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私の大切な人よ、いつか消える前に

作者: 忘憶却

こういう感覚をどこかで読んだことがある。

SFとかファンタジーとか、そういうところにありがちな。

このごろ、私の頭の中から、大切な人の存在が消えていく。

なんというか、違う存在に置き換わっていくというか、その人そのものがなくても成り立つような感じだ。


もう、手放してもいい。

一緒に握ってくれた手を離してもいいのだと、

それほどに成長したの。

でも、存在を忘れたくなくて、消えてほしくなくて、

もう二度と手を取ることができなくても、この手は君の手を取ってあゆみたいと。


消えていくのが当たり前で、もう十分受け入れただろうと、この自分の歩みは言う。

でも、このたった二十数年心に残し続けた人をと、私の中で最後の抵抗なのだろう。

死んでほしくなかった。

いなくなってほしくなかった。

ずっとそばにいて欲しかった。

私ものであって欲しかった。

でも、君は私の手の中に入ってしまえば、輝きを失ってしまう。

だから、対等な関係で居続けることにしていた。

ただの臆病。

いや、君の正体を知っていたからだった。


あの日、手を取ってくれなければよかった。

あの日も何事もなかったかのように進ませてくれればよかった。

道の脇で倒れて今にも死にそうな自分をなぜ救おうとしたの。

何もなければ苦しむことはなかった。

何かを夢見て苦しむことはなかった。


どんな時も死にたいと思ったのに、君はいつも手を取るから死ねなかった。

君が死んでからも夢の中で。


もう、全部消えていく。

君が励まし、手を取る過去の私の、そういう記憶は、

今の私が昔の自分の手を取るように置き換わった。


君の役割は終わったのかな。

さよならすらも言わせてくれなかった君とのお別れはそろそろかもしれない。

今言わなければ、君のことを全部忘れてしまう。

だから、言うね。


今まで私を支えてくれてありがとう。

あの時、君のお別れに気付けなくてごめんね。

ずっと背負い続けてきたの、君の願いを。

それも、もうじき叶うかもしれない。

俺がやれる規模はたかが知れてる。

それでも、君は世界の、名前も残らないような存在となってもその思いは誰かの中にある。

影響し、影響され、形を変えて誰かの中に。

だから、死んだらもう一度会おう。

それまで、じゃあね。

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