6.
「処刑は決定しているというのに、いったいどうやって、私を助けるというのですか?」
「処刑される君を、人形とすり替えるんだよ」
「え、人形とすり替える!? でも、そんなことしても、まったく動かない人形だったら、すぐに気付かれるのではないですか? あ、まさか、動く上に私にそっくりな人形を作るおつもりですか?」
「いや、残念ながら、そんな精巧なものは作れないよ。でも、人形とすり替えても気付かれない方法はある。問題は、すり替えるタイミングさ」
「タイミングですか……」
「そうだ。この国の処刑は、昔から火あぶりだと決まっている。そこを利用するのさ」
「あ、もしかして……」
「そう。火に包まれた時、人形と君をすり替えるんだ。火はものすごい高さまで燃え上がる。それに、万が一火ではりつけの拘束具が燃えたり溶けたりしても受刑者が逃げられないように、三百六十度、火に囲まれる。つまりその間は、見物人たちからも君の姿は見えなくなるんだ。だからその間に、君と人形をすり替えて、あとはその人形がまる焦げになるだけ。どうせまる焦げになるのだから、精巧な人形を作る必要はない。燃えた後に、人の形さえ保っていればいいんだよ」
「なるほど……。あれ? でも、ちょっと待ってください。三百六十度囲まれていたら、私と人形とすり替えるために、私に近づくこともできないのではないでしょうか?」
「その心配はないよ。三百六十度囲まれているといっても、それは横軸の話だ。上と下は、火が迫ってくるまでのしばらくの間、大丈夫だ。つまり、こういうことだよ。まず、君が火に包まれて、見物人たちから見えなくなる。その瞬間に、処刑台の床が開いて、君と人形が入れ替わる。そして……」
「え、ちょ、ちょっと! ちょっと待ってください。床が開く? 私と人形が入れ替わる? 処刑台の床って、開くんですか? それに、はりつけにされている私は、どうやって人形と入れ替わったらいいのですか?」
「ああ、すまない。説明を省いてしまっていたよ。この計画には当然、協力者がいる。私の信頼できる部下が数名、この計画に協力してくれる。だから君は、何もしなくて大丈夫だよ。処刑台の床は、開かない。でも、開く仕掛けを既に作っている。人形と入れ替わるのも、部下が手伝ってくれる。人形と彼は床から現れるから、周りにいる見物人に見られる心配もない。そして、人形と入れ替わった君は、処刑台の床から通路に降りて、部下について行って逃げるだけ」
「え、処刑台の下って、通路になっているのですか? あ、もしかして、それも……」
「ああ、部下に頼んで作ってもらった。さっきも言ったけれど、この計画を知っている部下は、私が心から信頼している数人だから、バレる心配はないよ。それからしばらくは、王宮にある私の部屋で過ごしてもらうことになる。私の元には、ヴィンセントの事件に関する報告が集まるから、一緒に真犯人を見つけよう」
「ええ、そうですね。私が死んだと思っている真犯人に、必ず証拠を突きつけましょう! 私を陥れた報いは、必ず受けてもらうわ!」