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2.ディアーナは思い悩む

ディアーナは悩んでいた。


日本の家族はどうしているだろうか。

瑠衣果はあの後どうなったのだろうか。

もし本当にあの時死んでしまったとしたなら…家族は絶対泣く。

そんな家族の姿は見たくなかった。 


…会いたい。家族の元に帰りたいよ…。


ディアーナは世界地図を広げているページに顔を埋めた。

目の奥が熱くなり、世界地図が描かれた紙にジワリと染みが広がった。

しばらくそうしていただろうか。


泣いても仕方ない、今の状況を把握しなくてはいけない。そうディアーナは顔をあげると涙を腕でゴシゴシと拭いた。


「まずはディアーナ(じぶん)の事を整理しないと」


何せディアーナの公式情報はセウェルスの第一王女という事だけ。

ゲームの中でのディアーナは長いベールをつけている事は分かったが登場シーンは後ろ姿だけで顔は見えない。


ディアーナはこの10年間、どんな生活をしてきたのか思い出すように目を閉じた。

…そして弾かれたように目をあけると、ギュと自分を抱きしめるように腕を回した。


「哀しかったね。ディアーナ…」


それは瑠衣果には経験した事がない。

幼いディアーナには辛く哀しい記憶。




セウェルスの王族は黄金色の髪に、紫色の瞳を持つ。

それは貴色または王色と呼ばれ、黄金髪と紫の瞳は王族の証。

だがディアーナは瞳こそ紫だが髪の色が白銀色だった。


母である王妃は現実を受け入れられないのか、産まれた時からディアーナを遠ざけ、父である国王も妻に気を遣ってか、必要最低限の会話しか交わした事がなかった。

両親の愛情は全て一つ下のアナスタシアに注がれている。


両親と笑い合いながら庭園を散歩するアナスタシアを、ディアーナは自分の部屋の窓から静かに眺めるのが日課。

アナスタシアが大好きなのに羨ましくて…それが悲しくて…ディアーナの感情が溢れ、ディアーナは叫んだ。


「有り得ない…。ネグレクト?毒親??とにかく髪色ひとつで遠ざける親なんて最低っ!」


怒りに震えながらも、ディアーナの事は整理出来た。

次は自分が殺されるのがいつか整理しないといけない。

そうディアーナは引き出しから紙を取り出すと、ゲームの内容を覚えている限り日本語で書き出した。


確か、ディアーナが拐われたのは建国祭の途中だった。

クルドヴルム竜王国の竜騎士団が突如現れ、ディアーナを拐うのだ。

ゲームでは細かい背景の描写がなく、ディアーナが拐われた理由は分からない。


そして公式設定ではアナスタシアは16歳。

ディアーナを救い出す為に選ばれた勇者が、アナスタシアの婚約者クリストファー。


つまり、ディアーナが拐われるのは17歳に行われる建国祭。

参加しなければ解決…はしないだろう。ゲーム補正が働く可能性や、アナスタシアが狙われる可能性もある。


両親に愛されて羨ましいと薄暗い気持ちはあるけど、

アナスタシアはディアーナに懐いてくれている。

それに誰にでも優しく前向きなアナスタシアを瑠衣果も気に入っていた。


アナスタシアを犠牲にする訳にはいかない。

そして何より自分も死にたくない!


ディアーナは腕まくりをすると、思い出せる情報全てを書き込み始めた。




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