8.
(※ダミアン視点)
ルーシーの処刑はもう終わったのに、まだヴィンセント王子殺しの捜査を続けているのか?
家にやって来た兵が帰ったあと、僕は焦りを感じていた。
あの事件の捜査は、もう終わっていたと思っていたのに……。
どうして、まだ捜査をしているんだ?
「お父様とお母様が嘘の証言してくれたおかげで助かったわ! ありがとう!」
アマンダは両親と抱擁を交わしている。
「気にするな。娘を守るのは当然のことだ。まったく、アマンダが嘘の証言をしたと疑うなんて、あの兵は無能だな。そんなこと、あるはずないのに」
「そうそう。この子がそんなこと、するはずがないわ。今度娘に対して無礼な態度を取ったら、あの兵には文句を言ってやりましょう」
「ありがとう、お父様、お母様。私が嘘の証言をしたなんてありえないのに、あの人は何もわかっていないわ」
しかし、そのアマンダの言葉こそ嘘だということを、僕は知っている。
なぜなら、そう嘘を言うように頼んだのは、ほかでもないこの僕だからだ。
しかし、なぜかその嘘の証言が、疑われ始めている。
そのことに、焦りを感じていた。
いや、焦りなんて生易しいものではない。
恐怖といった方が、正確に僕の気持ちを表しているだろう。
まさか、あの事までばれるのではないか……。
そう考えただけで、気がおかしくなりそうだった。
少し、気分が悪くなってきた。
これは、いつあの事がバレるのかという恐怖のせいか、あるいはあの光景が脳内でフラッシュバックしたせいなのか……。
いつまで正気を保っていられるか、僕には自分でもわからなかった。
*
「え、お父様とお母様まで、私がヴィンセント王子を殺したところを見たと証言したのですか?」
ローマン殿下が兵から聞いた報告の内容に、私は驚いていた。
私はヴィンセント殿下を殺してなんかいない。
つまり、両親の証言は明らかに偽証だ。
アマンダが問い詰められている時に、いきなりそう証言したそうだから、娘を守るために咄嗟に嘘をついたのだろう。
しかし、それが偽証だと証明するすべがない。
それに、私が犯人だというあの証拠の問題もある。
いったい、どうしてあれが、あんなところにあったのだろう。
誰かが、私を嵌めたのは間違いない。
しかし証拠がない以上、その言い分は信じてもらえない。
やはり何か、新たな証拠が必要だ。
そう思っていると、私たちのもとに新たな情報が寄せられた。
もしかするとこの情報から、突破口が開けるかもしれない。