第一話 ブレイクゲート
ある日、地球上に
―――ゲートと呼ばれるものが出現した。
それと同時に俺達人間にはレベルとステータスという概念も生まれた。そして、皆ゲートに潜る様になった。ゲートの中は全く別の世界が広がっており、モンスターと呼ばれる敵対生物が必ずいる。難易度はゲートの色と大きさで判断できる。色は下から白、灰、緑、青、黄、赤、金となっている。
ゲートの中でモンスターを倒すと経験値とドロップ品を得ることができる。経験値によってレベルアップができるのだ。そして、人々の中にはモンスターを狩ってドロップ品を売り出す者達が現れだした。俺達は彼らをハンターと呼んだ。それに伴いハンター協会と言うものが作られ、その下にギルドと言うものが作られた。ハンターの情報は皆ハンター協会に管理されておりハンターはいずれかのギルドに所属している。
そんなハンターには階級が存在する。階級とは、ハンターの強さを表したもので下からE D C B A S EX級となっている。この階級はハンター協会が定めているものであり、ハンターになりたい場合は協会で試験を受け、実力に見合った階級をもらうと言ったシステムだ。昇格試験もあり、レベルが上がり強くなればなるほど階級も上がっていく。
逆に弱ければ階級は上がらないが、ハンターになれないわけではない。E級でもパーティーに入れてもらえればそれなりに稼ぐ事が出来る。何も戦闘能力だけが全てではない。弱くても邪魔にさえならなければ問題はない。しかし、どこに行っても必ず一人はこう言う奴がいるのだ。
* * *
俺は篠森 龍也。16歳で、ハンターをしている。因みにE級だ。なんの自慢にもならないな。俺は周りの人と比べてステータスが驚く程低い。ただでさえレベルを上げるのに相当な時間がかかると言うのに俺のステータスではほぼ無理だ。
―――ステータスオープン。
名前:篠森 龍也
年齢:16
レベル:1
体力:5/5
魔力:0/0
筋力:3
防御力:2
俊敏:1
精神力:5
〈スキル〉
なし
〈称号〉
なし
とまぁこんな感じだ。普通はレベル1でも全部二桁はいっているはずなのだが俺だけは全て一桁で魔力に関しては0である。この事から俺は周りのハンター達から最弱ハンターと呼ばれていた。
「はぁ…いつまでこんな生活が続くのかな…」
「どうしたの?お兄ちゃん」
俺には中学一年生の妹がいる。両親は俺が一年前に起こった大厄災によって死んだ。母は俺達を守るために、父はモンスターと戦った末に死んでしまった。父と母は二人ともハンターだった。それもS級ハンターだ。
その時俺は弱い自分を呪った。これから俺が妹を守り、養っていかなくてはいけないのにこれじゃ無理だ。
「いや、何でもないよ」
「ふ〜ん。ま、いいや。早く食べよ!」
「う、うん。あのな葵、俺は弱いからこんなものしか食べさせてあげられなくてごめんな。もっといろんなもの食べたいよな…。でも、それでも頑張れるのは葵がいてくれるからだ。もう父さんや母さんみたいに目の前で人が死ぬようなことにならないようにする。だからこれからも俺のそばにいてくれ」
「な、何よ、急に。早く食べるよ!」
「うん」
* * * * * * *
今日俺は朝からゲートに潜っていた。もちろん上級者パーティーの荷物持ちとしてだ。本当は高校に通っている時間なのだが俺は妹を学校に通わせるためにも高校には行っていない。
「よぉ!龍也!今日もよろしくな!」
「はい!よろしくお願いします!」
「今日は青ゲートだか、何かあっても守ってやるよ!ハッハッハ!」
「そ、その時は宜しくお願いします…」
守ってもらう立場なのが相当悔しく、俯いているとゾロゾロとパーティーメンバーがやってきた。
「やぁ最弱君。君も懲りないよねぇ」
「ハハ…妹の為なので」
「そうかい。まぁ頑張るんだよ」
「すまねぇな。いっつも言ってるんだがな。パーティー歴で言ったらお前は古参なのにな」
「いえ、いいんです。心遣い感謝します。竜胆さん」
「おう!いいってことよ!」
竜胆さんはA級ハンターでこのパーティーのリーダーだ。このパーティーはSランクでこんなパーティーに入れてもらえたのは竜胆さんのお陰なのだ。だから竜胆さんには頭が上がらない。なんたって俺の恩人なのだから。
「みんなよく聞け!今日は青ゲートだが、油断はするなよ。もしかしたらブレイクゲートが起こるかも知れねぇ。そうなっても対処できる様にしっかり気ぃ引き締めとけよ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
さっき竜胆さんが言っていたブレイクゲートとは、本来青ゲートだったゲートがハンターが入る事で色が変わり難易度が高くなる事だ。何度か事例があって多くのハンターが亡くなっている。
時間が来たのでゲートに入っていく。ブレイクゲート特有の違和感はなく無事に全員入り、攻略が開始された。
このゲートは洞窟タイプの様で虫系統や蛇などのモンスターが多くどれもBランクモンスターだった。俺など到底敵うような相手では無いので後ろで大人しくしている。
敵からの攻撃はタンクが受け止め、そこにできた隙にすかさずアタッカーが攻撃を加える。竜胆さんはタンクで一番前で戦っている。そんな事を何回か繰り返して奥に進んでいくとピタッと敵の攻撃が止まり気配も消えた。
「チッこれはまずいな。ブレイクゲートだ」
「ブレイクゲートか!手応えがねぇなと思ってたんだよ!丁度いいじゃねぇか」
「まぁ俺達なら何とかなるよな」
「お前ら!自分の事だけを考えてどうする!荷物持ちは絶対に守れよ!」
この時俺達は知らなかった。このブレイクゲートは普通のブレイクゲートではなく明らかに異常だって事を。そして、ゲートの色は黒だった。