アーティファクト×嘘=ヴァアアア
庭師によって作られたアートの数々、魔法によって噴水の水の軌道が動物や花になってる。
「なんか、この王城に住む王様の趣味が見えて来た気がする」
「そう? 私たま~に来るけどこの庭好きよ」
「確かに、子供受けしそうな庭だもんな」
「誰が子供よ!」
「お前だよ」
「私は18!!」
「知らね、見た目が子供なら、子供って言われるもんだ」
キーっと奇声を上げながら、俺の脇腹を軽く小突いてくるリスタ、そんなリスタをいじりながら王城の広すぎる庭を通って、やっと王城の扉の前に着く。
王城の扉を見張っている兵士が俺たちを見ると、扉を開けてくれる。
そこから、リスタが兵士から受けた説明で玉座の間にというところに行くらしい。
そして、玉座の間について、仰々しい大きな椅子に座る者の周りに十数人の護衛や召使いの者たちが着いていた。
まぁ、考えるまでもなく、あの偉そうな人の椅子に座っているのが王様だろうな。
その王様は逆光のせいでまだ顔までは見えていない、すると王様が両手を横に広げて話し出す。
「グランサバダール」
いや、だから……お前達の言葉わからないって……って女性?
明らかに女の声音だったのだが……胸なくないか?
俺が、そんなことを考えていると、俺の横に立っているリスタがちょこちょこと服を引っ張ってくるので、そちらを見やる。
「よく来てくれた」
「なんだリスタ、来たのは俺たちだぞ」
「違う! あんたがわからないだろうから、私が翻訳してあげてるの」
「おう、そりゃ助かる」
俺のために翻訳をしてくれるリスタがいい子に見え始めたところで、王様がまた話し始めた。
「君は古代人だと聞いた、名前を聞いてもいいかな?」
王様の言ったことをリスタが翻訳してくれて、何を言っているのか理解する。
名前か……うーん、10億年ってありえないほど長い間、忘れられなかったのに……もしここで仮にも名前を出して、俺のことを思い出したら……最悪捕まって、処刑かな。
そう考えると……本名は出せないな……だとすれば……。
……俺がそう考えていると、王様が指を鳴らす。
すると、兵士の一人が布のかぶった何かを持ってくる。
「な……なんだあれ?」
「さぁ、私もわからない」
俺が不思議に思っていると、王様が話し始めた。
もちろん何を言っているのかわからないので、リスタのほうを見ると……。
「嘘偽りなく、話すこと……さもなくば、この嘘を看破するアーティファクトが貴様の嘘を見抜くだろうってさ」
「……」
嘘を見抜くアーティファクト……? おいおい、まさか……。
俺が、何かを思うよりも早く、王様が布を取って、中の物を見せてくる。
それは……とてもとても見覚えのある、あのうざい魔物だった。
しかし……俺が【幽閉】されてから、かなりの時間が経っている、この魔物まだ、ちゃんと嘘を看破できるのか?
気になった俺は、一つ嘘をついてみることにした。
「リスタは、美人だな」
「えっ、きゅ、急になんだ!?」
「ヴァアアアアア」
いやはや、実力は健在な様で何よりですよ、クソ野郎。
俺が、嘘をついた瞬間に奇声を上げたアーティファクトもとい魔物、その魔物の反応を見た王様が部下の兵士達に武器を構えよ的な命令を出したのだろう、全員が、俺に槍の切っ先を向けている。
そして、俺の言ったことが嘘だと分かったリスタが、ポコポコと俺の腹をたたいてくる。
「こ、こいつ! 余計なことをするでない!」
「まぁ、本当に嘘を‘まだ’看破するかどうか気になったもんで」
「ん? まだ?」
「あっ、いや、気にすんなそれよりも、俺の言ったことの翻訳もお願いできるか?」
「はいはい、いいからあなたの名前を教えて」
さて……どうしたもんだ。
嘘を看破する魔物がいる限り、下手なことは言えない……。
「どうした? 自分の名前も言えないのか?」
さすがに周りの者たちが、俺を怪訝な表情で見ている。
これ以上引き延ばすのは……逆に怪しまれるか……。
俺は、一つ深呼吸をして……決断した。
嘘偽りなく話すことを、そうさ、俺のことは忘れられてるんだ……、つまり今更俺の名前を聞いたところで、誰もわからない……はず!
「俺は、アオラスって言うんだ」
「アオラス? それで間違いないか?」
「あぁ、間違いない」
リスタは特に気にした様子を見せずに、王様に俺の名前を言う。
頬杖をしている王様がピクッと反応したように見えた、王様は片手をあげて、兵士達に武装を解除するように命令を出したのだろう。
そして、魔物のほうを見て、沈黙を守る魔物の様子を見てから、また話しだした。
「では、アオラスよ。お前はなぜこの国に来た? だって」
「迷子だ、以上」
「迷子? いやでもなんで迷子になったか言わないと……」
「うーん、まぁ簡単に言うと、魔物に捕まって、長い間囚われていた。以上」
「簡単すぎるわ! なに、話したくない理由でもあるの?」
「ちょっとな、複雑なんだ」
「ふーん……わかったわ、とりあえず言われた通りに言ってみる」
リスタが渋々といった風に、俺の言ったことを翻訳して王様に伝えてくれる。
そして、その場の全員が魔物を見る。
もちろん、反応はしない、だって嘘はついてないもん。
王様も何かを考えるそぶりを見せると、また話始める。
「あんたについては、しばらく私に任せるって、それと……この世界の言葉を覚えろってさ、またちゃんと会話ができるようになったら、その時はこの国の国民権を与えるってさ」
「え? もういいの?」
「うん、らしいわね……ちょっと拍子抜け」
「お前、本当に難しい言葉覚えたな」
「全部アオラスから、教えてもらったことだけどね。まぁとりあえずしばらくは私の研究に付き合ってもらうわよ」
「はいはい」
とりあえず、俺たちはそこからリスタの研究所にへと帰っていくのだった。
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んじゃね~