3.ディアーナは思い立つ
昔の記憶を頼りにゲーム内容を書き終えた時には、窓に夕陽が差し込んでいた。
分からないなぁ…。
何せ中学生の時にプレイしたゲームだ。
正直うろ覚えの部分も多い。城下町のイベント発生ポイントに至っては主要イベントすら思い出せない。
ましてや登場回数2回の脇役王女が死亡回避出来そうな道は探せそうに無かった。
困った、詰んだかも…。
ディアーナは溜息をついて天井を見上げる。
ゲームの中のディアーナは後ろ姿だけでも、吹けば飛びそうな儚い感じがした。
実際ディアーナの腕は透き通るように白く柔らかい。
全く先が見えない以上、自分を守る為に出来ること。
「そうか!竜騎士をボコボコに出来るくらい強くなればいいんだ!!」
アナスタシアは魔法が得意だった。
同じ血をひくディアーナにもその素質はあるだろう。
剣技については全く未知数だけど、今から頑張れば一般兵位にはなれるかもしれない。
希望が見えた!!と、ディアーナが腕を高く振り上げたところで、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
「殿下、お夕食の時間でございます。って、殿下⁈」
「あら、マーサ。ありがとう」
ガッツポーズのまま、ディアーナはニッコリ微笑んだ。
滅多に笑顔を見せないディアーナに固まる侍女のマーサ。
「今日は陛下達も一緒ね。遅くなると機嫌が悪くなるから急いで準備しましょう」
両親とアナスタシアとプライベートで会うのは週一回の夕食会だけ。
周りには次期女王になるかもしれないディアーナには学ぶ事が多いから、と言っているが単に顔を合わせたく無いのだろう。
ディアーナは少しだけ華やかなドレスに着替えると、魔道具であるブレスレットをつけた。
白銀色の髪がみるみる黄色に変化する。
魔法で髪色を変える事が出来る。
だが、何をしても王色へ変化させる事は出来なかった。
その為ディアーナが人前に出る時は出来るだけ王色に近い色へ変化させた上で、ベールをつけてカモフラージュしていた。
「さて、可愛い天使と毒親に会いに行きますか」
「殿下⁈今日はどうされたのですか?」
「ふふっ、私のやるべき事が見えたような気がするの」
楽しげに笑うと、マーサを連れて家族の待つ部屋へ向かった。