PART1:始まりの日
初めて書く小説なので色々変だと思いますが、よろしくお願いします。
「今日から四課でお世話になります。アレン・ブレイズです!よろしくお願いします!」
警視庁特殊犯罪対策部第四課、いつ見てもいかつい部署名に緊張しながら挨拶する。
この瞬間はいつも慣れない。僕、アレンは不安と期待に包まれ、今日からこの四課に配属された。
拍手が返ってくる。どうにか失敗せずに済んだらしい。動悸がうるさくなってきた。
「それでは、アレンの教育係だが...ダフネ。お前に担当してもらう。」
「私か」
今しがた指名された、黒髪のきれいな女性職員が歩み寄る。
「ダフネ・イージス。君の教育係だ。仕事に慣れるまで、どんなことでも聞いてくれ。」
よろしく、と差し出された手を軽く握り、よろしくお願いします、と返す。
(よかった、優しそうな先輩がいた...)
警視庁本部、それも危険任務の多い四課での仕事ともあって自己紹介時からだいぶ胃がキリキリしていた僕はほっと胸をなでおろした。
「あっ!私も自己紹介するー!」
明るい声もダフネ先輩に続き、自己紹介を始める。少し穏やかになってきた部署の雰囲気に、とりあえず悪くは思われていなさそうだ、とようやく少し肩の力を抜いた。
さて、この四課とはいったい何をする部署なのかというと、「ダストデータ」の処理をし、市民の生活の安全を守ることが業務の部署である。
この世界は「SEP」と呼ばれる技術で、実際の身体と精神を分けて、インターネットの世界で現実に限りなく近い世界を再現して成立している。精神はアバター内に入り、人間のように生活している。
現実の肉体とSEP内の肉体とはリンクしているため、見た目などは簡単に変えられず、SEP内部の精神アバターが死ねば現実の肉体の精神も破壊され、廃人状態となる。
様々なものがプログラムされたホログラムとして再現され、近頃は子供まで再現して育てることができるという。
しかしそれだけ多くのデータが集まれば当然うまく読み込まれないことも多く、そうしてホログラム内部に生じてしまうバグはアバターに危害を加えることもあり、放置できない。
この悪性データが「ダストデータ」であり、私たち四課が処分すべき社会のがんである。
「...ってことなんだが...聞いてるか?あんたたち」
「ふぁっ!?おはようございます、じゃなかった!聞いてます!」
「完全に寝てただろう、もう...」
たった今居眠りをしていたのがミリア・レイスター。僕の一つ先輩で、後方支援が主な仕事。
元気で明るい今どきの女の子だが、若干毒舌。今は完全に寝てたし何ならダフネ先輩にバレてた。
「まあとにかく、戦闘が主な仕事である以上、危険な業務も多い。怪我や入院も増えるだろうが、我々も全力でサポートする。何かあったらいつでも言ってくれ」
「僕たちデバッガーは特に警視庁内でも不人気な職種でな...そうだ、食堂やトレーニングルームもあとで案内しよう」
この頼もしいお二人はサイラス・クレーシュさんとハイル・ブルーフォールさん。
サイラスさんはこの四課の課長を務める方で、寡黙ながら誠実な方だ。...若干天然が入っているが。
ハイルさんはミリアさんのさらに一つ先輩で、僕にとっても先輩に当たる。真面目で几帳面、少し四角四面ではあるが、責任感が強い、頼れる先輩だ。
「まあ、最初はみんな初心者だし、個人には個人のペースがあるからね!ゆっくり覚えていこう!」
「そうだな、カレンも最初は書類の処理が全く終わらなくて私やハイルに泣きべそをかいて...」
「ちょ、ちょっとぉ!?」
こちらはカレン・アクシズさん。非常に可愛らしい女性の先輩で、ミリアさんととても仲が良さそうだ。
こう見えてバリバリの武闘派らしいが、俄かに信じがたい...
そして、先ほど挨拶させてもらったダフネさんは、凛とした雰囲気や軍人さんのようなきびきびした口調ながらなかなか冗談も言うお人のようで、かなり話しやすい。
「そういえば、ツールはもう決めたのか?」
この方はシュウ・クリアコールさん。クールで物静か、あまり人に興味がないようで、いつも本を読んでいる人だ。
しかし、部署まで来る途中に迷ったところを助けてくれたりもしたので、多分根は優しい方なんだと思う。今はダフネさんとシュウさんに僕たちの部署のことや業務について聞いていたのだが...
「ツール、ですか?いえ...まだだと思います」
「そうか、じゃあせっかくだ、今決めるか?」
ついてきてくれ、と促されサイラスさんについていくと、地下の倉庫のフロアに出た。
「ダストデータはデータ内のバグが処理されず、大きくなって悪性化したものだ。これは大丈夫か?」
「はい、大丈夫です!」
「よかった。では、バグを修正する俺たちデバッガーはどのようにダストデータに対応する?」
「えーっと...まずシステムの自己防衛プログラムを無力化して、それからデータのコードまで到達して、それから...データの修正プログラムを上書きするかデータそのものを削除するか、でしたよね?」
「正解だ。ツールはその自己防衛プログラムの無力化とデータ修正に使う、修正や無力化プログラムを装填するもの、武器のようなものだな。」
会話しながら階段を降りる。倉庫内を下るにつれ、だんだん気温が下がっていく。
「着いたぞ、ここから自分に合いそうなツールを選んでくれ」
着いたそこには無数の武器がラックにかけられ、使われる日を静かに待っていた。
「わぁ...こんなたくさんあるんですね、剣に槍にボウガン、うわ、吹き矢とかある...」
「吹き矢...使えるのか、これ...」
「あるってことは使えるんでしょうか...」
様々なサイズ、装飾のツールたちをざっと見ていく。たくさんの武器の山を流し見ていた時、ある剣に目が止まった。
「あの、サイラスさん。この剣って...」
「ん?ああ、それはフランベルジュだな。普通の剣より止血がしにくく、傷の治りが遅いそうだ。」
少し扱いにはコツがいるが、試してみるか?とかけられた声に頷く。
だいぶ鞘という概念を拒んでいそうな剣だが、確かにこの剣は記憶のあの剣だ。
10年前のあの時、僕を助けてくれた、あの人の使っていた剣。軽く振るってみると、思うよりも重くしっかりしている。
改めて四課のデバッガーとして、あの人のようになるという覚悟を再確認した。
ご閲覧いただきありがとうございました。
猫派ですか?犬派ですか?ハムスター派ですか?