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◆第12話◆ 『宝石級美少女がまた家に来るそうです』


 星宮と食事をした日の夜のとき、庵のスマホが振動した。


「......」


 庵は漫画を読んでる最中だった。深く考えずに地べたに転がっているスマホを片手で掴み、通知を確認する。そしてホーム画面に表示された通知内容を見て、持っていた漫画を放り投げた。


「星宮、か」


 表示される星宮からの『一件のメッセージ』表記。星宮からのメッセージはこれで二回目。庵はアプリを立ち上げ、その内容を確認した。


『夜遅くにごめんなさい。もしよかったら、明日天馬くんの家に行っていいでしょうか?』


 そのメッセージを見終えてから庵は部屋のカレンダーを確認する。明日は土曜日だった。


「うぐぅ......嬉しいような嬉しくないようなぁ......」


 星宮と休日に会えるということ自体は男として嬉しい。しかし庵としてはまた気まずい雰囲気になるんじゃないかと不安になる。


 今日はガトーショコラの力で雰囲気はとても良かったが、次も良い雰囲気になるとは限らない。一度の成功だけではまだ星宮との対話に自信を持てないのだ。


(あぁっと、俺の部屋なんかあったっけ。ほとんどマンガとゲームしかなかった気が......)


 二人で何かしようにも、星宮が好みそうな物は庵の部屋には無い。本棚にびっしりと詰まったカラフルな漫画の背表紙が沢山見える。冷静になって見てみれば、庵の部屋はオタクの部屋だ。


 それを確認したところで庵の思考にストップがかかる。


(いやちょっと待て。俺はなんで星宮と遊ぶ前提で話を進めてんだよ)


 星宮は『明日天馬くんの家に行っていいでしょうか』としか言っていない。勝手に星宮が庵の部屋に遊びに来ると解釈してしまったことに対し、「疲れてんな、俺」と恥ずかしさを紛らわす溜め息をついた。


 冷静になった庵は星宮とのチャット画面を操作する。


『何か用か?』


 短い言葉で送信。返信はすぐに返ってきた。


『私と天馬くんが交際する上でのルール作りみたいなのをしたいと思ってます』


 簡潔に用件を言う星宮。やはり遊び目的ではなかったらしく、庵は乾いた笑い声を出す。


「ははは......んで、交際する上でのルール作り、か」


 よく分からないがとても重要そうな内容な気がしなくもない。交際のルールを作るなんて堅苦しいと思うかもしれないが、庵と星宮はお互いに恋愛感情が無いので、やっていいことといけないことの線引きをするのは必要なことだろう。


『分かった。明日の午前に家に来てくれ』


『ありがとうございます。十時くらいには到着できるようにしますね』


 というわけで二人は休日に庵の部屋に集まることになった。気まずくなるのは不安だが、特に断る理由も無い以上仕方ない。それでも、今日の一件で星宮との距離が少し縮まったので、前よりかは緊張を解せて話せるだろう。


『おやすみなさい』


 ぶるんとスマホが再び振動したと思えば、星宮から、可愛いスタンプと共にそんなメッセージが届いていた。庵はそのメッセージを見て目を細める。他の男子なら星宮からおやすみメッセージを受け取っただけで鼻血を吹くだろうな、なんてくだらないことを考えてしまう。


『おやすみ』


 庵が返信して星宮とのメッセージのやり取りは途絶えた。ふぅと大きく溜め息をつく。星宮とメッセージでやり取りするだけでとても神経を使うようだ。

 

 謎の脱力感に襲われて、庵はごろんとベッドに転がる。何となくもう一度星宮とのメッセージのやり取りを読み返してみた。


 カップルとは思えないどこかよそよそしさを感じるやり取り。でも、これはこれで――、


「悪くはないな」

 

 ぽつりと一言溢れる。好きでもない女子と何してるんだと、後から冷静になってしまいそうだった。


 

***



 重たい瞼がゆっくりと開き、眠っていた脳が徐々に覚醒しだす。窓から差し込む朝日の光が庵の目を眩ませた。どうやら土曜日になったらしい。新しい一日の始まりだ。


「......朝、か。ほわぁ」


 あくびをしてベッドから降りる。二度寝をしたいところだが今日は星宮が家に来る日だ。寝過ごすなんて事態があっていいわけがない。


 とりあえず朝食を作って、食べて、歯磨きをして......と、やるべきことを考えながらリビングへと足を運ぶ。


「あら庵。今日は早いわね。おはよう」


「ああ母さん。おはよう」


 台所で朝食を作っている青美の姿が見え、朝の挨拶をされた。深く考えれなかった庵は自然に挨拶を返す。しかし、すぐにこの状況がおかしいことに庵は気づいてしまった。


「いやちょっと待て」


 一気に目が覚めた庵は青美を二度見した。その次に三度見して、ようやく言葉を発する。


「なんで母さん家に居んだよ!」


「ん? 今日は仕事が休みなのよ。久々に羽を伸ばせるわ」


「聞いてねぇよ......」


「そりゃ言ってないものねぇ」


 さっきまで考えていたことが一気に吹っ飛んでしまい、おまけに思考が停止した。青美が家に居る。これの何が問題なのか、そんなこと考えるまでもないだろう。


 頭の中に雪色の髪の少女が浮かぶ。


「星宮の存在が母さんにバレるのはまずい......!」



ストーリーが大きく動き出すのは第25話くらいになる気がする(適当)

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