嘘×本心=ヴァアアア
「本当に話すなんて……」
「なんだよ、話せって言ったのはそっちじゃねーかよ」
俺をあきれた目で見つめてくる魔王が、苦笑いと共にそういってくるので、言い返してやる。
「でも、さっきもう仲間じゃないってところで、この魔物が反応したのが少し気になるわね」
「んなこと言われても、俺はもうあのクソ勇者の仲間じゃないっていうのは、本当のことd」
「ヴァアアアア」
「ぶっ殺してやろか! このクソ魔物が!!」
本当に仲間じゃないのに、なんで反応するんだ?
謎すぎる……。
「……魔王は美人」
「ヴァアアアア」
俺がボソッとつぶやいたこと嘘を聞いて、しっかりと反応を示す魔物。
おっと、魔王が俺を今にも握り潰す勢いで、睨みつけてきてる。
「うん、別にこの魔物がおかしいわけじゃないのか……なんでだ?」
「さぁね、私にはわからないわ、この魔物の仕組みを完全に理解したわけじゃないから、どういった原理で嘘って判断するかを細かくしってるわけじゃないのよ」
よくわからないものを使うなよ……。
「んまぁ、でもあなたが吐いた情報には高い確率で嘘がないことは確定しているし、あなたの言った勇者達の弱点を起点に作戦を立ててもよさそうね」
「なんだ、それめっちゃ面白そう、俺も混ぜてくれよ」
魔物を見つめる魔王、もちろん魔物は沈黙を守っている。
「……ほんとなんで、仲間じゃないってところに反応するのかしら?」
「知らね」
またも、魔物を見つめる魔王……、魔物はもちろん沈黙を守っている。
「ま、まぁ、あなたは一応敵なんだし作戦会議に参加させることはできないわ、それじゃ~……情報提供ありがとね」
魔王は、立ち上がりながら魔物を自分の陰の中に戻して、そそくさとこの場を立ち去っていく。
この日から、俺の待遇が多少良くなった。
具体的には、魔法の拘束がなくなって、なんかめっちゃ高そうな肉とかが運ばれるようになった。
しばらく、檻の中での優雅な生活が続いて、俺が監禁されてから約一月立ったころ、また魔王が俺の檻の前に来た。
「これから一緒に来てもらうわよ」
「おう~、今日の飯はまだのか? 昨日給仕係の美人で巨乳なサキュバスのお姉さんに、厚さ5センチの牛兎の者肉を頼んでおいたんだけど」
「あんた、本当に人間? なんで人間が魔王城でこんなにくつろげるのよ……っていうか給仕のサキュバスちゃんから、あんたに毎晩誘惑されて困っているって聞いたんだけど?」
「してません」
「……」
「……」
俺と魔王が無言で見つめあっていると、噂をすればなんとやら、給仕のサキュバスが姿を現す。
「アオラスさん……その注文の物を持ってきまし、あっ魔王様!」
「あら、サキュバスちゃん、ごめんね~それ私が預かるから作戦のほうの舞台に合流してくれないかしら?」
「か、かしこまりました!!」
一挙手一投足で、プルンと揺れる胸をガン見する俺を魔王が、ゴミを見る目で見てくる。
「あんた……本当にそれでいいの?」
「いや、今までは勇者のパーティーメンバーだったから、言動にいろいろ注意してたんだけど、もうそんな必要もないしな、仲間じゃないから」
「ヴァアアアアア」
魔王の陰の中から小さな声で、嘘を感知する魔物の声が聞こえる。
「おい、その魔物を出せ俺がこの檻に入ってから【蓄積】したいろんなものをぶつけてやる!!」
「だめよ! あの魔物、嘘の感知に魔力のほとんどを使っているから、ゴブリン以下の防御力なのよ」
「そんなの知らね!! 俺はもうあのクソ勇者の仲間じゃねーんだ!! それをヴァアだか、ヴェエエだか知らねぇーけど、うざいったらありゃしない!!」
「ヴァアアア」
「ぶっころっ!!」
「ワープ!!」
俺が【蓄積】を使おうと思った瞬間、魔王がワープの魔法を使用した。
魔王の陰に飲まれてワープした場所は……洞窟内だった、というか祭壇?
「ここどこだよ?」
「あら、あなたから勇者の弱点を聞いて作ったダンジョンよ」
「へ~、んじゃここってもしかして……」
「そのダンジョンの最下層よ」
「あぁ~、この一月の間もしかして、このダンジョンを作っていたのか」
「そうゆうこと」
「なるほどな……んじゃ、俺は何をすればいいんだ?」
「あなたにはまだ、勇者の仲間の可能性があるから、ここで人質になってもらうわ」
「だから仲間じゃないっt」
「ヴァアアア」
「どこだ! クソ魔物!!」
もはや、一発ギャグの領域にまで入ってるこのやり取りに、飽き飽きとした魔王が、紅い目をぐるんと回す。
「はいはい、コントしてないで、あんたはこの祭壇に寝そべって頂戴」
「……わかったよ」
「まぁ、あんたは念のためよ、そもそも勇者がここまで来れるかどうかわからないし、まぁもしかしたらもう死んじゃってるかもね~、あなたの言ったことを頼りに勇者やその仲間の弱点となりえる仕掛けや魔物をたくさん配置したから、そもそもここまでたどりつくのが、困難になっているわ」
「……」
おいおい、そんなフラグを大量に生産すると……。
俺が、そう思った瞬間……祭壇への入り口が吹き飛ばされて、勇者パーティーが現れた。
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んじゃね~