4.因縁。
書けたので出します。
今回の不明点諸々は、次回に明らかにします。
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「お前は本当に使えねぇな、カイウス!」
「ご、ごめんなさい……!」
リッドはそう言いながら、ボクのことを足蹴にする。
彼の言う通り、ボクは弱かった。得意なことも、強いて挙げるとすれば修復魔法とか、手先の器用さだけ。戦闘能力がない冒険者は、下の下だ。
毎日のように虐げられて、雑用を押し付けられる。
でも、それが当たり前だから。
ボクは謝罪を繰り返しはするものの、反抗しようとは考えなかった。
そんな、ある日のこと。
リッドはパーティーのメンバーを集めてこう言った。
「今日はパーティーとしての格を上げるために、下層まで潜るぜ!」
――ダンジョンの下層まで行こう、と。
でも、ボクたちはそんなレベルのチームではない。
当然ながら他のみんなも反対したし、何かの冗談だと思っていた。でも、
「心配すんな! 生きて帰るための策はあるからさ!!」
彼はそう言ったのだ。
そして、下層へと潜ってからしばらくした時。
「それじゃ、後は任せたぜ。……お前ら」
リッドは、ボクを含めたパーティーメンバーにそう告げたのだった。
◆
「リッド……!」
「なんだ、リリーナ生きてたのか。てっきり死んだと思ってたぜ?」
「アンタ……! よく、そんな軽口を叩けたわね!!」
リリーナは彼を知っているのか、リッドに食ってかかった。
しかし相手はどこか飄々とした様子で、まったくをもって意に介さない。それどころか、どこか薄気味悪い笑みを浮かべて彼女を見下していた。
そしてふと、こちらに視線を投げる。
「それにしても、カイウス。お前、生きてたんだな? 驚いたぜ」
「……………………」
リッドはそう言うと、ボクの方へとやってきた。
こちらの肩に手を置いて、こう囁く。
「お前も、アイツらを見殺しにしたんだな……?」――と。
その言葉を聞いて背筋が凍った。
ボクの表情を見て、こちらの感情を読んだらしい。
リッドは腹を抱えて笑うと、今度はリリーナに向かって叫んだ。
「だって仕方ねぇだろ? パーティー壊滅の危機だったんだ。一番の役立たずの魔法使いを捨て駒にするのは、正しい判断だろう!?」
「…………!」
その言葉を聞いて、少女はまた怒りの表情を浮かべる。
詳しい話は分からなかった。でも、ボクにはリッドが何をしたのかが分かる。
「……キミは、また同じことをしたのか」
「あん?」
だから、思わずこう訊いていた。
「また、仲間を犠牲にしようとしたのか……!」――と。
思い出すのは、数年前のこと。
ボクは、リッドがリーダーを務めるパーティーにいた。
だが雑用係をこなす日々の中で、その事件は起きたのである。
「また、仲間を見捨てて自分だけ……!」
リッドは、仲間を見捨てたのだ。
高難易度のクエストを受け、手柄を独り占めにしようとした。
あの日、ボクと他の仲間たちは囮――いいや、捨て駒としてダンジョンの下層に放置されたのである。そして、リッドだけが脱出を果たした。
そのことを口にすると、彼はまたいやらしい笑みを浮かべる。
「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。カイウス」
リッドは、肩を竦めてこう続けるのだった。
「あれは不幸な事故、だろ?」――と。
その瞬間に、ボクの脳裏にはある光景がフラッシュバックした。
仲間たちが血に塗れて、倒れている。
そんな、地獄のような光景が。
あれを【不幸な事故】だと、そう言うのか……?
「リッド……!」
ボクはとっさに、強く拳を握りしめて。
そして――。
パシン、という乾いた音が響いた。
「あん……?」
「……アンタって、本当にサイテー……!」
「……リリーナ?」
ボクが手を上げるより先、相手の頬を叩いたのはリリーナだった。
彼女は、涙目になりながらも果敢に立ち向かう。リッドも予想外だったのか、しばし呆けていた。しかし次第に表情を歪め、怒りを露わにする。
「てめぇ、俺を誰だと思ってやがる……!!」
そして、少女に向けて剣を抜き放った。
喉元に得物を突き付け、少しでも動けば首を飛ばせる状態に。
「誰に向かって物を言ってやがる、って訊いてんだよ!!」
彼の言葉に、しかしリリーナは毅然として言い返した。
「誰……? そんなの決まってる。最低最悪の冒険者よ!!」
「ふざけんな、このクソガキが……!?」
すると、ついに感情を抑えきれなくなったらしい。
リッドは少女に突き付けていた剣を振り上げ、そして――。
「あん……?」
脳天を割らんとした瞬間。
「ほう……? カイウスが、俺に逆らうのか」
「………………」
ボクはエクスを抜き放って、リッドの剣を受け止めていた。
そして、リリーナを守るように後退して言う。
「逆らうんじゃない。ボクは、お前とは違うだけだ」――と。
仲間を守る。
ただ、それだけのことだ、と。
エクスの力があるから戦えるのだろう。
それでもいい。ボクはとかく、この男が許せなかった。
だから、弱気になりそうな気持ちに喝を入れて、リッドを睨んだ。
「は、はははは、あっはははははははははは!!」
すると相手はまた、腹を抱えて笑い始める。
そして、不気味に笑いながらこう口にするのだった。
「それは面白れぇな。『同じ穴の狢』のくせによぉ……」
挑発する言葉。
だがしかし、ボクは首を左右に振った。
「……違う。ボクは、お前とは違う」
「違わねぇさ。お前もあの時、他の奴らを見殺しにしたんだろ?」
「………………」
それでもリッドは、気にせずそう責め立てる。
自分たちは同じなんだ、と。
仲間を見殺しにした、その亡骸の上に立っている、と。
もしかしたら、そうなのかもしれない。
だけど、ボクは一度リリーナを見てからこう告げた。
「それでも。仮に、そうだったとしても――」
真っすぐに、リッドのことを見て。
「だからこそ、お前を許すことはできない」――と。
過去の因縁を断ち切るために。
ボクは、そう言い切った。
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次回、ちょっと過去の説明?