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◆第17話◆ 『宝石級美少女はゲームに興味があります』


 ◆天馬庵&星宮琥珀カップルの交際ルール◆


 ・過激なスキンシップ(キスやハグなど)は禁止。手を繋ぐといった行為は許容範囲


 ・デートは週二回、庵の家で行う。基本的に水曜日と土曜日(庵のバイト日程や星宮の部活動日程を考慮した結果)


 ・交際関係は二人だけの秘密。誰であっても口外しない


 ・お互いを信じる。何か意見があれば遠慮せずに直ぐに言う



***



「ざっとこんなところか......」


 大体のルール作りを終えた庵は大きく伸びをして息を吐く。星宮と何度も意見を交わした結果、四つのルールが完成した。細かいルールはこれからまた作っていけばいいので、主軸はこの四つのルールとなるだろう。


 遂に完成した二人のルール。お互いの行動を縛りすぎない程よいルールが作れたのではと庵は満足する。


「というわけだから星宮、俺に何か文句があれば遠慮なくいくらでも言ってくれ。身だしなみがダサいとか、視界に入らないでくれとか、キモいとか、どんなことでも言ってくれれば善処する」


 少し冗談めかして言ってみると、星宮がほんのり頬を膨らせる。


「そんな酷いこと言いませんっ。私は今の天馬くんに文句は一つもないですよ」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。俺も今の星宮に文句は無いぞ」


「......ありがとうございます」


 紆余曲折とあったが、今日の本題であるルール作りは無事に終えられた。玄関で会ったときは一時的に気まずい雰囲気になってしまったが、それ以降は手を繋ぐことができたり会話のキャッチボールができたりと順調だった。終わりよければ全て良しというべきか、気まずいまま解散することにならなくて本当によかったと思える。


「んじゃ、用事も済んだし今日はもう解散するか」


「そうですね。もうすぐお昼だし、解散しますか」


 気づけば時計の針は十一時半を指していた。庵ももうすぐ昼御飯の時間となるので解散するには良い頃合いだろう。


「それじゃあ母さんに気づかれないようにこっそりと......って、星宮どうした?」


 庵がお見送りをしようと立ち上がるが、星宮は何やら別の方向に視線を向けていた。その視線の先はゲームなどが収納されている小さなカゴだ。


「天馬くん。これ、なんですか」


「これって......ああ、これか。俺のゲーム機だよ」


「ゲーム......」


 庵が説明すると、星宮は好奇心に満ちた瞳でゲーム機を見る。まるでゲームを見るのが初めてかのような反応だ。


 せっかく星宮がゲームに興味を示してくれたので、庵は一つ提案をしてみる。


「ちょっとしてみるか? ゲーム」


「えっ。いいんですか?」


「別に減るものでもないしな。それに昼御飯までまだちょっと時間あるし」


「少しやってみたいですっ」


「分かった。ちょっと準備するな」


 目を輝かせる星宮。何気にこんなわくわくした星宮を見るのは初めてな気がする。


 庵はカゴの中からゲーム機(任○堂ス○ッチ)とカセット、二人分のコントローラーを取りだし、それをテーブルの上に持っていく。ゲーム機本体を立たせるスタンドも置けば準備万端だ。


「はい。コントローラー」


「お、大きいですね。このボタンみたいなのは押しても大丈夫ですか?」


「そりゃな。押さなきゃ操作ができないぞ」


「難しそうです......」


 コントローラーを受け取った星宮は、整った眉を寄せながら庵のコントローラーの持ち方を見よう見まねで真似る。ちょんちょんとスティックを弄ったり、ボタンをポチポチと押したりする姿は見ててとても愛らしい。


 星宮の健闘を横目に、庵はメインであるゲーム機本体を起動させる。ホーム画面へと移動し、沢山のゲームがずらりと表示された。


(......さすがにこれはハードル高いか? まぁ、俺がわざと負けてあげればいっか)


 庵が選んだゲームは、歴代の人気キャラクター達が大乱闘する超人気格闘ゲームだ。このゲームは初心者には厳しいかもしれないが、庵がレクチャーしてあげれば星宮でもある程度のプレイはできるだろう。


「わぁ......すごいです。スマホを大きくしたみたいですね......」


「今はこれが主流だからなぁ」


 隣で感嘆の声を漏らす星宮。情報量の多い画面に星宮の目は釘付けになり、少しだけ前のめりな体勢になっていた。興味津々な様子に庵も少し嬉しくなってしまう。


 庵は手慣れた操作で直ぐに対戦モードに切り替える。そうすればついに星宮がコントローラーを動かす番だ。


「星宮、この中から好きなキャラを選んで」


「えっ、えっと......どうコントローラーを動かせばいいのかが......」


「あぁ、その使い方は――」


 星宮は困惑した様子で手に持つコントローラーとにらめっこをしていた。苦戦している様子なので、庵は自身のコントローラーを見せてそれぞれのボタンの役割を教えてあげる。完璧には理解しきれていないものの、とりあえずの基礎的な動きはできるようになるまでは成長した。


「あ、じゃあ私はあのお姫様みたいなキャラクターを使いたいです」


「おっけー。それじゃあスティックを動かして、カーソルをそいつに合わして」


「こう......ですか?」


「そうそう。そしたらAボタンで決定する」


「あ、できました! できました天馬くん」


「おぉっ。上手いな星宮」


 まだ試合が始まったわけでもないのにとても喜んだ様子を見せる星宮。その子供っぽい反応と笑顔が眩しくて庵は少し照れてしまう。今は星宮が庵のすぐ隣にいるため、いつもより増して心臓の鼓動がうるさくなっていた。


「それじゃ、始めるぞー」


「は、はいっ」


 画面を操作して試合がスタートする。緊張した面持ちの星宮がぎゅっとコントローラーを握りしめた。


(よし。ここからはわざと攻撃を外し続けて、星宮に勝たせ――)


 なんてことを考えている間に星宮のキャラクターは画面外へと墜落していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おうちデート、いいですねぇ!
2022/12/30 17:56 退会済み
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