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45. ディアーナと元帥

「瑠衣果、何見てるの?」

「説明書。まさか何も見ないで始めようとした?」


瑠衣果の手にはエルガバル英雄伝説の説明書がある。

開いているページは主要登場人物紹介だ。

瑠衣果はパラパラとページをめくり、あるページで手を止めた。


「これがラスボスみたい。登場人物にわざわざ家族構成まで書かれてるって珍しいよね」

「俺、普段見ないから分かんないや」

琉偉(るい)って頭いいのに適当だよね。あ、頭いいから見ないの?何それ嫌味?」

「うわー…瑠衣果横暴」


瑠衣果は説明書をテーブルに置くと、隣に座る双子の兄を睨みつけた。


開かれたページに描かれた黒髪、赤眼の青年。


クルドヴルム竜王国

国王 ルーファス・ロイ・クルドヴルム

年齢 19歳

家族構成 なし



ーーーーーーーーーーーーーー


ディアーナが目を開けると窓の外が暁色に染まっていた。


「ディアーナ!!」


声のした方を見ると、心配した顔でディアーナの手を握るルーの姿。

そして枕の脇にはアルも居る。


「良かった…。全然目覚めないから…」


ルーは安堵の息を吐いてディアーナの手に頭を寄せた。


今は夜明け前だろうか。何時間眠っていたのだろうとディアーナはぼんやりと考えてから、目を見開いて飛び起きた。


「ルー!!おばあ様は⁈」

「大丈夫。今は師匠が行ってる」


すがりつくようにしたディアーナの頭をそっと撫でる。


「今は落ち着いたけど…だいぶ心臓が弱っているみたい。あまり時間は許されてないって師匠が…」

「そんな…」


ディアーナにとって血の繋がった家族の中で愛情を注いでくれる数少ない大切な人だ。

時間が残されていないなら、きっと自覚症状もあっただろう。

だからディアーナに儀式の秘密を打ち明けたのだと考えると、突発の告白にも納得がいく。

そして祖母が…


「ルーお願い!クルドヴルムの元帥に会わせて!!」


あの暗い表情で指輪を見つめていたのは、最後に会いたかった。でも会えない現実を思ってだろう。

シリルとルーであれば元帥と連絡を取る事が出来る。


「もう呼んだ。きっとディアーナならそう願うと思ったから、今はリビングに居るよ」

「ルー…、大好き」


ディアーナはルーの行動に感謝する。

ルーは微笑むと「行ける?」と尋ねてきたのでディアーナは力強く頷いた。


「わたくし、おばあ様に死んで欲しくない。沢山長生きして、幸せになって欲しい」

「ディアーナが望むなら、僕はどんな手を使ってもディアーナをサポートするよ」


ディアーナとルーはお互いの気持ちを確かめるように繋いだ手を強く握りしめると、リビングへ急いだ。

アルも置いていかれないようディアーナの肩に飛び乗った。




移動魔法陣を使いリビングへ到着したディアーナ達の前に、ひとりの男性が立っている。

僅かに白髪が混ざっているが精悍な身体つきは、年齢を全く感じさせない。


「君がディアーナ嬢か。成程…ティアに良く似ている」


ディアーナを見つめながら男性は懐かしむように目を細めた。

ゾクリ、とディアーナの肌が泡立つ。

自分の意志とは無関係に高まる鼓動と、全身の血が沸騰するように熱くなる。

まるで彫刻のように美しい男性の双眸に射抜かれ、ディアーナは固まった。


「ディアーナ!僕を見て」


腕を引かれてディアーナの身体がルーに包まれた。

「落ち着いて、深呼吸」ルーの静かな声と心臓の音にディアーナは力が抜けるのを感じ、ホッと息を吐く。

ルーはそのままの状態で目の前に立つ元帥を睨みつける。


「本当に災厄レベルですよ、大叔父上。ーーディアーナ大丈夫?大叔父上(あのひと)女性を惑わすオーラを常に垂れ流してるから中てられちゃったね」


つまり常に色気を垂れ流し状態にしている女性ホイホイみたいなものらしい。

ルーも元に戻ってから12歳であの色気?と驚いたけど、元帥はその比じゃない。

まだ10歳なのに…中身は18歳の瑠衣果だからか、ルーが居なかったら危なかったと心底安堵する。

落ち着いたディアーナはルーの腕から離れると、見事なカーテシーをしながら頭を下げた。


「お初にお目にかかります。セウェルス聖王国第一王女ディアーナ・ヴェド・セウェルスと申します」


「ヴェド…」と、元帥は小さく呟いてから微笑んだ。


「ルーファスが世話になったね。私はローラン・ヴェド・オルサーク。クルドヴルム竜王国の元帥を務めている」

「ヴェド??」

「そのようだ」


この世界では王族だけがミドルネームを有する。大体は神の名や、祖先の名など家に関連するものが多い。ディアーナの”ヴェド”はセウェルスでは聞かない名だったが、


(元帥の名前を貰ったのね…)


ディアーナは納得する。

ディアーナの名付け親は祖父母だったので、目の前に立つ元帥を祖父も認めていたのだと確信した。


「閣下。祖母の元へお連れしたく存じます」

「頼む」


短い返答だが元帥の切実な想いが感じとれる。

ディアーナは隣に立つルーを見て口を開こうとすると


「勿論、一緒に行くよ」


ディアーナの気持ちを察したルーが頷いた。



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