13.
(※ダミアン視点)
「だからあのハサミに指紋がなかったのは、真犯人であるあなたが自分の指紋を拭きとったからです。しかし、これだけでは完全な証拠とは言えません。私の処刑を止めることもできませんでした。しかし、ローマン王子のおかげで生き延びた私は、新たな証拠をつかんだのです。それが、この写真です」
彼女は、ポラロイドカメラで撮った写真を何枚か持っていた。
そこにはカメラ目線の婦人が写っていて、撮られた時刻が表示されている。
しかし、これといって証拠になるようなものは写っていないように思えた。
「この婦人のうしろに映っている人に注目してください。写っているのは、ダミアンあなたです」
「それがどうした。僕が写っているからといって、何の証拠にもならないぞ」
「いえ、よく見てください。こちらの写真にも、こちらの写真にもあなたが写っていますが、二つを比べてみると、あなたに少しだけ変化があります」
「変化だと?」
目を凝らしてみたが、何も変化は見られなかった。
「わかりませんか? あなたが履いている靴ですよ。一枚目の写真では、あなたの靴には何も付着していません。しかし、そのあと撮られた写真では、あなたの靴に、血痕が付着しているのですよ」
「あ……」
言われてみれば、確かにその通りだ。
言われて初めて、目を凝らせば見えるくらいの、小さな血痕だった。
「そして、密かに押収したその靴の血痕を調べたところ、ヴィンセント王子のものと完全に一致しました」
「そんな……」
「あなたが真犯人だという証拠は以上です。あなたは間違いなく、処刑になるでしょうね。経験者である私から、一つだけ言えることがあります。あの火あぶりは、死ぬほど熱いので、覚悟しておいてください」
「嫌だ! こんなの間違っている! 誰か、何とかしてくれ! アマンダ、君からも何か言ってくれ!」
「私があなたに協力したのは、お姉さまを陥れて、ほしいものを奪うためよ。人殺しに協力したつもりなんてないわ。あなたがヴィンセント王子を殺そうとしていると知っていたら、協力なんてしなかったわよ! 近寄らないで、この人殺し!」
「あれは……しかたなかったんだ! 殿下は、僕が不正をして金を手に入れていることを突き止めた! しかし、すぐに逮捕されることはなかった。殿下は、あのパーティの時、それをみんなの前で発表しようとしていたんだ! ほかの貴族も不正を働かないように、不正をすればどうなるか見せしめにするために、僕をあの場で告発しようとしていたんだ!」
「そのような理由があっても、人を殺していい理由にはありません。そもそも、自業自得ですよね? 報いを受ける時が来たのですよ」
「そんな……」
僕は絶望していた。
自分が罪から逃れるために、ルーシーを犯人にしたてようとしたのは、失敗だった。
こんなことになるくらいなら、別の誰かにすればよかった……。




