古代人×古代語=王城への招待
この変な部屋に閉じ込められてから、約2週間が経った。
「ふむふむ、それで、君は冒険者なのかい? それともどこかの国のスパイとか?」
「いや……後者だった場合って、たとえそうでも、はいそうです。とは言わないだろ」
「ふーん、まぁでも、君はどう見ても……貧困層の一家庭にいる勘当者ね」
「んだと! このロリガキ!!」
「誰がロリだ!! 私はこれでも18だって何度も言ってるだろうが!!」
「嘘つけ! じゃあなんだよその貧相な胸は!」
「む、胸の話を持ち出すなんて! エッチ、変態! ロリコン!」
「誰がロリコンだ!! お前みたいなガキガキした見た目の女に興味なんてないよ!」
「エッチと変態は否定しないのね……」
「んなこと言われても、男どもはみんな変態だからな」
俺の発言を聞いたリスタが、後ろで構えている護衛の男を見る。
「そ、そうなの?」
自分の貧相な胸の前で両手を握りながら、恐る恐る俺のほうを見てきて、ちょっと震えている声で聞いてくる。
「バカ素直か、んなわけないだろうが」
「あっ! 私をだましたな!!」
「世の中にはこんな言葉がある、だまされたほうが悪いと」
「いや、だますほうが悪いに決まってるじゃん……」
あきれた顔で言ってくるリスタに、護衛の者が近づいて耳元で何かを言っているようだ。
頭を振って護衛の言ったことを了承したらしいリスタが、俺の座っている椅子に近づいてきて。
「ほら、立って古代人さん、ちょっとこの国の王様に呼ばれたから王城に行くわよ」
「なぁ、この二週間度々でてくるけどよ、その……古代人ってのはどゆこと?」
「読んで字のごとくよ、古い時代の人よ」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくて……」
白衣が地面をこすっていることを気にせずに出口へと向かっていくリスタ、俺はそんなリスタについて行く他なく、そのまま一緒に王城まで行くことになった。
「っていか、俺身分を証明するものとかないけど……」
「あぁそれは、大丈夫、この国の滞在中は私の実験動物の扱いになっているから」
「おいこら、何を勝手に俺の人権を、死んでも大丈夫なものにまで引き下げてやがる」
「そうしないと、お前みたいな怪しい奴がこの国に入国できるわけがないでしょ」
「いや……まぁ、そうかもしれないけどさ」
いや、まぁ……当初の目標であった、この国に入るは……一応達成できたし、次にちょっとこの世界においての情報が欲しいな。
「ところでよ、お前たちが話してるあの言語ってなんていうんだ?」
「ジュウクニ語のことか?」
「ジュウクニ?」
「あぁ、この世界には10個の国があってだな、魔物や古代人以外は、このジュウクニ語で会話をしている」
「もしかして、その10個国で言語を統一するためにってことか?」
「まぁ、そうだね、特にここアルマス王国では、他の9個の国との貿易のかなめだしね。お前も来たときに服が濡れていたってことは海のほうから来たんだろう?」
「あぁ、海水浴場みたいなところから来たぞ」
「それなら、北に少し進んだところに漁船とかを停泊させておくための港があるはずさ」
へ~、港があったのか……。
「にしても、お前は本当に不思議な服をきているな」
「というと?」
「動物や魔物の皮をなめして着ているなんて、野蛮人だといわれても仕方ないぞ」
「野蛮人?」
俺が小首をかしげてリスタに質問すると……。
「ガウシナカル」
あの時、俺に声をかけてきていた門番が言った言葉だ。
「誰が野蛮人だ!」
「まぁまぁ、落ち着けって、お前のように古代語を話せる者はまだしも、普通あんな小汚い恰好をしていたら、野蛮人といわれても仕方ないさ、何より一目だけでは正直ただの貧困街に住む者に見えるのが関の山さ」
「にしても、リスタ、その俺の話す言葉がうまくなったよな」
「ふふん、こう見えても私、超天才の古代人研究者だからな! あーっはっはっは」
ない胸を張りながら、喜ぶリスタ。
とまぁ、そんなこんなでリスタと他愛もない話をしていると……、服屋にたどりついた。
「さすがにその野蛮服のままでは王様に会えないからね、代金は私が出すから着替えちゃってよ」
「誰の服が野蛮服だ!」
「まぁまぁ、お前もその服を着ているのは大変だろう、いいから着替えちゃいなって」
「はぁ……」
俺は、リスタに言われるままによさそうな服を見つけて着替えてみる。
といっても、半そでの服の上に緑色のマントを羽織って、ズボンも適当に黒いのを一つ手に取って、靴は茶色のブーツを履いた。
「ど、どう?」
「ん~、なんか古代的なファッションだけど~……まぁ、ギリギリ大丈夫かな」
「古代的って……」
店員の人にリスタがお金をわたして、そのまま王城に向かうことに……。
王城近くということもあってか、その賑わいはリスタの研究所がある場所とは比べ物にならなかった。
酒場はまだ昼下がりだというのに、人があふれかえっていて、道を歩けば大道芸人や吟遊詩人が自身の芸や詩を披露していた。また、彼らを見る観客も少し小奇麗な服装を身に着けている人が多い。
そして、そんな賑わいの中心にそびえたつのが、アルマス王国の王城。
リスタが門番の人に事情を説明して、確認を取るとかみたいなことを言ったのか、今はリスタと一緒に、王城へと続く門の前で待っている。
「なぁ、王様ってどんな人?」
「そうね~……一言で言うなら~、強い?」
「へ~、強いのか」
「うん、何やらね、王様の先祖って結構な実力を持った冒険者だったらしくて」
冒険者? え? この国って冒険者から王様を選出するの? っていうか冒険者って概念がまだ残ってたのか……。
俺の疑問なんて知らない門番が、リスタに声をかける。
「準備ができたとのことらしい、入るぞ」
「お、おう」
俺はリスタと一緒に、王城へと入っていくのだった。
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んじゃね~