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4.因縁。

書けたので出します。

今回の不明点諸々は、次回に明らかにします。


続きが気になる、そう思っていただけましたらブクマや下記のフォームより★評価など。

創作の励みとなります。








「お前は本当に使えねぇな、カイウス!」

「ご、ごめんなさい……!」




 リッドはそう言いながら、ボクのことを足蹴にする。

 彼の言う通り、ボクは弱かった。得意なことも、強いて挙げるとすれば修復魔法とか、手先の器用さだけ。戦闘能力がない冒険者は、下の下だ。

 毎日のように虐げられて、雑用を押し付けられる。


 でも、それが当たり前だから。

 ボクは謝罪を繰り返しはするものの、反抗しようとは考えなかった。


 そんな、ある日のこと。

 リッドはパーティーのメンバーを集めてこう言った。



「今日はパーティーとしての格を上げるために、下層まで潜るぜ!」



 ――ダンジョンの下層まで行こう、と。


 でも、ボクたちはそんなレベルのチームではない。

 当然ながら他のみんなも反対したし、何かの冗談だと思っていた。でも、



「心配すんな! 生きて帰るための策はあるからさ!!」



 彼はそう言ったのだ。

 そして、下層へと潜ってからしばらくした時。



「それじゃ、後は任せたぜ。……お前ら」



 リッドは、ボクを含めたパーティーメンバーにそう告げたのだった。







「リッド……!」

「なんだ、リリーナ生きてたのか。てっきり死んだと思ってたぜ?」

「アンタ……! よく、そんな軽口を叩けたわね!!」



 リリーナは彼を知っているのか、リッドに食ってかかった。

 しかし相手はどこか飄々とした様子で、まったくをもって意に介さない。それどころか、どこか薄気味悪い笑みを浮かべて彼女を見下していた。

 そしてふと、こちらに視線を投げる。



「それにしても、カイウス。お前、生きてたんだな? 驚いたぜ」

「……………………」



 リッドはそう言うと、ボクの方へとやってきた。

 こちらの肩に手を置いて、こう囁く。



「お前も、アイツらを見殺しにしたんだな……?」――と。



 その言葉を聞いて背筋が凍った。

 ボクの表情を見て、こちらの感情を読んだらしい。

 リッドは腹を抱えて笑うと、今度はリリーナに向かって叫んだ。



「だって仕方ねぇだろ? パーティー壊滅の危機だったんだ。一番の役立たずの魔法使いを捨て駒にするのは、正しい判断だろう!?」

「…………!」



 その言葉を聞いて、少女はまた怒りの表情を浮かべる。

 詳しい話は分からなかった。でも、ボクにはリッドが何をしたのかが分かる。



「……キミは、また同じことをしたのか」

「あん?」



 だから、思わずこう訊いていた。



「また、仲間を犠牲にしようとしたのか……!」――と。



 思い出すのは、数年前のこと。

 ボクは、リッドがリーダーを務めるパーティーにいた。

 だが雑用係をこなす日々の中で、その事件は起きたのである。



「また、仲間を見捨てて自分だけ……!」



 リッドは、仲間を見捨てたのだ。

 高難易度のクエストを受け、手柄を独り占めにしようとした。

 あの日、ボクと他の仲間たちは囮――いいや、捨て駒としてダンジョンの下層に放置されたのである。そして、リッドだけが脱出を果たした。


 そのことを口にすると、彼はまたいやらしい笑みを浮かべる。



「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。カイウス」



 リッドは、肩を竦めてこう続けるのだった。



「あれは不幸な事故、だろ?」――と。



 その瞬間に、ボクの脳裏にはある光景がフラッシュバックした。

 仲間たちが血に塗れて、倒れている。

 そんな、地獄のような光景が。



 あれを【不幸な事故】だと、そう言うのか……?



「リッド……!」



 ボクはとっさに、強く拳を握りしめて。

 そして――。




 パシン、という乾いた音が響いた。




「あん……?」

「……アンタって、本当にサイテー……!」

「……リリーナ?」



 ボクが手を上げるより先、相手の頬を叩いたのはリリーナだった。

 彼女は、涙目になりながらも果敢に立ち向かう。リッドも予想外だったのか、しばし呆けていた。しかし次第に表情を歪め、怒りを露わにする。



「てめぇ、俺を誰だと思ってやがる……!!」



 そして、少女に向けて剣を抜き放った。

 喉元に得物を突き付け、少しでも動けば首を飛ばせる状態に。



「誰に向かって物を言ってやがる、って訊いてんだよ!!」



 彼の言葉に、しかしリリーナは毅然として言い返した。



「誰……? そんなの決まってる。最低最悪の冒険者よ!!」

「ふざけんな、このクソガキが……!?」



 すると、ついに感情を抑えきれなくなったらしい。

 リッドは少女に突き付けていた剣を振り上げ、そして――。



「あん……?」



 脳天を割らんとした瞬間。



「ほう……? カイウスが、俺に逆らうのか」

「………………」



 ボクはエクスを抜き放って、リッドの剣を受け止めていた。

 そして、リリーナを守るように後退して言う。



「逆らうんじゃない。ボクは、お前とは違うだけだ」――と。



 仲間を守る。

 ただ、それだけのことだ、と。



 エクスの力があるから戦えるのだろう。

 それでもいい。ボクはとかく、この男が許せなかった。

 だから、弱気になりそうな気持ちに喝を入れて、リッドを睨んだ。



「は、はははは、あっはははははははははは!!」



 すると相手はまた、腹を抱えて笑い始める。

 そして、不気味に笑いながらこう口にするのだった。



「それは面白れぇな。『同じ穴の狢』のくせによぉ……」



 挑発する言葉。

 だがしかし、ボクは首を左右に振った。



「……違う。ボクは、お前とは違う」

「違わねぇさ。お前もあの時、他の奴らを見殺しにしたんだろ?」

「………………」



 それでもリッドは、気にせずそう責め立てる。


 自分たちは同じなんだ、と。

 仲間を見殺しにした、その亡骸の上に立っている、と。


 もしかしたら、そうなのかもしれない。

 だけど、ボクは一度リリーナを見てからこう告げた。



「それでも。仮に、そうだったとしても――」



 真っすぐに、リッドのことを見て。



「だからこそ、お前を許すことはできない」――と。




 過去の因縁を断ち切るために。

 ボクは、そう言い切った。



 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより★評価など。

創作の励みとなります。


応援よろしくお願いいたします。


次回、ちょっと過去の説明?

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