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【蓄積】×おっちゃん=生のロースキャロット……

 王城に呼ばれてから、おおよそ三か月が経った。

 俺がこの三か月でやっていたことといえば……勉強、飯、寝るそれだけだ。

 まぁ、そのおかげでこの世界の言葉をある程度話せるようにはなった、最近では練習がてら、こちらの世界の言葉でリスタとも会話をしている。

「あっ、アオラス~、野菜がなくなってる、ちょっと買ってきてよ~」

 だらけた白衣を着ているリスタが、俺にお使いを頼んでくる。

「あっ? またかよ」

「はいお金、お願いね」

 俺が、反論をする前に、お金の入った小鼓を渡してくる。

「わかったよ……」

 俺は、渋々と研究所から出て、買い物に行く。

 


 リスタの研究所があるモンノハシ町、門を通って一番最初に通る町で、門の外と同じようにそこかしこに屋台が並んでいる。

「えーっと、野菜屋さんの屋台はっと……」

 俺は、いろんな屋台と、様々な種族の合間を縫って、野菜屋さんの屋台を探す。

 小包の中に一緒に入っていた紙には、頼まれた野菜のリストが書かれている。

「ロースキャロットにライトキャベツか……、ライトキャベツは苦手だな……調理する問いに、ぴかって光るのが嫌だ」

 俺が、リストを読むのに夢中になっていると……。

「うおっと、すまない」

 人とぶつかってしまった。

 結構ガタイのいいおっちゃんだ。

「あぁ? おいガキ、前見て歩けや」

「悪かったって、んじゃ俺用事あるから」

 俺がそそくさとその場を去ろうとすると。

 ガタイのいいおっちゃんに肩を掴まれる。

「いたっ、いった! なにすんだ! このデカブツ!!!」

「誰がデカブツだ! このチビ!」

「チビだと! 俺がチビだと! よしお前覚悟しろ! この俺がお前をコテンパンにっ!」

「俺をコテンパンに? なんだよ? 言ってみろよ」

「……」

 こういう時に腰が引けてしまう俺って、きっと危機管理能力が高いから、長生きするだろうな~、決してガタイのいいおっちゃんにビビったわけではなくて。

「アッ、ソウダーオレヤルコトガアルンダッタ」

「おい、逃がさねーぞ」

「離して! 俺が悪かったから! 離して!」

 おっちゃんが俺の肩にかなりの力を入れてくる。

 普通に折れるんだけど……し、仕方ない……。

【蓄積】力!

 俺が、スキルの効果を使って自分の筋力を強化して、おっちゃんが掴んでいる手を掴むと……。

「いだっだだだだだ」

「え?」

「ちょっ! わ、悪かった! 頼むはなしてででででで」

 おっちゃんの手を軽く掴むだけだったはずが……なぜかおっちゃんがものすごく痛がっている。

「ちょ、だのむ……ばなじてぐれー俺が悪かっだよーっほっほ」

 涙目になっておっちゃんが手を放してと懇願するので、手を放してやると……俺が掴んでいた箇所が紫色に腫れあがっている。

「あ~、おっちゃん……ご、ごめんな、ほら少ないけど、この金貨で協会の人に治癒してもらいな、んじゃそうゆうことで!!」

 俺は、小包から幾枚かの金貨を取り出すと、それを痛みで声を上げて地面を転げまわってるおっちゃんの近くにそっと置いといてやる。

 そのまま、走って逃げる俺。

 そのあと、野菜屋さんで余った金で買える分の野菜を買って研究所へと戻る。

「なぁ、リスタ……俺って実は結構強いのかもしれない」

「おい、結構強いかもしれないアオラス、ライトキャベツは?」

「買ってないってちょ、ちょっと落ち着け! いいから俺の話を聞いてくれ!」

「あんた! もしかしてまた変なことに使ったんじゃ!」

「違うって! いいから俺の話を聞いてくれ」

 俺の必死な声にリスタもため息をしながら、俺が買ってきた野菜を貯蔵庫に入れて椅子に座る。

「何よ、その話って」

「えーっと、その前に一つ確認したいことがあるんだけど」

「なに?」

「今世界の人達って、生まれたときにスキルを持っているか?」

「ええ、持ってるわよ、私も【思考加速】っていうスキルを持ってるし」

「それでな、俺にも【蓄積】っていうスキルが合ってだな」

「【蓄積】ね、それが何なの?」

「ほら、その俺って長い間、閉じ込められていたって言ったでしょ」

「そうね、一応そうなっているわね」

 椅子の取っ手に頬杖を突きながら、俺の話をつまらなそうに聞いているリスタ……くそが、その顔面にグーを入れてやろうか。

「……」

「どうしたの? ほら続けてよ」

「お、おう、それでな……俺、閉じ込められていた長い間、自分の体がなまらないように鍛えていたんだよ、それが俺のスキルによって【蓄積】されていてな……さっき【蓄積】の効果を喧嘩を売ってきたおっちゃんに使ってみたら、手を折っちまったみたいで」

「もしかして、そのおっちゃんの医療費のため金貨を分け与えたとかじゃないでしょうね?」

「まぁ……そういうこと」

 俺の話を最後まで聞いたリスタが、頭を押さえて椅子から立ち上がる。

「はぁ、もう少しまともな言い訳があるかと思いきや……はぁ」

「な、なんだよ、全部事実だよ!」

「わかったわかった、とりあえず今日のアオラスの食事には肉なしで野菜だけにすればいいんでしょ、わかったわよ」

「いいわけねーだろ! 俺にも肉食わせろや!」

 結局俺の話を信じてくれなかったリスタは、その日の俺の夕食を肉なしな上に生のロースキャロットだけだった。


 もしもいいなっておもったら、ブックマークと下の星から評価のほうよろしくお願いします。

 んじゃね~

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