プロローグ クビになった少年と、物言う剣。
新作です。
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「はぁ……。これで、何回目の追放だろう……?」
ボクはそんなことを呟きながら、夜の街を歩いていた。
昼とは打って変わって人の往来は少ない。まだまだ寝静まるには早いが、わざわざ暗い場所で会話を楽しむほど酔狂な人もいないのだ。
そんな中でボクは、誰にも聞かれない大きさでため息をつく。
「やっぱり、戦闘技能のない雑用係だと冒険者は無理なのかな……?」
というのも、自分の能力不足について。
ボク――カイウス・リーゲルは、とかく戦闘能力がなかった。
得意分野といえば物を【修復】すること、だけ。手先の器用さだけで、どうにか雑用係としてパーティーに採用されたとしても、いずれは用済みになる。
抜群の腕があるわけでもないので、不可欠な存在にはなり得ないのだ。
「………………」
それでも冒険者を続けているのは、夢があるから。
小さなころからずっと憧れてきた職業。いよいよギルドに登録可能な年齢になって、期待に胸を膨らませて門を叩いたのを今でも鮮明に覚えていた。
そして、そこからの苦難の日々も……。
「もう、駄目なのかな……」
それを思い描いた時だった。
ついに、憧れよりも苦心が上回ったのは。
今までは好きな仕事だから、憧れた職業だからと自分に言い聞かせてきた。でも、これほどまでに無力だと心も折れてしまう。
そろそろ頃合いか。
そう思って、ボクは決断しようとした。
『――もし。そこの方、こちらにきてくださいませんか?』
「……え?」
その瞬間。
どこからだろう。
いや、頭の中に直接声が聞こえてきた。
「誰……?」
『そこに骨董品屋があるでしょう? その中です』
「骨董品屋……?」
不思議に思いながらも、周囲を見回す。
すると、ボロボロながらも明かりのついている店があった。
声が聞こえたのはそこから。骨董品屋だということだけれど、覗き込むとその通り。やや胡散臭いお爺さんが頬杖をついているのが分かった。
店内には古めかしい品が散乱している。
かび臭いそこに足を踏み入れると、また声が聞こえた。
『向かって右です。そこに、私がいます』――と。
ボクは言われるがまま、右を向く。
すると、そこにあったのは一段と古びた一本の剣だった。
鞘も柄も朽ちており、刀身は錆がひどい。おそらくは長い間、誰にも手入れをされずに修復もされなかったのだろう。
まじまじと眺めていると、また声がした。
『どうか、私を助けてはいただけませんか』
「助けるって、どういうこと?」
『平たく言えば購入して、修復していただきたいです』
「………………」
やけに具体的な指示。
ボクは思わず黙ってしまった。
すると、そんなこちらに声をかけてきたのは店主のお爺さん。
「坊主、冷やかしなら帰りな」
「えっとー……」
明らかに不機嫌な態度を取られたが、ボクはしばし考える。
そして、意を決してこう答えるのだった。
「あの、この剣を買わせてください!」――と。
店主のお爺さんは一瞬だけ驚いて。
しかしすぐに、小さく笑ってこう言うのだった。
「そんなオンボロで良いなら、タダでくれてやるよ」
こうして、ボクはひょんなことから物言う剣を手にしたのである。
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