表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/14

4.

「君に少し、話がある」


 私の処刑執行の前日、ローマン殿下が訪ねてきた。

 この国の第一王子である彼が、どうして私なんかを訪ねてきたのだろう。

 もしかして、私に恨みがあるのだろうか。

 

 私が殺したとされているヴィンセント殿下は、この国の第三王子だ。

 つまり、ローマン殿下とヴィンセント殿下は兄弟だ。

 弟を殺した私に恨み言の一つや二つ言いたくなるのも、当然のことといえる。

 しかし、彼は意外な言葉を口にした。


「私は、君がヴィンセントを殺したとは、どうしても思えないんだ」


「え……」


 ローマン殿下の言葉に、私は驚いた。


「正直に、私の目を見て言ってほしい。君は、ヴィンセントを殺したのか?」


「いいえ、私はヴィンセント殿下を殺してなんかいません」


 私は彼の目を見て、はっきりと答えた。


「やっぱり、そうなのか……。ということは、犯人はほかにいるというわけだ」


「あ、あの、ローマン殿下。私の言うことを信じてくれるのですか? あの時、あの場にいた人たちは、誰も私のことを信じてくれませんでした。それどころか、私を人殺し呼ばわりする人までいました」


「ああ、話には聞いているよ。まったく、愚かしいことだ。根拠のない勝手な憶測やその場の雰囲気に流されて、君を犯人扱いするだなんて。私は、あの場でそのような行動をした者を軽蔑するよ」


 ローマン殿下は、真剣に怒っている表情だった。

 あの場では誰も信じてくれなかったのに、ローマン殿下は私を信じてくれた。

 そのことが嬉しくて、私は気付けば笑みを浮かべていた。


「おいおい、何を暢気に笑っているんだい? 君は明日、処刑されるんだぞ」


「ごめんなさい、嬉しくて。あの場にいた人たちは誰も私のことを信じてくれませんでしたが、ローマン殿下は私のことを信じてくれました。たった一人とはいえ、最後に私のことを信じてくれる人が現れたので、嬉しかったのです。どうしてローマン殿下は、私の言うことを信じてくださるのですか?」


「君を信じた理由か……。まず第一に、君が犯人ではないかもしれない、という調査結果が新たに出てきたからだ」


「え、そうなんですか?」


「ああ。しかし、証拠としては、少し弱い。その程度では、決定している君の処刑を止めることはできない」


「そうですか……。でも、もう覚悟はできています。あの、殿下、第一の理由ということは、第二の理由もあるのですか?」


「ああ、もう一つ、私が君を信じた理由だが、実は、その証拠が出る前から、私は君は犯人ではないと確信していた」


「え、どうしてですか?」


「それは──」


 ローマン殿下は、意外な理由を口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ