2.
「私は、ヴィンセント王子を殺してなんかいません!」
私は会場にいるみんなに無実を訴え。
しかし皆は眉を顰め、私から一定の距離をとっていた。
「自分の罪を認めないなんて、往生際が悪いわよ、お姉さま」
アマンダが、にやにやと笑いながら私に言った。
「そうだぞ、潔く自分の罪を認めるんだ」
お父様までそんなことを言う。
「最後くらい、正しいことをしなさい」
お母様も涙ながらに私に訴えた。
「この人殺し!」
婚約者、否、元婚約者のダミアンが私を指差していった。
会場内では、いくら私が言い訳しても、信じてもらえない雰囲気になっていた。
こんなのあんまりだ。
やってもいない王子殺しの罪で、どうしてこんな目に遭わないといけないの……。
会場にたくさんの兵が入ってきた。
アマンダやダミアンたちが私を指差し、「彼女が殺した」と証言したことで、私は兵に捕らえられてしまった。
「離してください! 誤解です! 私は何もしていません!」
私は必死に抵抗した。
しかし、その抵抗もむなしく、彼らに牢獄へ連行されてしまった……。
私がヴィンセント王子殺害の容疑で捕まってから、二日が過ぎた。
面会に来た人物は一人もいなかった、というわけでもなく、家族が面会に来た。
しかし、それは無実の私を励ます言葉をかけに来てくれたわけではなかった。
「ああ、まったく、なんてことをしてくれたんだ! この一家の恥さらしが!」
「どうしてあんなことをしたの? 家族である私たちにも迷惑がかかるとは、考えなかったの!?」
「お姉さま、まだ自分の罪を認めていないのですね。いい加減、諦めたらいいのに」
こんな言葉しかかけられない家族に、私は嫌気がさしていた。
また別の日には、ダミアンがやってきた。
「君との婚約破棄が正式に成立したよ。これで、君とは赤の他人だ」
「赤の他人じゃないでしょう? お義兄様」。アマンダとは、いつ結婚するの?」
私は彼に嫌みを言ってやった。
「なんの話だ?」
ダミアンははぐらかそうとした。
しかし、アマンダとの浮気関係は既にお見通しなので、そんな嘘は私には通用しない。
「あなたたちが、浮気関係にあることはわかっています。慰謝料は、きっちりと請求しますからね」
「慰謝料? 笑わせないでくれ。死人が慰謝料を請求できるのか?」
ダミアンはこちらを見下したように下品に笑っていた。
「死人? どういうことですか?」
「ついさっき、君の処刑が決定したそうだ。君の家族がその連絡を受け、僕はアマンダから聞いたんだ。浮気をしていたことを認めるつもりはないが、仮に、万が一それが証明されたとしても、慰謝料を払う前に、君は既に死んでいるだろうね」
ダミアンはまた笑いだした。
私は絶望して、彼に反論する気すら起きなかった。
私が、処刑?
どうしてこんなことになったの……。
気が付けば、目から涙があふれていた。
やってもいない罪で処刑されるなんて、こんなの間違っている。
でも、私は自身の無実を証明することができなかった。
誰も私の言葉に耳を貸すことはなかった。
悔しい。
どうして、誰も私の言うことを信じてくれないの?
毎日そればかり考えていた。
そして時間は流れ、私は処刑前日を迎えていた。
誰一人味方がいないことに、私は絶望していた。
家族や婚約者ですら、私の味方をしなかった。
それどころか、私が犯人だと決めつけていた。
私のことなんて、誰一人として信用してくれない。
そう思っていた時、一人の人物が私を訪ねてきた。
「君に少し、話がある」
その人物は、この国の第一王子である、ローマン・グライムズ殿下だった。