3.憧れと、苦手な相手。
書けたので出します。
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「パーティーを組んでくださって、本当にありがとうございます!!」
「あぁ、いや。ボクもソロだったし、うん」
「ソロなんですか!? てっきり、どこか有名なパーティーの方かと!!」
「いや、違うんだ。ははは……」
隣を歩くリリーナは、ボクのことを見上げながら嬉しそうに笑う。
先日のレライエ戦のことがあって、どうやらこちらを高位の冒険者と勘違いしているようだった。たしかに、レライエを単身で討伐する剣士、ってなったらそう思われるか。
ただボクとして、アレはあくまでエクスの力があってのことだった。
だから、そこまで誇りたいとは思わないのだけど……。
「カイウスさんは、どうして冒険者になろうと思ったんですか!?」
「ど、どうして? うーん、そうだなぁ……」
エクスの話をしても、リリーナは困惑するだけだろう。
そう思って、今はとりあえず素直に質問へ答えることにした。
「憧れ、だったからかな?」
「憧れですか?」
「そうだよ」
ボクの答えに少女は首を傾げる。
冒険者のように、死と隣り合わせの職業が憧れ、というのはたしかに変か。そう思って、少しだけ昔話をすることにした。
「ボクは孤児だったんだけど、助けてくれた人が冒険者だったんだ。とはいっても、物心つく前の曖昧な記憶だから、いつのことかは分からないけどね」
それはおそらく、孤児院に預けられる前のこと。
ボクの瞼の裏にあったのは、燃え盛る街を背に安堵する男性の姿だった。何かを話したような記憶はあるのだけど、憶えているのは彼が冒険者だ、ということだけ。
でも、ボクにとってはそれだけで良かった。
「いつか自分も、誰かを助けられるような冒険者になりたい、って。まだまだ理想には遠いけれど、いつかは追いつきたいんだ」
「へえぇ~!」
そんな話をすると、リリーナはなにやら目を輝かせてこっちを見る。
そして、何度か頷いてからこう言うのだった。
「カイウスさんはきっと、もうなれてますよ!」――と。
ボクが首を傾げると、彼女はこう続けた。
「少なくとも、アタシは貴方に命を救われましたから!!」
とても、清々しい笑顔で。
ボクはそれを聞いて、どこか胸が熱くなるのを感じた。
「あ、あはは。そうだと、嬉しいかな」
そして、そう返事をする。
エクスの一件があるからなのか、どこか素直に喜べない。
でも、一つの命を救えたのは嬉しかった。
だから――。
「相応しい自分になれるよう、頑張るよ」
「…………?」
そう、誰にでもなく告げるのだった。
リリーナは意味が分からなかったのか、小首を傾げてしまった。
「さて、そろそろダンジョンだよ。準備は良い?」
さて、そんなこんなで。
ちょうど良く、ダンジョンの入口前に到着した。
ボクは少女にそう確認すると、前を向こうとして……。
「お? もしかして、雑用係じゃないか?」
「え……」
その時だった。
「なんだよ、雑魚同士で組んだのか! カイウスにリリーナ!!」
「ア、アンタは!?」
ボクたちの前に、どこか見覚えのある冒険者の男が現れたのは。
リリーナも彼を知っているのか、そう声を上げた。
どこか相手を小馬鹿にしたような表情。
細身な身体に軽い装備だけを付けた彼の名前は、リッド。
ボクにとっての苦い思い出。
かつての仲間であり、同時に一番嫌いな相手であった。
次回、因縁の相手?