プロローグ
今回は物語の発端となる主人公の婚約破棄の話です。
「ラミナ嬢との婚約破棄を宣言する」
皇家主宰の夜会で馬鹿が婚約破棄騒動を起こした。
私の祖国では婚約破棄が流行っている。
今月に入ってから、これで三人目だ。
本当に懲りない連中ね。
いい加減にして欲しいと、心の底から思った。
事の始まりは私の婚約破棄だった。
【回想開始】
「シャルル、いい加減にしてくれ。何度デートをドタキャンしたと思っているんだ」
「申し訳ありません」
私はウドャシ男爵家の令嬢シャルル。
クラツボ子爵家子息カルマンからデートをドタキャンしたと怒られている。
実はウドャシ男爵家には皇家の影という極秘の任務がある。
カルマンとのデートをドタキャンしているのは任務の為だ。
しかし既に三十六回もドタキャンしている。
このままでは婚約破棄を突き付けられるかもしれない。
「貴女は私を馬鹿にしているのか。それとも蔑んでいるのか」
「馬鹿にしていませんし、蔑んでもいません」
「もうウンザリだ。貴女は勝手にしたまえ。私は帰る」
カルマンはキレてしまい、シャルルは放置されてしまった。
「私はウドャシ男爵家令嬢シャルルとの婚約を破棄する」
遂にカルマンから婚約破棄を突き付けられた。
「理由は真実の愛を見つけたからだ」
理由は真実の愛とかいう、馬鹿馬鹿しい内容だった。
「そしてウツフ子爵家令嬢ミモザと新たに婚約を結ぶ」
更にミモザ嬢と新たに婚約を結ぶという、戯言を言い出した。
「私は貴方となんか婚約なんかしません」
ミモザ嬢が大声で婚約を否定した。
「何を言っているんだ。あんなに愛し合ったじゃないか」
「愛し合ってなんかいません。貴方の妄想に巻き込まないで下さい」
どうやらカルマンの独りよがりの妄想だったようだ。
カルマン様は救いようの無い愚か者だった。
シャルルはカルマンを完全に見限る決心をした。
「分かりました。婚約破棄をお受けします。但し貴方の有責でね」
シャルルは婚約破棄の受諾とカルマンの有責とする事を突き付けた。
「ふざけるな」
カルマンが文句を言い出した。
「カルマンの有責なのは当然だね」
「きちんと責任を取りなさい」
しかし周囲の子息や令嬢は私に賛同してくれた。
「・・・・」
ようやく周囲の状況に気付いたらしく、カルマンの顔色が真っ青になった。
カルマンは貴族籍の剥奪と実家から絶縁を言い渡されて、平民になってしまった。
【回想終了】
「また馬鹿が現れたわよ」
「同じ貴族として恥ずかしい」
周囲の令嬢や子息が馬鹿を小声で非難している。
しかし馬鹿は周囲の状況に気付いていない。
「何の騒ぎだ。静まれ」
イケビ皇太子が会場入りして、騒ぎを納めた。
元凶の馬鹿は地下牢に投獄されて、国外追放になった。