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魔王×宣戦布告=隠ぺい工作

 スズメバトがカーっと泣きながら空を飛んでいる。

 晴れていて、いい日差しの空を飛ぶのはきっと気持ちがいいだろう。

 まぁ……ぎょろ目の鳥だから、スズメバトを見ていて気持ちのいいものではないのだけど、早く視界から消えてくれることを願いながら、空を見る。

「うーん、暇だ」

 そう、暇なのだ。

 この世界の言語をある程度話せるようになって、この世界の常識も少しは身に着いた。

 俺が住んでいた世界と何が違うのかといわれると、言語以外変わっていないのだ。

 例えば、この世界で生まれた人、上位魔物、エルフやドワーフなどの亜人には生まれつきスキルがあるし。

 お金の単位は銅貨、銀貨、金貨。

「うーん、10億年も経っているんだから、少しくらい変わっててもいいと思うんだけどな……」

 ただ、世界の常識が変わっていないというのであれば、実はまた一つ問題が生まれてくるのだ。

 それは……冒険者だ。

 俺は、10億年前にもあのクソ野郎と一緒に冒険者として魔王を倒す旅をしていた。

 そして、冒険者の登録には特殊な魔石を要した魔道具を使って、自分の血を垂らした冒険者カードに情報を書き込むのだ。

 つまり……冒険者登録の仕組みが変わっていないのなら、魔道具にも俺の情報が残ったままになっているはずなのだ。

 もちろん、俺の持ち物には10億年前の冒険者カードがアイテムポーチの中にしっかりと保管されている。

 何が言いたいかって?

 冒険者カードには、パーティーを組んでいた仲間の名前が表示される。

 それはつまり、あのクソ野郎の名前も表示されるということで……、もしも誰かがその情報を頼りに俺のことを思い出しでもしたら?

 まぁ、つまりそういうことだ。

 いつまでも、リスタの研究所で居候するわけにもいかないし、俺自身もずっとこうして空を眺めているのは飽きる。

 俺が住んでいた世界とはまるで景色が違うんだ、冒険の1つや2つはしてみたい。

「あー、暇だ」

「何をぼーっとしてる、朝ご飯食べないのか? というかたまには自分で作ってよ」

「おう、リスタ~聞いてくれ、俺は英雄になりたいんだ」

「ちょっと待ってろ、今薬を持ってきてやる」

「おい、失礼だぞ、仮にも俺が何かをやる意思を見せたのにその態度はないだろう」

「英雄って言っても、私アオラスが冒険者として活躍している姿が想像できないわ」

「そんなこと言われても……あっ、そういえばさ」

「なに?」

「あの王様に、俺がこの世界の言葉が少しでも覚えたら王城に行くように言われてなかった?」

「あぁ~それね~……」

 俺が、以前に王様に言われたことを口にすると、フライパンを持って、クマの絵が入ったエプロンをだぼだぼ白衣の上に来ているリスタが、ばつの悪そうな顔をする。

「なんだよ?」

「えーっとね、実は今この国は魔王からの戦線布告を受けているのよ」

「ん? 初耳だぞ」

「まぁ、話してないし」

 腰に手を当てながら、フライパンを置きに戻るリスタ。

「なんで、話してくれないんだよ」

「だって、古代人のあなたには関係ないでしょ?」

「いや、古代人って言われても今はこの国に俺も住んでるんだし……」

「はぁ、わかった正直な話をすると、王様からも言わないように言われているの、町の人達も魔王からの戦線布告は知らないわ」

「もしかして国民が恐怖に染まらないためとか?」

「それもあるだろうけど、っていうか話してあげるから早く朝ご飯食べよ」

「はいはーい」

 俺は、窓から離れて席に着く。

 おいしそうなホットケーキが山のように重なっていて、贅沢に蜂蜜もたくさんかかっている。

「いただきます」

「はいはい、ささっと食べちゃいましょ」

 ホットケーキでおなかを膨らませてから、リスタが先ほどの続きを話始める。

「この世界の言語を教えているときにも話したけど、この世界にはヒューマンを含めた10の種族がいるの、それでねこのアルマス王国は、他の9つの種族の国が貿易や、他の国に行くための滞在地点にしている行商人も多いのよ」

「なるほど……」

「つまりね、行商人から手に入る関税やその他の雑費、他にもこの国で貿易を始めた者達からの税金がこの国の主な財源なのよ」

「なーるほど、他の国の者達にアルマス王国が魔王に宣戦布告されていることを明らかにすると、財源である行商人や貿易商人が自分たちの国に帰っちゃったりするのを危惧してのことか」

「そうね、平たく言うとそういうこと」

「いや、もっと平たく言う方法があるぞ、つまり……真実を言って財源失うよりも、真実を知らせないでこっそりと魔王軍を撃退して、この国の潤いを保たせたいって事だろ?」

「ご名答ね……」

「末最低だな、ここの王様」

「まぁ、まぁ……無理なことはしない方だし……魔王がここの国を墜としたい理由はほかにもあるのよ」

「理由って?」

 リスタに俺が聞き返すと、これまた答えを渋るリスタ。

 俺が机を指でたたき始めて、待つのも限界だと思ったとき、リスタの口が開いた。

「前に、ここの王様が強いって話をしたよね?」

「あぁ、したな」

「それね……ここの王様が、勇者の子孫だからなのよ」

「……っ!?」

 俺は、驚きのあまり椅子から転び落ちてしまった。


 もしもいいなって思ったら、ブックマークと下の星から評価のほうよろしくお願いします。

 んじゃね~

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