12.
(※ダミアン視点)
皆がルーシーの登場に驚き、言葉を失っていた。
「さて、何から話しましょうか……」
「……ど、どうしてお姉さまが生きているのよ! あの時確かに、処刑されたはずでしょう!?」
アマンダが、僕たちの気持ちを代弁してくれた。
「ああ、そのことですか。簡単ですよ。あれは手品です。脱出できる仕掛けがあったのですよ。はりつけにされてまる焦げになったのは、ただの人形です」
「そ、そんな……、そんなことが……」
僕たちは、次の言葉が継げないでいた。
そんな僕たちに、ルーシーは語り始めた。
「さて、それでは、真犯人が誰なのか、この場で明らかにしようと思います」
「真犯人? 真犯人って、なんのことよ!?」
「それはもちろん、ヴィンセント王子殺害の真犯人です」
「ヴィンセント王子を殺したのは、お姉さまではないの!?」
「ええ、私ではありません。あなたが私を見たと言ったが嘘だということはわかっています。そして、あなたはきっと、そう証言しろと頼まれたのでしょうね。しかし、あなたにそう頼んだ人物こそ、ヴィンセント王子殺害の真犯人なのです」
「……え、そんな。嘘でしょう!? そんなの嘘よ!」
アマンダがちらちらとこちらを見てくる。
僕は唾をのんだ。
まさか、本当にすべて、バレているのか!?
「ヴィンセント王子を殺した真犯人は、ダミアン、あなたです」
「て……、適当なことを言うな! こんなの言いがかりだ! 証拠もないのに犯人扱いされるなんて、不愉快だ!」
僕は咄嗟に言い返した。
吹き出た汗が、額から流れていた。
「証拠ならありますよ。今から順を追って説明しましょう。まずは凶器のハサミですけれど、あれは私のものです。盗まれていたのですが、どう考えても屋敷にいる人以外に盗むことはできません。殺人犯であるダミアンが盗んだと考えるのが妥当でしょう。そして、不思議なことにハサミに指紋はついていませんでした。これでまず、私が犯人ではないかもしれない、とローマン王子が疑うことになったのです」
「指紋がなかった? そんなのは、当然だ! 犯人だとバレたくない君が、指紋を拭きとったのだろう!」
僕はルーシーに反論した。
「いえ、指紋がないのは、おかしいです。あなたが言うように、私が犯人だとバレたくないから、指紋を拭きとったというのなら、そもそも、どうして私が犯人だと疑われるような凶器を使ったのですか? そこが、矛盾しているのですよ」
「あ……」
僕は言葉を失っていた。
確かに彼女の言う通りだ。
彼女を犯人に仕立て上げるつもりが、まさかこんな墓穴を掘っていたなんて……。




