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令嬢と僕と騎士  作者: 八雲 春
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昼休み後の授業ほど心地よい眠気の時はない

キンコンカンコン。




始業のベルが鳴り響く。

軽く夢現で心地良い気分を邪魔されたおかげか、少し顔を顰めたが、ノロノロと座席から立ち上がる。


「授業始めるぞ。委員長。」


既に教室に入っていた教師が指示を飛ばし、皆で礼をする。


「…しゃーす。」


気の無いような挨拶だが、これも仕方ないだろう。

なにせ、こちらは眠いところを叩き起された被害者なのだ。


「…じゃあ授業始めるぞ。テスト前だからって課題とか今やるなよ。」


ムス…とした顔の数学の教師は黒板にページ数を書き始めると、淡々と授業を始める。


コン、コンと黒板に数列を書いていく音、何故かは分からないが落ち着く先生の声。


僕は抗えずにコクリコクリと夢の世界に旅立つのであった。


さて、今日はどちらの(・・・・)世界に行くのだろうか。




-------------------------------




「…---。………---?」



「…---、聞いているのですか?」


ビク、と身体を反応させ、声の主の方を見る。

そこには淡い水色のドレスを身にまとい、こちらをジト目で見つめる金髪碧眼の美しいお嬢様がいた。


「は、はい、もちろんですわ。今週末のお出かけのことですよね。とても美味しいと噂のケーキ店に行くのは素晴らしいことだと思います。」


少し慌てたように返事をすると、目の前の美少女は少し溜息をつきながら紅茶を少し口に含む。


「聞いているならば良いでしょう。しかし、いくら学院内だとしても、目上の方の前でその態度は不敬となることがありますよ。気が抜けすぎですわ、---。」


まあ、私と二人きりの場ならいいんですけどね、と少し嬉しそうな感情を隠せずに軽く説教をする私の友人であるアリアナ第二王女殿下はお付きのメイドに追加のクッキーと紅茶を持ってくるように伝えた。


「さて、他に行きたいところはあるかしら、---。」


「はい、そうですね…。…あ、魔道具ショップなどはどうでしょう。魔力圧縮機がもうすぐ壊れそうで、新調したいんですよね。」


「…はぁ、一応は一国の王女を買い物に付き合わせようだなんて、流石は変わり者伯爵令嬢の---ね。」


呆れたように、そして愉快そうにこちらを見ると、アリアナ殿下は湯気が立つティーカップを口に運んだ。


「あっいやっ、アリアナ殿下とお買い物行きたいなって…。」


「…殿下?」


「…アリアナ…。」


「仕方ないわね。良いでしょう、魔道具ショップにもいきましょうか。」


何故か二人きりのときは名前を呼び捨てすることを強制されている私は抗いきれずに名を呼ぶと、彼女は気分が良さそうに魔道具ショップ行きを許可してくれた。

これは楽しい週末になりそうだ。

心を踊らせながら、週末に予定を組み立て━━━


「で、小鳥遊(たかなし)。気持ち良さそうに寝ているところ申し訳ないが、後ろに立ってろ。」



-------------------------------


「おい、(じん)。起きろって。」


ゆさゆさと揺すられながらうっすら目を覚ますと、彫りの深い笑顔でこちらを見つめる数学教師の見えないほど細くなった瞳と、僕の寝起きでぼんやりとした見えないほど開けられていない瞳が交差した。


「…すみません。」


のっそりと立ち上がるとクスクスというクラスメイトの笑い声が聞こえる。

奥の和田くんとかめちゃくちゃ寝てるじゃないか。どうして僕だけ。ちくしょー。


「…はい、腹いっぱいで気持ち良く寝てたやつはほっといて授業進めるぞ。」


僕を立たせることで満足したようで、先生は授業を再開した。

生贄は僕だけのようで、ニヤニヤとした仲のいい友人の目線がチラチラと映り込む。

うぜー、次の休み時間で弄られるやつだ。


バレなかったら、可愛い王女様との会話をもっと楽しめたのにな。

そう思いつつ、夢の中のお姫様の拗ねた顔を思い浮かべた。


そうしてこの授業中は、終業のチャイムが鳴り、足が痺れるまで、立ちながらノートに黒板の文字を書き写すのであった。


-------------------------------




「仁、お前爆睡しすぎだろ。」


「うるへー」


雑に返事を返すと笑いながら話しかけてくる友人の海里(かいり)に痺れた足を突っつかれる。


「おああ…痺れてるの知ってて…」


恨めしがましくヤツを睨むと、ケラケラと笑いながら少し距離を取られた。

射程範囲外だ。上手いこと逃げやがって。


「…次移動教室だっけ。早く行こうぜ。」


話を変え、痺れる足を踏ん張って移動の用意をすると、海里はふと思い出したかのように聞いてきた。


「そういえば、昔から言ってた変な夢を見るってやつ。今もまだ見るのか?」


「…いつの話だよ。そんなんもう知らねーよ。」


「そっか、じゃあ急いで行こ。足痺れ仁さんよ。」


海里は再度僕の足を刺激すると、逃げるように早足で教室を出ていった。

後で覚えとけよ。


「変な夢か…。」


誰もいなくなった教室から窓の外をみる。

するとカラスが木から飛び立つのが見えた。


「…まあ、まだ見てるんだけどな。」


一言呟くと、重たい足を動かして移動教室へと向かった。


そう、この僕、小鳥遊 仁は。





夢の中で異世界の人の生活を見ている。

書きたくなったら続きを書く可能性があるので、よろしくお願いします。

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