にその攻撃が通用すると思ってる?」


ガガガン!とありえない速さで全ての弾丸が撃ち落とされた。


「嘘だろおい……」


「嘘じゃない。全て目の前で起こった現象。」


「なっ?!」


後ろに振り向いた時には既に遅かった。


俺の首元にシノの剣が突き立てられていた。


完璧に不意をつかれた、普通の人間なら致命的な攻撃だ。


俺とて、首を取られればどうなるか未だに分からない。


だから、これは俺の負けで間違いない。


「……参った。」


「分かればよろしい。」


変形させた腕を一瞬で元に戻す。


あまりに一瞬すぎる決着だ。


これが経験の差ってやつかね。


手も足も出なかった。


「私は生きている年数が違うから対人戦は慣れているとはいえ、ナナには無駄な動きが多いように思えた。」


「最低限頑張ったは頑張ったんだけどなぁ……。」


「無駄な動きが多いとその分対人戦は負ける可能性が多くなる。無駄な隙が生まれたりするから。」


「とは言ってもなぁ……。」


「対人戦スキルはあとからでも鍛えようと思えば、鍛えられる。そう急ぐことは無い。基本さえ分かれば、問題ない。」


そう言って、俺の隣に腰を下ろすシノ。


「その基本はお前が教えてくれるのか?」


「うん。旅をしながら、着実に覚えてもらう。でも、多分ナナはすぐに覚えられる。戦闘のセンスだけなら、私よりもすごく上。」


シノは間違いないというように、こくりと1回頷く。


こいつがここまで俺を買ってくれてるとはな。


まぁでも、悪い気はしねーな。


「……これからもよろしく頼むぜ?先生。」


「任された。必ず戦闘スキルは上げてみせる。」


「そうかよ。……よし帰るぞ。もういい時間だろうし。」


「わかった。」


そうして、俺らは帰路をまた辿り出した。


これから先、死ぬ気でやらなければ行けないことは山積みだ。


だが、こいつとなら多分なし得られる。


そんな気が、俺にはした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ