9.
新たな情報、それは、何枚かの写真だった。
あのパーティ会場で、写真好きの婦人が仲間内で撮ったものだ。
ポラロイドカメラで撮影されていて、写っているのは当然被写体となった人物である。
しかし、背景にはほかの参加者も写っていた。
もちろん、被写体ほど大きく写ってはいないけれど……。
その写真を何枚か眺めていると、あるものが写っていることに気付いた。
「あの証拠がある限り、君が犯人だという事実を覆すことは難しいね」
ローマン王子の言っているあの証拠とは、ヴィンセント王子を死に至らせた凶器のことだ。
凶器は、私が普段使っているハサミだった。
私はメイクをしたり着飾ったりするのが好きで、自分でもそういう道具を持っている。
ハサミもその道具のうちの一つだ。
しかも、そのハサミは世界に一つしかない。
なぜなら、オーダーメイドした特注品だからだ。
そのハサミが、ヴィンセント王子に刺さっていた。
つまり犯人は、そのハサミの持ち主である私というわけだ。
妹の目撃証言と、凶器のハサミ、この二つのせいで私は犯人ということになり、処刑されたというわけだ。
まあ、処刑されたといっても、生きているのだけれど。
そして、凶器のハサミだけれど、最近あれをなくしていたのだ。
私はあの会場で、ハサミは誰かが盗んで、それを凶器として使ったのだと主張した。
しかし、嘘をつくなと一蹴されてしまった。
屋敷にあるハサミを盗むなんて、どうやってやるのだと言われた。
屋敷の周りには警備の人もいるのに、どうやって屋敷に侵入してハサミを盗むのかと、そう言われた。
私はその言葉に反論することができなかった。
確かにその通りで、屋敷に侵入してハサミを盗むなんて不可能だと思ったから。
しかし、私は写真の中から、一枚の手がかりを見つけた。
「ローマン殿下、私、ヴィンセント王子を刺した犯人が分かったかもしれません」
*
(※ダミアン視点)
また僕たちのもとに兵がやってきた。
なんでもローマン殿下が、僕たちに王宮へ来てほしいそうだ。
いったい、何の用だ?
なぜ、殿下は僕たちに王宮へ来てほしいんだ?
僕たちは馬車に乗って、王宮へ向かうことになった。
その道中も、気が気ではなかった。
比喩などではなく、本当に体が震えていた。
ついにその時が来たのではないかと恐怖を感じながら、ずっと考えていた。
……まさか、ついにバレたのか?
バレてしまったのか?
あのことが……、バレてしまったのか?
ヴィンセント王子を刺したのは僕だと、ついにバレてしまったのか?