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第10話 新たなスキル

彼女が何かに集中しだして、約1時間が経過した。


今のところまだ何も変化は無い。


彼女はずっと集中したままその場から動く様子は無い。


そして、私は結界を貼ってモンスターから身を隠しているだけ。


一体彼女は今から何をしようとしているのだろうか。


この今の状況は、はっきりいって彼女にとったら非常事態のはずなのだ。


なのに、そんな中で彼女は希望を絶やしていない。


あくまで落ち着いた様子でいる。


だからこそ、不思議でならない。


何を考えているのだろうか。


どうこの状況を打開する気なのだろうか。


それに、あのデストロイ・ワームの頭。


なぜ、そんなものを彼女は持っている?


デストロイ・ワームはさっきも言った通り、フレドリリスと戦闘を行うために上へと出ていった。


もし、フレドリリスが勝利して、死体が出たのなら、その死体は本来フレドリリスが捕食していてもおかしくない。


まさか、彼女はデストロイ・ワームに単騎で挑んで勝ったのか?


最上級モンスターを人間である彼女が、討ち取ったのか?


だとして、彼女のその強さは本当に……神殺しを成し遂げようとするものということで……。


「…………ケイ。」


懐かしい名前をつい呟いてしまった。


昔に、ずっと昔に、私より早くあの世に行ってしまった彼。


絶対に迎えに来てくれると約束してくれた人。


「どうして……!」


叫びそうになったその言葉を、なんとか押し込める。


今ここで叫んでしまったら、彼女の邪魔をしてしまう。


だから、これはダメだ。


割り切れ。


今までだって、私が思うように行ったことなんて1度もなかったじゃないか。


いつだって、世界は無慈悲だったじゃないか。


もういい加減希望に甘えるのはよそう。


そうして、全ての思いを心に押し込んだその時だった。


「……できた。」


彼女の綺麗な声がその場に響いた。



スキルが出来上がった。


俺でも武器を作り出せるようなスキルと足りない材料を補うために物体に含まれる物質を変化させて、別の物体に変化させるスキルを作り上げた。


なかなかイメージして、作り出すというのは疲れるものだ。


頭を常時フル回転させて、集中しなければならないからな。


わりとデストロイ・ワームとかフレドリリスと戦った時並の疲労感に似ている。


と、横から声が聞こえてくる。


「できたって…何ができたの?」


眉をひそめて聞いてきたのは、シノだった。


周りを見れば、結界のようなものが貼ってある。


どうやら、本当に俺の事を守ってくれていたらしい。


そんな彼女にニヤリと口角を上げて言う。


「スキルが出来上がった。ここを脱出するために必要なものがな。」


言いながら、スキル取得一覧を表示して、あるスキルをスキルポイントで入手する。


そして、デストロイ・ワームの頭に手をかざした。


「よく見ておけ。これさえあれば、ここを出るのなんて夢じゃない。」


シノは真剣な眼差しで、俺の手元を見てくる。


「〝スキル・錬成〟」


瞬間だった。


デストロイ・ワームの頭が一気に形が変化していく。


少しすれば、そこにはデストロイ・ワームの頭ではなく、ひとつの鉱石が置いてあった。


「これが、アヴァルチウム鉱石か。」


それを拾い上げてまじまじと見る。


黒い光沢を帯びた鉱石。


試しに魔力を流し込んでみる。


すると、俺の流し込んだ魔力をアヴァルチウム鉱石は吸い込んで行った。


なるほど、魔力を流し込むとこんな感じか。


今流し込んだ量としては、上級魔法を1発打てる程度の魔力だ。


この程度でどれくらい固くなるのかだが……。


「おら!」


5割程度の力で地面に投げ付ける。


ガァァアン!という金属の金属がぶつかるような音がその場に響く。


「……こりゃすごい。」


白い煙を少し巻き上げているが、どこもかけてすらいない状態でアヴァルチウムはそこにあった。


たったこれっぽっちの魔力でここまで固くなるのか。


なら、俺の全魔力を注いだらどこまで固くなるのだろうか。


ショットガン以外の武器を作れるいい機会かもな。


思いながら、それをひろいあげる。


「それ、どうする?そこから武器を作り上げる?」


「まずはそうだな……。確かに武器が今は需要大か。このアヴァルチウム鉱石を掘れるような武器が欲しい。こいつはそれに使用する。」


アヴァルチウムを眺めてそういう。


そして、ふとそこで気づく。


俺がアヴァルチウムに流し込むための魔力をを行使しても四散されなかったのである。


この洞窟には魔力四散効果があるはずなのにも関わらずだ。


……考えられる理由としてはこの結界か。


「シノ、お前この結界どうやって張った?ここは魔力四散効果があるはずなんだが。」


「私には状態異常を無効化する機能がある。だから、魔力四散の影響も受けることない。魔力を問題なく行使できる。」


「なるほど。」


魔力四散の効果は状態異常に含まれるのか。


それで無効化スキルがシノにはあったためにこの結界を張れたわけか。


てことは、ここで今現状で作れる武器は作って置く他ない、か?


この先、鉱石を採取する中で最上級モンスターと遭遇することがあるかもしれない。


その時シノはいなく俺一人で相手をしなければならないことを考えれば、色々な攻撃手段が必要になる。


このショットガンと魔法だけではどうにもならない。


どんな武器にしたらいいだろうか。


掘るだけならもちろんピッケルでも問題は無い。


だが、どうせならそれも戦闘で役に立つような武器がいい。


個人的に、ショットガンだけじゃ攻撃パターンが限られる。


殴るか撃つ。


さすがにこれだけでは、攻撃パターンが少なすぎる。


神を倒す上で、色々な攻撃パターンというものは必要だろう。


あればあるだけ、色々なパターンで攻められる。


そうして少し考えて、結果あることに行き着いた。


「……大鎌…。」


大鎌なんてロマン……いや、実用性あるじゃないか!


近距離も出来て、魔法を応用すれば中距離、遠距離も簡単に出来る。


いいな……それはいいな……。


「よし、大鎌をこれで作る。」


「お、大鎌って……ここを脱出するなら、それよりもピッケルとかの方が…。」


「いや、大鎌でいいんだ!大鎌が、いいゆだ!!素晴らしいだろう?!。」


「ひゃい?!そうです、ね…?」


俺の迫力に圧されたのか、疑問符を浮かべて返事を返してくるシノ。


しまった。


つい興奮して大声を上げてしまった。


ごほんっとひとつ咳を着いて続ける。


「それにここを直ぐに出る気なんて、毛頭ないさ。」


もし、地上に出たとして、恐らくゼルセオスと戦うことになる。


この森があいつの作りだしたもので、この森で起こること全てを見通すことができるなら、俺がここから出たこともわかるはずだろうしな。


そうなれば、今の俺に勝ち目は無い。


だからこそ、この洞窟内で俺は自身を強化する。


あげられるところまで上げてやる。


「俺はここでレベル上げかつ武器作成をする。」


「まさか、ゼルセオスと戦う気?」


「戦う気も何も、奴と戦うことは避けられない。ここに閉じ込められた時点でその道しか選択肢がないんだよ、俺には。」


俺はここで死ぬわけにはいかない。


そのためには自身を強くするしかないのだ。


そしてやつに勝つには、俺の攻撃パターンがあまりに少なさすぎる。


この洞窟でそれも込みで作り上げていくしかないのだ。


まぁでも、そんな中で俺はなかなか運がいい。


資源も多量にあれば、その資源を採掘したりするための武器も作ることが出来るんだ。


「くくく……この世界での人生は今のところなかなかのヌルゲーになってんなぁ。」


後悔しろ、ゼルセオス。


俺をこの洞窟に閉じ込めてしまったことを。


あの時、あの場所で俺をしとめきれなかったことを。


神の柱だかなんだか知らねーが、完全に準備を整えられた俺の前に立つには力不足だということを、その身に味あわせてやる。


ニヤリと口を裂くようにして口角を上げる。


あの腹立つ声を悲鳴に変えるのが楽しみになってきてしまった。


さて……始めようか。


調子に乗った自称神の柱への宣戦布告だ。


「〝スキル・武器創造〟」


そう唱えれば、アヴァルチウム鉱石の形が変化していく。


大鎌のイメージはもう既に出来上がっている。


あとは形さえ整えてしまえば……


変形が終わり、俺の手には黒い光沢のある大鎌が握りしめられていた。


柄は長く、鎌の部分は大鎌と言うくらいであるから、大きくスラッとしている。


「すごい…一瞬で鉱石を武器に……。」


「まだ、魔力を流し込んで強固に出来るだけだが、これからこの洞窟の鉱石類を採取していくんだ。その間に強化が入るだろうし、上出来だ。」


ブンブンと大鎌を振り回す。


振りにも問題は無い。


さすが小一時間かけて作っただけはあるな、〝スキル・武器創造〟。


精密に作ることが出来た。


「早速掘っていこうか。」


自身の持っている魔力の半分くらいを武器に流し込んでいく。


どの程度までかたくすれば、こいつを掘ることが出来るのかね。


「そらよっと!」


大鎌を横から振り抜く。


と、同時にガアン!と言う金属音が響く。


「……おれの魔力の半分適度じゃぁ、傷ひとつつかねーか。」


全魔力を込めないとこの壁は壊せない。


ただ、全魔力をこいつに込めたらさすがに自殺行為というものだ。


いつ最上級モンスターが襲ってきてもおかしくないんだからな。


ただ、かと言ってこのままじゃぁ鉱石採取なんて無理がある。


表面にあるこのアヴァルチウム鉱石を壊せない以上、中に埋まっている鉱石を採取するなんて、何らかの魔法でもない限り不可能だからだ。


「ちっ、どうしたもんか……。」


すると、クイッと服を引っ張られる感覚があった。


後ろを振り向けば、シノが大鎌を見ながら聞いてきた。


「私が、魔力流す?」


「いいのか?」


「ん。私なら多分、この壁の硬さを超えるくらい固くできる。」


「なら、よろしく頼む。」


大鎌をシノに渡す。


それをシノは受け取って、目を瞑った。


瞬間に白い魔力の放流が始まる。


凄まじい魔力だった。


長年練り込まれた魔力の安定した放流。


こんなに安定した魔力の放流なんて、今の俺には不可能だ。


どうやったらこの領域に到達できるのか。


そんなことを考えていると、少しずつ白い魔力の放流が収まっていっていくのがわかった。


どうやら、もうすぐ終わるらしい。


そして少しして、ゆっくりとシノが目を開ける。


「……できた。」


「早いな。もうできたのか?」


コクリと首を縦に振って、大鎌を手渡してくる。


「これで、この洞窟の壁を壊せると思う。けど、壊しても直ぐに修復が始まる。それはどうする?」


「あぁ、それは問題ない。デストロイ・ワームが、この壁の修復を抑えることを可能にしたスキルを、こいつに付与すればいいだけだしな。」


「スキルを付与?」


「そう、こうやってな。〝スキル付与・腐食、超速再生、耐久、物理攻撃力アップ〟」


ポウっと淡い光を放つ大鎌。


これで完了だ。


試しに武器のステータスを見てみる。



テスタメント・アンダー・テイカー(最上級)

s 251354


スキル

超速再生(最上級)、腐食(最上級)、耐久(最上級)、攻撃力アップ(最上級)



「こんな感じだ。」


ステータス画面をシノに見せる。


すると、それを見たシノが目を見開いて驚いていた。


「本当にスキルが加わってる。しかも、全て最上級…。あなたと会ってから驚くことばかり。何者?」


「ただの通りすがりの人間だよ。」


ステータス画面を閉じながらそう言いながら、担いでいたショットガンを取り出す。


そして、そのショットガンのステータス画面を表示する。


ショットガン(最上級) Lv500「成長型アーティファクト」

s+ 1235129.0

v+ 952134.0

a+ 1035219.0

m+ 1051229.0

mv+ 849893.0


スキル

破壊不能、分裂、分散、追尾、全ステータス×2倍


武器スロット

1.ショットガン

2.

3.

4.

5.

6.

7.


レベルアップを重ねたことで、どうやら新たな欄が追加されていた。


武器スロット、ということはここの欄に武器を入れられるってことだろう。


そして、自由に持ち替えが可能?ということだろうか。


1度やってみないことには分からんな。


ショットガンと大鎌を重ねる。


ただ、それだけでは何も起こらない。


「ふむ……〝武器スロット追加・テスタメント・アンダー・テイカー〟」


瞬間に、大鎌がショットガンに溶け込むようにして消えた。


すると、ステータス画面の武器スロットにテスタメント・アンダー・テイカーの名前が追加される。


あとは、これを使用できるかの問題か。


「〝テスタメント・アンダー・テイカー〟」


ショットガンが形を変え、テスタメント・アンダー・テイカーへと変化した。


こうやって使い分けをするわけか。


これならいちいち異空間収納から取り出す手間も省けて、実用性もある。


「……さて、そろそろ潜りに行っても問題ないか。」


「潜る?もしかして、地下に?」


「その通りだ。鉱石はここでも取れるかもしれんが、ここだとモンスターが少し弱いからな。地下ならモンスターも強いのが多そうだしレベル上げもできて丁度いい。」


「でも、最上級モンスターは強い。ここの洞窟のモンスターはほとんどが1000を超えてる。危険すぎる。」


「危険を承知で行くんだ。それに結局ヘラを倒すためにゃ死地を乗り越えにゃならん。今更だろう。」


俺は一応、上の方でデストロイ・ワームとフレドリリスと戦って勝っている。


いつ死んでもおかしくないような戦い方だがな。


そういう風にレベル上げできるよう、俺は転生前にスキルを選び抜いた。


すなわち、ゾンビ戦法である。


致死の攻撃を受けても超速再生により、生き残ることが出来、しかも相手のスキルを取ることもできる。


こうして、今までも勝ってきた。


そう思いながら、シノに向き直る。


「……まぁなんだ。短い間だったが、助かったよ。」


言って、体の向きを変える。


その時だった。


「私も、行く。」


シノが俺の手を引いて、そんなことを言ってきた。


「……待ってる奴がいるんじゃないのか?」


「いる。だから、ゼルセオスを倒すまでは手伝う。」


「それなりに先になるだろうし、相手はそれなりに強い。死闘になる可能性が高い。それでもいいのか?」


「大丈夫。私もそれなりに長く生きてる。その程度、どうということは無い。」


真っ直ぐにそう言うシノと少し視線が交差する。


しばらくして、口を開いたのは俺だった。


「…………わかった。よろしく頼むよ。俺はナナだ。」


「ん、よろしく。」


そうして俺たちは互いの手で握手を交わすのだった。

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