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18. ディアーナは駆け出す

「可愛い…」


フォレストグリーンの扉を開け、目の前に広がった部屋にディアーナはポカンと口を開けた。


壁紙は淡いアイスグリーンが基調になっており、アクセントとしてフォレストグリーンがバルコニーに繋がる扉の枠などに配色されている。

室内にはシンプルな木枠のベッドに壁紙と同じ色合いの机とタンスが配置されていた。


ピンクでなかったら総レースか?と最悪の事態も想像していたが良い意味で違って安堵する。

全くの新品ではなく誰かが使った跡はあるけれど、大切に管理されているのが想像できた。


キョロキョロ部屋を見渡しながら、ディアーナはバルコニーに繋がる扉に手を掛け、開く。

石造りのバルコニーを支えているのは巨大樹の枝。

細い枝が手摺りに絡み付いているのに時の流れを感じた。


「すごい…すごく綺麗…」


眼下に広がるのはどこまでも続く森の木々。木々の間から谷底へ流れ落ちている細い滝。上を見上げれば巨大樹の葉が優しく揺れて隙間から太陽の光が柔らかく降り注ぐ。


ディアーナは感嘆の声をあげるとバルコニーから見える景色を堪能し、その場でクルクル回りながら景色の変化を楽しんだ。


腕組みしながら、扉の近くにある柱に身体を預けるようにしてディアーナを見つめているシリルの瞳は限りなく優しい。


ゲームでもシリルの家に入れたけどこんな部屋は無かった!

あったのはバキバキに壊されたピンクの部屋と、宝箱やアイテムだらけの部屋くらいだったから期待して無かったけど本当に素敵!!


ディアーナは心の中で歓喜する。

フワリとスカートを膨らませながらシリルへ向き直ったディアーナは満面の笑みを浮かべた。


「ありがとうございます!!とっても素敵です!!!」

「ここはティアが使った時のまま残していた部屋だから喜んでくれて嬉しいよ」

「おばあ様が使っていたのですか?」

「そうだよ。この部屋は特別で、ティアが去った後も大切に管理されていたんだ。今この部屋を管理しているのはルーだよ」


シリルの言葉にディアーナは瞬く。

掃除が行き届いた優しい部屋をルーは維持してくれているのか。


「パパ…。わたくしルー様にお礼を言いたいです」


シリルは紫色の瞳を眩しそうに細め小さく微笑んだ。

ゆっくりディアーナへ歩み寄ると、目線の高さを合わせるように前屈みになりながらディアーナの頭を撫でつける。

ディアーナは目を閉じてくすぐったそうにした後、ディアーナの頭を撫でている手を自らの手で押さえつける。そうして「パパ」とディアーナは口を尖らせた。


「ごめんね。ディアーナがあまりに可愛くて…」


笑いを堪えるように口元を押さえたシリルは、ディアーナから手を離すと指を下に示す。

ディアーナはその指とシリルを交互に見ると頷いて笑顔を見せた。


シリルが示したのは、おそらくルーの部屋。

先程この部屋に向かう途中、シリルの部屋とルーの部屋の場所を教えてもらった。

ルーの部屋は位置的にこの部屋の真下。


「行ってまいります!」


そう言って勢いよく駆け出したディアーナを見て、シリルは眉を下げた。


「ルーを救ってくれるのは彼女()かも知れないね…」


囁くように紡がれた一言は風に混ざって消えた。






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