1.
「あぁ、なんてことだ……。いったい、どうしてこんなことに……」
「それよりも、誰がこんな恐ろしいことをしたのか、それが問題よ!」
「ああ、そうだ! 一刻も早く犯人を突き止めないと! 王子を殺した犯人は、まだ野放しなんだ!」
「いったい、誰が王子を殺したんだ!?」
ここは、貴族たちが集まるパーティ会場。
その会場で、パーティの参加者たちは混乱していた。
伯爵令嬢である私、ルーシー・ラフルアもそんなパーティの参加者の一人だった。
楽しいパーティになるはずがなんと、この国の第三王子であるヴィンセント様が殺されているのが発見されたのである。
だから現在、このようなパニック状態になっているのである。
ヴィンセント王子を殺したのは誰なのか。
この会場にいる人たちは、その犯人を突き止めることで頭がいっぱいだった。
とはいっても、具体的に何か調査するわけではなく、各々が推論とも呼べないお粗末な憶測を口にしているだけだった。
「あの平民上がりの家の誰かだ」とか「あの子爵家の誰某が怪しい」とか、そんな憶測を口にしていた。
そんな時、誰かが言った一言に、注目が集まった。
「ラフルア家の長女が、なんとなく怪しい」
誰が言ったかはわからないが、ラフルア家の長女とはつまり、私のことである。
まったく、馬鹿馬鹿しい。
どうしてそんな憶測を軽々しく口にできるのだろう。
言われた人がどんな気持ちになるのか、少しは考えてみたらいかがかしら。
私は反論する気も起きず、何も言い返さなかった。
しかし、ある者が、その言葉に便乗した。
「私もそう思うわ! 彼女なら、やりかねないと思います! 極悪非道な、あのお姉さまなら!」
私は、その声の方へ振り返った。
声の主は私の妹であるアマンダだった。
えっと、何を言っているの?
私はそんなことはしていない。
「というか私、この目で見たんです! お姉さまが、ヴィンセント王子を殺すところを!」
アマンダのその言葉に、会場中から騒めき声が上がった。
意味が分からない。
どうして、彼女はあんなことを言っているのだろう。
「アマンダ……」
そんな彼女に、声を掛けた人物がいた。
私たちの父である。
父の隣には、母もいた。
「いったい、どこで間違えたのだろう……。立派に育てようと努力したのに、まさか、人殺しまでするなんて……。しかも、よりによってヴィンセント王子を……」
え、お父様、何を言っているの?
私は、殺人なんてしていませんよ……。
「昔から何を考えているのか、まったくわからない子だったから……。いつか、こんなことをする時が来るんじゃないかって思っていたの。あなたは一家の恥だわ……」
泣き崩れながら、お母様はそう言った。
意味が分からない。
泣きたいのはこっちである。
「ルーシー、ちょっといいかな?」
そんな私に話しかけてきたのは、私の婚約者であるダミアン・コルテスだった。
周りの人から疑いの視線を向けられる中、声を掛けてくれるなんて。
あなただけは、私の味方だと思っていたわ。
そう思っていたのだけれど……。
「君とは婚約破棄だ! 人殺しと一緒に暮らすつもりなんて、僕にはないからな!」
え、どうしてそんなことを言うの?
私が人殺しだっていう証拠はないのに、勝手に決めつけないでよ……。
そんなダミアンに、妹のアマンダが肩を寄せていた。
いくらなんでも、少し距離が近いのでは?
ああ、そういうこと……。
婚約破棄をするのにちょうどいい理由ができたから、それでいきなり婚約破棄を申し出てきたのね。
つまり、ダミアンとアマンダはすでに、浮気関係にあるということですか……。
この会場にいる人たちは、完全に私を王子殺しの犯人と決めつけている雰囲気だった。
これはすべて、私の家族や婚約者を含む何人かが口にした、勝手な憶測と酷い言いがかりのせいだった。
ヴィンセント王子を殺した私を、処刑するべきだという声まで上がっている。
しかし、私を犯人扱いした人たちは、後悔することになるのだった……。