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幽閉×恨み=10億年!!

「……」

 全部が白い空間、上下、左右、前後……全部が真っ白の空間に俺はいた。

「なんだここ?」

 何もない、いや……魔王の陰の中に取り込まれたから……あっいや、魔王のスキルの効果で【幽閉】とか言ったっけ?

 とにかくそんな感じのスキルの効果で、今俺はこの何もない空間にいる。

 体感時間だけで言えば、もう二か月くらいは経っただろうか?

 だけど、別に腹が減るようなことがなければ……眠くなることもない。

 実際はどれくらいの時間が経っているのかすらも、わからないが……仮に俺の体内時計が正確に作動しているなら、きっと二か月だ。

 二か月もの間、ずっと起きたままでいることなんて初めてだったから、勇者と最後に交わした言葉や、魔王がいかに気持ち悪かったかとか、実は女戦士の胸は好みの大きさだったとか、ものすごくくだらないことから、結構大事なことまで考えていた。

「ちなみに大事な事っていうのは、一体俺はどれくらいの間ここにいうことになるとかだ」

 思わず口にしてしまった。

 別に話す相手もいないというのに……。

 たった一人でこの空間にいるのは……退屈でもあるけど……。

「んっ……ん~」

 背伸びをしながら、誰にも文句を言われずにずっと寝転がっていられるので、意外に気楽だったりもする。

 まぁ……腹は減らないし、のども乾かないし。水浴びとかここにきてから一回もしてないけど、体が匂うとかそういったこともない……。

 そう、とにかくこの空間には何もないのだ。

 娯楽もなければ、死すらもない。

「う~ん、目が覚めたら……あー、ちょっと違うか、幽閉が解けたら100年後の世界だったとかだとちょっと嫌だなぁ~」

 ってか、あの魔王……俺のことを誰もが忘れるまで的な事を言ってたから……あれ?

「勇者、俺のこと絶対に忘れないとか言ってたよな……」

 恐ろしいことに気づいてしまった。

 あのクソ野郎が仮に、仮にだ!

 あの勇者に勝って、英雄として語り継がれたら、あのクソ野郎の中で俺は、魔王軍に情報を流した裏切り者じゃないか?

 もしも……もしもだ!

 あのクソ野郎の業績が英雄として語り継がれていくなら、俺のしでかした所業も延々と語り継がれるんじゃないか?

 そうしたら、この何もない空間で俺……一生。

「うわ、鳥肌立ってきた……こっわ」

 この俺の妄想にも近い考えが、現実で起こっていませんように!

 そして、俺の体感時間を頼りに30年くらいの時期が流れて。

 ここ6年くらい声出してないな…。

「あああああああ」

 おっ、ちゃんと声出たわ。

 っていうかやることなさすぎだよな……仕方ない時間も有り余ってるし、筋トレとか精神集中でもするかな。

 まぁ、何もないこの空間で俺の【蓄積】が効果あるかどうかなんてわからないけどな。

 ただ、何もやることがないと……気が狂いそうだし、何もすることないこの空間においていい暇つぶしだろう。

 そう思ってから、さらに時間が流れて……もはや体感時間で測るのも容易じゃないほどの時間……正確な時間は分からないけど……きっと400年は経っている。

「いつになったら……ここから出られるんだよ」

 500年……1000年……1万年……2万、10万……1千万……1億。

 そして、5億を超えた。

「まだ……出られないのかよ……」

 日課の筋トレと精神集中、そして体感時間を確認するときに、毎日文句を言う日々。

 6億年目の時は一言もしゃべらなかった。

 7億年目では、1億年もの間しゃべらなかったから……しゃべる練習をする羽目に……。

 8億年目では、虚無の領域に入って……。

 9億年目では、文句すら出なくなっていた。

 そして10億年目になる節目の時……何もなかった空間に亀裂が入った。

「おっ!!! ついに!!! ついに!!!」

 外に出れる!!

 俺は喜びのあまり、その場ではねてしまう。

 そして、亀裂が大きくなって、やがて外の景色が見えてくる。

 最初に見えたのは……水。

「っへ?」

 亀裂から大量の水が入ってきた。

「わっ!!! なんだこれ!? うえっしょっぱい!?」

 って海水!?

 海かよ!!

「お、おぼぼぼぼぼ」

 俺は、急な海水の乱入でびっくりしてしまうが……必死に海上を目指して泳ぎ始める。

「ぷはぁっ!!」

 何とか会場へと顔を出すことができて、できるだけ周りを見ると……、少し泳いでいける場所に砂浜があったので、そこまで泳いでいく。

「はぁ……はぁ……あのクソ野郎の恨み……深すぎだろ」

 俺の体感時間が間違ってなければ、おおよそ10億年もの月日俺はあの、何もない空間の中にいたことになる。

 切れた息を整えて、それから浜辺の周りを確認する。

 すると、海とは逆の方向に山があって、その山の上のほうに城と城に連なる町が見えた。

「ひ、人がいるのか……よし……とりあえず、行ってみるか」

 海水をたっぷり吸って重くなった服のまま、俺は浜辺から山のほうにある街へと向かうことにした。


 もしもいいなって思ったら、ブックマークや下の星から評価のほうよろしくお願いします!

 ちなみに、できるだけ毎日おおよそ2~3話くらいを投稿していきます。

 んじゃね~

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