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◆第34話◆ 『宝石級美少女の頭ナデナデ』


「私は、そういうことを言いたかったんじゃなくてっ。そのっ。そのぉ」 


「あぁごめんごめん。ちょっと心の声が漏れた......」


「うぅ......」


 あたふたとしながら顔を真っ赤に染める星宮。一応庵は星宮に謝るも、先ほどの星宮の発言はどう考えてもやらしいようにしか考えられなかったので正直混乱をしている。


 星宮が目の前で恥ずかしがってるのは、見てて居たたまれない気持ちになってしまうので、とりあえず誤解を解いておくべきだ。


「それで『私がご褒美になる』ってのはどういう意味なんだよ」


 そう聞くと、星宮は目を逸らしながらもじもじとしてこう答えた。


「その......頭よしよしとか、撫で撫でとかしてあげようと思ったんです」


「いやそれどっちも同じ意味だろ。というかなんで頭よしよしなんだ」


「私は頭を撫でられると嬉しいので、天馬くんも撫でられたら嬉しいのかなーって思いました」


「......なるほど」


 という星宮の思考を聞いて、思わず庵はごくりと喉を鳴らした。そして心の中で思う。


「いや可愛いな」

(いや可愛いな)


 あ、となる庵。さっきやらかしたばかりのミス。再び心の中で思ったことがつい言葉になって口から放出されてしまった。その放出された言葉は確かに星宮の耳に届く。


「っ。そ、そんなこと言うなんて天馬くんらしくないですね」


「......あ。いや、その......口が滑った」


「そう......ですか」


 またもや羞恥心を刺激されることとなった二人。庵は頬をぽりぽりと掻いて口を滑らせたことに後悔し、星宮は庵からの初めての面と向かって言われる誉め言葉に顔を赤くしていた。


 気まずい雰囲気になってしまったので、庵は「あーっ」と唸って恥じらう星宮に視線を向ける。


「別にそんなに恥ずかしがる必要ないだろ。星宮なら容姿を誉められることくらい慣れっこだろ?」


「そんなわけないですっ。......そんなの、時と場合と人によるじゃないですか」


「......時と場合と人?」


 星宮の言っていることが理解できず、庵は小首を傾げる。疑問符を浮かべる庵に、星宮は顔を赤らめたままこう教えてくれた。


「確かに私は中学生の頃、色んな人から色んな言葉をもらいましたよ。でもその言葉はみんな軽いんです。何様って思われるかもしれませんが、本当にみんな気持ちがこもってないというか......軽いんですよ」


「あぁ、なるほどねぇ」


「でも天馬くんは私の彼氏さんでしょう? そんな人が面と向かって真顔で『可愛い』なんて言ってきたら恥ずかしいに決まっています......私は一体何を解説してるんですかっ」


 急に冷静になってしまった星宮は更に顔を赤らめて、ついにそっぽを向いてしまった。どうやら今の星宮はちょっと落ち着きがないらしい。冷静さを欠いている。


「......まぁ言いたいことは分かったよ。迂闊な発言してごめんな。次からは気をつける」


 そう短く謝罪すると、星宮はちらりと庵の方に顔を向けた。


「別に嫌じゃなかったですし、気にしなくていいです......本当に気にしなくていいですよ」


「お、おう」


 謎に念押しをしてくるので、庵は星宮の言葉の真意が分からず苦笑してしまう。すると、星宮が急に体の向きを庵の方に戻して真っ直ぐに視線を合わせてきた。


「そういえば今日のテストの58点のご褒美をしてあげましょうか?」


「えぇ......ちょっと答えにくいんだが。というか星宮がやりたいの?」


 急にそんな提案をする星宮。珍しく自分からぐいぐいとくる姿勢に若干驚くが、星宮の表情は意外にも真剣そのものであった。


「やりたいというより、やってみたいですかね」


「やってみたい......?」


「はい。やってみたいですっ」

 

 目を輝かせて前のめりになってきた。庵は頬をぽりぽりと掻いて、少しだけ頭を悩ませる。


 普通に考えればこれは素晴らしいチャンスなのかもしれない。何せ、誰もが認める宝石級美少女から頭撫で撫でしてもらえるという夢のようなシチュエーションを無償で味わえれるのだ。


 しかし、その絶好のチャンスを庵のくだらない微量なプライドが邪魔をする。高校生にもなって頭撫で撫でされるなんて恥ずかしいという思考に至るのだ。


「......うーん」


 どう答えるか葛藤する。しかし答えを出す前に、何か柔らかい感触が庵の頭に乗っかってきた。


「今回のテストはお疲れ様でした。次も一緒に頑張りましょうね」


「あっ」


 甘い声と共に庵の頭を無断で撫で始めた星宮。その優しい手の動かし方に庵は硬直してしまう。突然胸の中で溢れかえるプラスな感情。それは、みるみると庵の心に空いた隙間を埋めていったのだ。


 星宮と目を合わせられない。今は頭を撫でられていて恥ずかしいから、という理由もある。でも、他にも何か理由があるのだろう。

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